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第三十七話

 「わあああ!!」


 自分達とは違う、子供独特の掛け声が武道場に響き渡らせ、敵に駆け寄る。


 掛け声に負けじとミクモは確実に『受け』に徹する。


 「くっ!!」


 ミクモはあっさりと接近を許し、ロウファはそのまま足を掛けようとする。


 いつもの攻撃方法、それに対し、敵もいつもの防御方法。


 それはロウファにとっても押し倒して終わりだとイメージ出来上がっているのだろうが、そのイメージはあっさりと崩れ去る事になる。


 「くっ!!」


 ミクモはあっさりと組み付こうとしたロウファを捌いてしのいだ。


 ロウファは戸惑いを隠せず、ミクモを睨んだままだったが、そんな彼も戸惑うのは同じようだったので、


 「やはり疲れが出てきましたか…」


 「ふっ、実戦の経験の無さが、これほどまでに出るとわな」


 ミクモが自分たちの話を詳しく聞こうとしたので、レフィーユはミクモに説明を始めた。


 「ミクモ、お前は逃げるルートはある程度ではあるが、予め教えてもらっていただろう?


 だが、ロウファは、どこに逃げていくのかわからなかった事に、ストレスが溜まったのさ」


 「ス、ストレ…!?」


 答える途中で再度、ロウファが十手で攻撃を放つ。


 しかし、焦りがあったのか槍の長さを誇るミクモの武器の前で大した効果も与えられず。


 レフィーユが始めは『今は集中しろ』と注意はしたが、淡々と語る事を許すほど余裕があった。


 「いくら有能なマラソンランナーでも、走るルートが決まってない追いかけっこは、自分の実力など出せるワケがない。


 それにロウファの握ったままの十手…。


 自分の東方術を行使していたまま、走っていたのも原因だ。


 ただでさえ物を掴んだまま走るのは、妨げになるというのに…。


 自分の魔力を行使しながら、ミクモ以上の距離を走るのは、私でも考えたくない」


 もう一度、つばぜり合いをするようにロウファはミクモを崩しに掛かるが言ったとおりなのだろう。


 だが、あっけなく押しのけるミクモにも理由があった。


 彼は夜に走りこみを昔からしていたのだ。


 『ボクは習い事で武道を習ってないから、みんなと遅れないために毎日、走ってる』


 そんな何の変哲も無い理由ではあるが、その走り込みはミクモにとって唯一の訓練だったのだ。


 人間、自分の意思で唯一を洗練すれば、それは武器になる。


 特化しているワケではない、だが、全体的にパラメーターを伸びているロウファに対して、それは対抗出来るほどの唯一の実力になっていた。


 レフィーユも彼に教えている内にそれに気づいたのか、防御しか教えなかった。


 つまり走りこんだ後、この攻防の予行演習を予めしていたのだ。


 おかげでミクモは防御を完璧となっていた、残り時間は10分を切っていた。


 焦りを隠せない様子だったロウファだけではなく、ヘルメットを被りなおす動作を見せていたが、その通信がさらに彼を焦らせたのでレフィーユは言う。


 「ふっ、随分と追い詰められたというのに、身なりを気にする余裕はあるようだな?」


 「お、追い詰められてません」


 慌ててヘルメットを被り直して通信を聞くのをやめて、ロウファは言うが、もう一度、通信が入ったのだろう。


 レフィーユは静かに言った。


 「それに意思が軽い。


 気にする必要は無い、今はどっちが大事なのか、そんな事もわからないの?


 とでも言われたのか?」


 レフィーユは通信の内容を答えたのか、びっくりした様子を隠せない様子でロウファはレフィーユを見ていたが…、通信を再開したその時である。


 「何故、お前は自分で考えて行動せん!?」


 レフィーユの一括が場内に響き渡る。


 ミクモはそれに驚いてしまったが、ロウファはただレフィーユをずっと見ていた。


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