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第三十九話

 そうして放課後…。


 待ち合わせてロウファは自分に聞いて来た。


 「あの、どこへ?」


 「まあ、付いて来ればわかりますよ」


 そう言って、そこに向かう途中で自分が、どこに向かっているのかわかったのか少し黙り込んだ。


 無理も無い、ここは少し薄暗い学園内の留置場だからだろう。


 セルフィの監視の下、今までの経緯をスーパーペインに話すのだから当然の反応なのかも知れない。


 「そりゃ、お前が悪い」


 すると、そんな一言で片付けられたのが気に入らないのか、ロウファは黙ったままだった。


 何か言いたい事があるのだろうというのが、わかるような表情をしていたのでペインも待ちに入ったが…。


 「……」


 一向にしゃべらないロウファに、ペインは何かに気付いた。


 「お前、もしかして『話さないルール』を守ってんじゃないだろうな?」


 「ああ、そんなルールありましたねえ…」


 「ふん、アンタねえ…。


 『ありましたねえ』じゃないわよ…」


 セルフィだけが呆れていたが、ペインは言った。


 「まあ、その程度の『ルール』すら守ってるから負けたんだろうな」


 指名手配犯に言われっ放しになると思ったのだろうか、ロウファはここでようやく言い返した。


 「当たり前のルールを守って、何でそれが敗因なんですか?」


 「つまり、お前は純粋にルールを守ったせいで、逃げる犯罪者を捕まえられなかったって事だな。


 おい、食事係、そのルールってのは『東方術の付加能力を使わないで倒せ』それだけだったのか?」


 「食事係?」


 思わずロウファは聞いてきたが、自分の事だと説明しながらペインの質問に答えると、彼は笑っていう。


 「なら、お前が純粋にルール守ったって事が敗因だな」


 「指名手配犯の貴方にはわからないと思いますが、ルール守って、評価を得ようとするのは誰でもする事です」


 まるで人の揚げ足を取る子供らしいロウファの皮肉だった。


 ペインはじっとロウファを見て、ため息をついた。


 「はあ…」


 だが、後に笑いながら答える。


 「俺は確かに指名手配犯だが、元治安部の人間だ。


 それならわかる事もあると思うが?」


 『治安部』を強調し、何故かその時のペインは手馴れていた印象的だった。


 ロウファは自分に本当の事なのか、聞こうと振り向いて頷いたのと同時に答える。


 「しかもリーダーを務めていた…。


 なんて実績もある。


 元とはいえ、ためになるような話は出来ると思うがな?」


 ロウファはさらに驚き、さらに半回転してペインを見たが、そこからはずっと黙ったままだった。


 しばらくして、ペインは言った。


 「規則、ルールに乗っ取ったから、負けてねえと言いたいのはわかるがな。


 元治安部の人間として言わせたら、お前は役に立たねえよ」


 「ちょ、ちょっと」


 セルフィが止めに入るが、ペインは肩を竦めながら答える。


 「逆に犯罪者として言わせてもらえば、お前ほど簡単な相手はいねえよ。


 つまり雑魚だって事だ」


 「馬鹿にしてるんですか、ボクはこれでも剣術は一級で、捕縛術も様々に習ってるんですよ!?」


 ロウファはペインを睨みつけて、声を荒げる。


 だがペインは、ロウファから一切視線をそらさずにいう。


 「だから、即戦力になれるとでも?


 資格を盾にするのは、社会に出てからにしろ。


 そんな事だから、ああいう負け方をする」


 すると苛立つようにロウファは声を荒げた。


 「だから、次は負けないって言ってるじゃないですか、ならどうしたら勝てたって言うんですか!?」


 対するペインは、ロウファの荒ぶりにも動じる事無く、あっけなく答えた。


 「少なくともオレが考えてる内には、単純に勝てる要素が2つもあった。


 一つは『その対戦相手に負けてくれ』という事だ」


 最初の一つは、自分達が考えていた事をペインは答えた。


 自分も同じような質問をした時と同じように、ロウファは動きが止まる。


 その心境がわかっていたのか、じっとその態度を見ていたペインは答えた。


 「それは確かに人としてやったら駄目だと思ったから、お前はやらなかったかも知れねえけどな。


 いざ勝負が始まった時に、何で人を使って取り囲もうとしなかった?」


 「それこそ、ルール違反じゃないですか!?」


 勢いを取り戻そうとロウファは声を強めて言ったが、それがペインを確信させる事となる。


 「ルール違反じゃねえ。


 『一対一だ』なんて多分、言われてねえだろうし。


 その程度の柔軟性もないヤツが、即戦力だって言えねえよ」


 その一言はロウファにとってどれほど重かったのだろう。 


 確かにレフィーユは『一人でやれ』など、一言も言ってない。


 ただロウファは、それが『出来た』だろうか?


 ただ高い評価を得ようとした時、ミチコはそれを選びはしないだろう。


 「人間、いざ自分や人の身に危険が迫った時にはな。


 ルールを破らなければいけない時だってあるんだぞ?」


 ロウファはもし追い込まれていても、自分の母のいう事を聞いてどうなるのだろうか?


 その結果は突撃する事しか、考えられ無かったのだから…。


 「でも、ルールは破ったら駄目じゃないですか?」


 つぶやく事しか出来なくなっていた。


 「…多分よ、レフィーユもそこを見ていたんじゃねえのか?」


 ペインはじっとロウファを見て静かに言った。


 「問題は、何でルールをやぶれなかっただな…」


 それを言われて、ロウファは黙っていた。


 無理も無いだろう、『お母さんに言われたから』など子供の言い訳にも程があるのに気付いたからだろう。


 「すまねえ、無理にでも聞こうとはしないが。


 どうしてルールを破れなかった事くらい、そこを考えてみるだけでもしてみろ。


 じゃあないと、お前は、もう一度、同じ間違いをするぞ?」


 ペインはそういうと、ロウファは答えた。


 「でも、貴方は犯罪者じゃないですか、犯罪者にそんな事を言われたくありません」


 その答えはまるで負け惜しみだった


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