第三十六話
ただいま、A君とB君が競争してます。
その後、C子ちゃんが追いかけて行きました。
A君は、B君より少し足が遅いくらいですが近道を使ってゴールまで最短距離を選んで走ってます。
C子ちゃんは、状況を解説出来る後方を走ってました。
では、問題です。
A君、B君、C子ちゃん、この三人で予想される、ゴールに入る順番を答えなさい。
実に曖昧な問題を突然、出したような気がした。
だが、人間とは常識で計算が出来るモノで…。
答えは、A君、B君、C子ちゃんの順番が『常識』である。
つまり、C子ちゃんである…。
レフィーユは、最後に現れなければならないのだが…。
今、自分が屋上から戻るとレフィーユは、明らかにミクモより先に戻って、そこに保護者達に囲まれていたのだから不愉快である。
ひょっとして、レフィーユ・アルマフィという女性は時と場合によってと理由を付ければ、何かが起きても1コマで解決してしまうのではないかと疑問に思った。
そんな重要な事が今、この現場で起きている。
しかし、それはモンスター達は自己中な剣幕にかき消された。
「こんな勝負は、不当ザマス。
やり直しなさい!!」
ロウファの母、ミチコと他の両親たちも『そうよ』と騒ぐ。
時計を見ると残り20分くらいを過ぎていたのが、よほど苛立ちを誘ったのだろう。
「ふっ、この勝負は不当だとは思えんが?」
「どこが、ロウファちゃんは、その正々堂々と戦おうとしていますのよ!?
こんな追いかけっこのために、今までを過ごしてきたワケではないザマス!!」
「だから、まともにあちらも戦え…。
ふっ、では、それなら私も言わせてもらおう。
これは『現場で自分の能力をしっかりと発揮出来るかを認識するモノだ』と言ったはずだ。
ミクモは『犯罪者の役』を十分に演じている。
それに対し、ロウファは『治安部の役』すら出来てない。
つまり演じる事が出来ないは、役目を理解できていない証拠だと思うがな?」
そう毅然とした態度でレフィーユは返すので、さらにミチコ達の敵意が強くなる中、ミクモが戸惑いを見せていたので指示を出した…。
彼は目を瞑って、刺叉を作り出す。
それ見たレフィーユは、頷いてこう答えた。
「まだ、戦いの最中だったな…。
悪いがここは下がってもらおう」
渋々だがミチコ達は観客席に戻ると、そこにちょうどロウファが入って来た。
そして、ミクモの様子に驚きを見せていた。
「…!?」
逃げる姿勢から戦う姿勢へと変化したのが、警戒を強める。
「さて、ミクモ、準備はいいか?」
レフィーユは相変わらず仕草を見せずに通信をしたが、ミクモは答える代わりにロウファと同じようにヘルメットを被り直す。
「訓練を思い出せ、相手の油断を突け」
ロウファは身構えはしたが、動けなかった。
今まで追い付くと思われた相手に、近道を使われたとはいっても、ここまで追い付くことなく逃げられのだからだろうか、まだ何かがあると疑いもしたから無理もない。
そこで少し、距離を詰めようとしたミクモだったが、レフィーユは呼び止めた。
「いつもどおりで大丈夫だ、相手から動く…」
確信を持ってレフィーユは言っている。
その通りになるだろうと思った、ロウファも同じようにヘルメットを位置を調整し初め…。
ピタリと動きが止まったからだ。
ミチコは自分の息子に『何をしているの、戦うのよ』と命令を出しているのだろう。
「知らないようですね…」
ロウファが何故、警戒をしているのか知らないのだ。
ただ一方的に『戦え』と言い続けていたのだろうか、しばらくすると…。
「何をしているの、早くしなさい!!」
ミチコの大声が、武道場で響き渡り…。
初等部と高等部の面々が、その声がした観客席を覗き込もうとした。
その時である…。
「ふっ、心が弱い…」
レフィーユの呟きに、反応するかのようにミクモは突っ込んできた。