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第四十八話

 「…行きましょう」


 「あの何処に、それにロウファは?」


 ミクモは自分に聞いていた。


 「こんなトコロより、貴方達が寝泊りしていた別寮の方が安全ですからね。


 今は場所を移しましょう」


 初等部を別寮に誘導するが、やはり初等部の生徒は親の言うことが気になっているのか、戸惑って動こうとしなかった。


 「お母さんの言うことは大事な事なのかもしれません、ですが今は自分の命を守る事をしませんか?」


 こう言うと、少し話し合って生徒達は自分について来るようになった。


 しかし、まだ一人、動かない人物がいた。


 「ミクモ…」


 初等部の声で、ようやくこの事に気付き。


 自分にはミクモが何のために立ち止まっているのか、何となくわかった。


 「行っても役に立たないと言いませんでしたか?」


 つい笑みを浮かべて、わざと聞いてみた。


 「心配ですか?」


 このワザとらしさが伝わったのかミクモは笑って言った。


 「ボ、ボクはロウファの友達ですから、ロ、ロウファを止めないと危ないんですよね?


 ひ、引き止める事くらい出来ると思うから…」


 ミクモは断られるかと思いもしたのだろうか、じっと自分を見ていた。


 「今なら間に合います、行ってください」


 「えっ」


 「貴方の友達なんでしょう。


 友達を止めるのは友達の役目です。


 ですが、ペインと対峙する事になったら、決して戦おう何て考えないでください」


 少し睨んでしまい、ミクモをたじろがせてしまったが、慌てて頭を下げてロウファの後を追って行った。


 「あのロウファは刀剣2級なんだけど、駄目なんですか…?」


 初等部の一人が自分にそう聞いて来た。


 「だからペインと戦わせたくないのですよ。


 ロウファ君は、絶対に勝てない」


 「えっ?」


 「人間は物理的に100人の命を奪えません。


 ですが彼はそれが可能なんですよ」


 「でしたら、ミクモ達の方に…」


 「今は貴方達の安全を確保するのが肝心です」


 そう言うと初等部達に睨まれもしたが、今の事態が飲み込めたのだろう。


 「大丈夫です、ミクモ君はあなた方が思っているほど、弱い人間ではありませんよ。


 私も後で追いかけますので、今は急いでください」


 そう言っている頃、レフィーユの駆るバイクはペイン達の車両を捉えていた。


 「姉さん、人質は確保したわ」


 「確認している、早く携帯を取り上げろ!!」


 「駄目、もう遅い!!」


 レフィーユは先ほど自分がミチコが携帯を握られていた事を目視していたため、セルフィの答えに舌打ちで返した。


 腹いせとばかりにさらにスピードを上げ、車両との距離を詰めるが、炎の玉が見えた。


 「西方術か!!」


 慌ててハンドルを切って、避ける軌道で車に右側に寄せるが、その西方術者の火の玉は火炎放射へと形態を変えてそのまま彼女に迫る。


 「はあっ!!」


 レフィーユはサーベルを投げ付けて、詠唱者の西方術を中断させるが彼女もバランスを崩してしまい元の距離を走る事になった。


 「他は何をやっている!?」


 「今、私達も交戦中!!


 完全に足止めされてるのよ!!」


 セルフィの指示が飛ぶ中、炎が目の前を塞いできた。


 「お構いなしか!!」


 住宅に少しはみ出た木を燃やしながら、逃げ道の無い一本道を炎が埋め尽くす。


 だがレフィーユのバイクは、路上に止まっている車を踏み台にして飛んでいた。


 それを追うように炎が彼女を追い、炎は独特の四散を見せる。


 歓喜に笑顔を炎を操っていたファミリーは見せていた。


 だが、その表情はあっという間に驚きに変わる。


 難なく着地をするバイクがあったからだ。


 命中して四散を見せていたのはサーベルだったのだ。


 「もう、魔力は続くまい!!」


 レフィーユは、再度、距離を詰めるとそこに…。


 「すげえな、アンタ…」


 ペインが先ほどのファミリーの位置から顔を覗かせていた。


 「ペイン…」


 「すまねえな、獄中生活も良かったんだが、どうも俺もまだ利用されなければならねえようだ」


 「利用されているとわかっているなら、何故、一緒に行動しようとする!?」


 「そりゃあ、制限ある生活と、自由な生活…。


 お前、この二つを目の前に突きつけられたらどっちを選ぶ。


 当然、自由な方だろう?」


 「このまま罪を償おうと考えなかったのか、お前はただ楽な方に逃げているだけだ!!」


 レフィーユは怒りを表にしていたが、ペインは態度を変えずに答えた。


 「まあ、そうとも言うが…。



 レフィーユ、何も罪を犯してない人間には『わからない』さ?」


 そう言って、ペインの多節鞭をレフィーユを向けて突きつける。


 誰もがわかる手の届かない距離、だが、レフィーユには目前に迫る錯覚すら感じていた。


 「そして『ここまで』だ。


 レフィーユ…」


 ペインは勢い良く多節鞭を、レフィーユに向かって投げた。


 当然、それをレフィーユは避けて、少し開いた差を埋めに掛かろうとするが…。


 彼女は自分が橋の上にいた事に、身の毛がよだっていた。


 慌てて両方のブレーキを掛け、減速独特の重力を味わいながら地面をバイクが滑る。


 「お前、やっぱ凄げえよ」


 聞こえるはずのないペインの一言が聞こえたような気がした。


 「むう!!」


 十分、減速しきったトコロでレフィーユは、バイクから飛び降りた瞬間、橋が爆破されたのである。


 バイクはそのまま池の中に落ちて行く。


 ゴロゴロとレフィーユも数回転がり、何とか立ち上がる。


 自然と車の行方を探すが、その車は何故か止まっていた。


 様子を見ているのかと思いもしたが…。


 レフィーユは、悪い予感がしてならなく走り出していた。



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