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第四話

 「昔、あの魔法使いが自分の名前を語ったり、偽者は絶対に許さないと聞いたことがあるのだが?」


 「よく知ってますね?」


 「まあな、世界唯一の西方術『闇』を使いこなす変人だろ?」


 「へ、変人…」


 「ふっ」


 「どうした、二人して、随分と明暗を分けた顔をして?」


 「い、いえ何でもありません、それで出会った事は?」


 「いや、無え。


 噂だけ聞いただけだ、お前さんにはわからねえだろうが、俺にもスーパーペイン(こんな名前)が付いているからな。


 名前の付いているもん同士が下手に関わったら、ロクな目に合わんだろう?」


 「という事は『何も知らない』という事ですか?」


 「俺は、こんな状態だ、会いに行けると思ってんのか?」


 どうも自分の事は、知らないらしく少し安心しているとセルフィが言った。


 「随分、気になる言い方ね。


 あの魔法使いがどうしたっていうのよ?」


 セルフィもどうも自分の事に気付いていない。


 だが、こうなると誤魔化さないといけないので、少し前に起こった事を思い出すように答えた。


 「ペインさんがやってくる少し前くらいですかね。


 市内を歩いていますと、偶然、その魔道士に出会ったのですよ」


 「何だと?」


 レフィーユが驚くように聞いてきたが彼女は事情を知っているので、『変人』と言われた辺りから少し笑って聞いていた。


 しかしペインはソレに気づく事なく聞いてきた。


 「なんだ、ヤツはあんな目立つ法衣を被って市内を出歩いているってのか?」


 「それは偶然、路地裏で出会いましたよ。


 とにかくその時なんですが、貴方の仲間と名乗る人達が、貴方を救出するのに協力してほしいと協力を求めてきたらしいのですよ」


 「まあ、そんなトコロか。んで、闇のヤツは何と?」


 「あまりにもしつこいから、協力するそうです」


 「随分、押しに弱い指名手配犯な事だ」


 皮肉を込めながらペインが食事を少し残したが『もういい』と言ったので、食器を手押し車の中に収めるとレフィーユに言った。


 「それではこれで…」


 「ふっ、すまない、こういう役を押し付けて」


 「おかまいなく、いい経験でしたよ」


 そう言って、立ち去るとペインはため息をついた。


 「…お前の彼氏なかなかやるじゃねえか」


 「ふっ、なかなか評価されないのが困り種だが、あの男にはいつも助けられてばかりさ」


 「…どこがよ、食事係を買って出たのはよかったけど、アンタの仲間と魔法使いが手を組んだって言う。


 もう一つやっかい事が増えたじゃないの」


 「だが心理的に有利になったのは、お前らの方だろうってのにか?」


 ペインが感心するようにそんな事を言うのでセルフィは、どういう事か聞こうとしたがレフィーユが代わりに聞いてきた。


 「セルフィ、魔道士が今回の事に関わる気が『あるのなら』どうする?」


 「姉さん、今がその状況じゃないの?」


 「ふっ、良いから答えてみろ」


 「そんなのこう言った警備だけじゃなくて、輸送の際に、いつ魔法使いが襲い掛かってきてもいいような体制を取るだけよ。


 それは私達がここに住んでいる限り、配備は常に、この想定を元にするのが基本じゃない」


 「ふっ、基本か…。


 では『関わる気なんか毛頭なく』、この男を搬送していた時、彼が近くに目撃した。


 お前はどうする?」


 「ふん、そんなシチュエーションあるのかしら。


 でも、関わる気がないなら、敵を増やしたくないわよ。


 …あっ」


 「ふっ、さすがに気付いたようだな。これでヤツが『関わる可能性ある』ではなく『関わる』という事になった。


 これだけでも私達の周りの心境はかなり違うだろう」


 「それだけじゃねえ、俺の部下はおそらく、これを『カード』として使ってくるだろう。


 それこそ『驚け』とな。


 しかし、驚かないのはお前達。


 そこにつけ込まれる『隙間』に、でかく無い事を祈るしかなくなった」


 「ふん、あの人にそんな器用な事が出来ると思えないわ」


 「ふっ、それはあの男は最初の『関わるか、関わらないか』だけを狙って言っただけさ」


 まるで息の合うように、セルフィに言うのでレフィーユは言った。


 「ふっ、だが、さすが若い頃、治安部のリーダーを務めていただけはあるな」


 それに驚くのはセルフィだけじゃなく、その男、スーパーペインは黙っていた。


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