第四十五話
「呼び出してすまない」
校舎裏で待ち合わせ、レフィーユがそう労って来たが、表情に緊張感が伝わってきたので、本題を予想して聞いてみた。
「彼らから要求が来たようですね?」
彼女は無言のまま頷き、要求の内容を答えた。
まずは人質の交換条件にスーパーペインを要求してきた事。
「ペインの搬送役に貴女を指定したのですか?」
「どうやら私が自由に動かれる事を封じるつもりなのだろう。
どこで人質の交換をするのか言ってない。
私がある程度、移動をさせている間…」
「モンスター達が、指示を出す。
まったくどちらが悪者か、わからなくなって来そうですね。
それで子供達は?」
「ペインを搬送車に入れた際に、その入れ換えで独房に閉じ込めておいた」
「よく、出来ましたね?」
「ふっ、授業の一環だと言ばな。
しばらく軟禁された時の心理状況を経験してほしいと理由つけたら、みんな素直に従ってくれたよ。
根はみんな素直な子達なのだろうと思い知らされたな。罪悪感が沸いたよ」
レフィーユは、不機嫌そうに顔をしかめたが、冷静に言う。
「だが、その場しのぎに過ぎん。
授業の一環だというリアリティを持たせるために結局は、携帯を取り上げられなかった。
閉じ込められたと気付かれれば、子供とは言え、集まれば東方術、西方術の使い手だ。
鉄格子など意味が無いだろう。
そうなる前に何とかせねばならん。
私はこれから、輸送をしなければならないがお前はどうするのかと聞いておきたくてな」
「私が現れても、貴女の布いた配備に悪影響を与えるだけでしょうからね。
まあ、姿を変えなくても、何かしらしておきますよ」
そんな事を思い出しながらレフィーユは、深夜の中、輸送車を運転していると治安部用の携帯に連絡が入ったのでそのままスイッチを入れて応えた。
「最初の連絡より、一時間ほど走らせていたが、何かあったのか?」
「何、休憩を取らせてやっただけだ。
どうせ今日一日、寝てないのだろうからな」
何も知らず高圧的に出るファミリーの発言に、レフィーユは思わず微笑を浮かべながら言う。
「ふっ、それは、ありがたい事だな。
十分に休憩を取った所で、聞きたいがそろそろ待ち合わせ場所を教えてくれないか?」
「その前に、うちらのボスの顔を確認したい」
どこぞかで監視されているのだろうと思いながら、一旦、停車をさせ周囲を警戒しながら、レフィーユはペインを車の周囲を一周させて車に戻った。
エンジンを再び掛けて、レフィーユが運転を再開する頃に何かしら、彼女は感じる事があったのだろう。
一時間前のファミリーの会話は、逆探知を恐れたからという。
手短な会話に対し、今は、ずっと会話が出来るという事は、そろそろ何かしら行動を起こす頃だ。
「よし、確認できた。
じゃあ、車に乗って運転を再開しろ。
そろそろ、俺たちの輸送車も見えてい来るだろう」
そんな事を思いながら、命令に従って運転を再開した。
その瞬間だった。
ブーン…。
人が後ろを向いていた時に、ボールなどの物質的な物が迫る音は、おそらく彼女のいる運転席には聞こえなかっただろう。
「…!?」
彼女が目視した瞬間、輸送車の運転席に槍がめり込んで横転した。