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第三十八話

 「ロウファ、お前は確かに実力がある。


 だが、それは周囲が自惚れて高めた実力に域を過ぎてない事が、何故わからん」


 しん…と静まりかえる中、ロウファが慌てて答える。


 「違います。


 ボクはうぬぼれてなんかいません。


 時間がありませんので、どいてください」


 『レフィーユに構うな』と通信が入っているのか、その焦りが何よりの証拠だった。


 「ロウファ、お前はリーダーになってからも、そうやって指示を得て行動しようとするのか?」


 レフィーユは改めて指摘していた。


 バレてないと思ったロウファの心は明らかに揺れたのでこう答えた。


 「どいてください…」


 「それがお前の望んだ。


 治安部のリーダーの姿か?」


 「時間がないんです、どいてください!!」


 ミチコの通信には無常さすら感じていた。


 一度、二度、こんな静寂の中、自分がもしレフィーユの位置にいたら、その通信の声はきっと漏れているのが聞こえていただろう。


 とうとう完全に追い込まれたロウファは、レフィーユをどかせてミクモに飛び掛る中、レフィーユは呟いていた。


 「何故、その行動力を他のところに使わん…」


 遠くにいた自分には聞こえなかったが、ロウファの攻撃はあまりにも酷かった。


 完全に守りに徹していたミクモの防御の上から、数度と攻撃を繰り返して防御を考えてない。


 荒々しく、その動きはまさに守りががら空きになるのが、素人目から見えるほどに。


 「やあっ!!」


 ミクモの突きが、胸元にあたり、倒れたところを刺叉で取り押さえられた。


 その勝敗はあまりにも、あっけなかった。


 「これまでだな…」


 場内が歓声が上がる中、ロウファはレフィーユとは反対側に顔を上げる。


 そこには自分の両親、ミチコがいた。


 苛立つ顔を押し隠さず自分の息子を見るのはどんな心境なのだろうか、ロウファの顔も見えない。


 そして、試合終了後の事である。


 ロッカーにてロウファは携帯に出ていた。


 相手は言うまでも無いだろう。


 「…でも、母さん」


 言い訳をしようとしたが、自分の母の癇癪にかき消されたのだろう。


 「…!?」


 一方的に…。


 「…!!」


 ただ一方的に携帯を切ったのか、真っ青になったロウファを自分は窓からぶら下がって見ていたので声を掛けた。


 「理由も聞かずとは、随分と扱いが雑になりましたね」


 突然の気配に驚き、ロウファは振り向いたがすぐに冷静に答えた。


 「ミクモなら、隣の部屋ですが?」


 「貴方に用がなければこんなところから、踏み台を探してまで、ぶら下がってませんよ」


 そう言って、踏み台を調整していると、ロウファがやって来たので聞いてみた。


 「何で言わなかったのですか?」


 「何をですか、自分の母がああなったら何を無駄だって事くらい知ってます…」


 「違いますよ」


 踏み台に乗り、ロウファを見るとじっと自分を見ていた。


 「まあ、こちらとしては追いかけっこさせて、貴方の両親を追い込ませ、貴方の自身を揺さぶる作戦はうまくいったのはよかったですがね。


 貴方は見事に作戦にはまったとはいえ、納得出来ない点が一点あるのですよ。


 …どうしてミクモに『負けてくれ』と言わなかったのですか」


 深夜から朝方、ミクモの通信機を奪う過程の最中、自分はロウファの監視をずっと続けていた。


 ロウファのいるロッカーにも潜入していた事もあり。


 その携帯にも履歴が載っていない事が、あの作戦の実行した理由だった。


 驚くようにロウファはじっと見ていたが、こう答える。


 「それは勝てると思ったからです。


 勝てると思う相手だったのに、あんな戦い方されて、ボクは作戦に敗れただけです。


 次は絶対に負けません」


 これが多分、ロウファの言い訳なのだろうとわかったので、こう聞いてみた。


 「レフィーユさんが次を用意するとでも?」


 その一言で黙るので、肩をすくめながらロウファに言った。


 「放課後、ちょっと付き合ってくれますか…?」

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