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第三十四話

 そして、次の日である。


 「双方とも、準備は良いだろうか?」


 武道場にてレフィーユの声が響いた。


 「はい!!」


 そう答えるロウファに対し、


 「あ、は、はい」


 ミクモの態度は…。


 「明暗分かれているわね…」


 観客席の自分の隣に座っている、セルフィの一言が物語っていた。


 そんな中をレフィーユは説明を始める。


 「…よって、今回の模擬戦はただの能力査定ではない。


 お前達が現場で自分の能力をしっかりと発揮出来るかを認識するモノだと理解してもらいたい」


 すると、ロウファは手を上げて答えた。


 「はい!!


 レフィーユさん、ボクに提案があります!!」


 「なんだ?」


 「今回の戦闘は東方術の使用して行なった方がいいと思います」


 武道場にいた白鳳学園の生徒がざわめく。


 中には予想されていた事だと見ている生徒もいるかもしれないが、実際に言ってくるとは思っても見なかったのだろう。


 そして、それを予想していたレフィーユは冷静に聞いた。


 「何故だ、その理由を教えてもらおう?」


 その瞬間、ほんの一瞬だがロウファの動きが止まる。


 それは観客席にいた自分からでもわかったが、おかげでどうしても理解してしまう事があった。


 「それは…、自分の能力を計る事が目的なら、実際に自分の使う東方術で、模擬戦を行う方が、判りやすいと思ったからです」


 「言わされてるわね…」


 セルフィの反応は姉も同じなのだろう、


 「良いだろう、許可する。


 その代わり怪我をさせない事も査定に入る事を、わかって言っているのだろうな?」


 もう一度、ワンテンポ遅れて答えた。


 「はい!!」


 一際、元気に答えたのが痛々しく聞こえる中、レフィーユはルールを静かに言う。


 「この戦闘は、町で実際に事件が起きた事を想定する。


 そのためには、まず、治安部役と犯人役を決めなければならないが…」


 言うまでもなく、ロウファは手を挙げる。


 彼が治安部役になり、ミクモは犯人役をする事になる。


 さらにレフィーユはルールを説明する。


 この戦いは、六十分間の一本勝負である事。


 時間切れは、犯人逃亡を意味し、治安部側、すなわちロウファの負け。


 そしてワザとらしく、レフィーユは思いついたように言う。


 「ああ、街での市民や建物を巻き込まれるのを想定しなければならんかったな。


 付加能力の使用は禁止だ」


 レフィーユも、深夜に打ち合わせした通りにルールを用いて、彼の付加能力を封じた。


 この時点で、セルフィは自分を見て その参加者の一人であるセルフィも立ち上がった。


 「おや、もう行くのですか?」


 「ふん、このまま私がここにいて、あのモンスター達に何か勘ぐられると厄介でしょ?


 アンタも、さっさと準備しなさい」


 そう言って、セルフィは向かいに集まっている初等部の保護者一団を一瞥して立ち去ったので、ポケットからごそごそとイヤホンとマイクを取り出してスイッチを入れた。


 「聞こえますか、ミクモくん?」


 受信を受けたミクモがビクリとして自分を探すので、顎に手を当てたフリをして、そのまま話す事にした。


 「ヘルメットの通信機を取り替えさせてもらいました。


 すいません、色々と用事がありましたので今朝は挨拶も出来ませんでしたね」


 ようやく口を動かしている自分をミクモは見つけ、お互いに挨拶代わりに頭を下げる。


 するとイヤホンから、声がした。


 「ふっ、何をやっている、さっさと準備をしろと言ったのが聞こえなかったのか?」


 「レ、レフィーユさん!?」


 慌ててミクモは少し離れて、自分の地球防衛軍の服を着始める。


 すると『やはり』である。


 「もしもし、聞こえます事?」


 もう一つ、別に持っていた通信機から、脂ぎった声が聞こえ始めたので、その通信機を踏み潰した。


 一瞬、電波が交差したせいか、イヤホンから雑音が聞こえ、ミクモが心配そうに聞いて来た。


 「ど、どうしたのですか?」


 「いえ、何でもありませんよ。


 どうも、この通信機の電波の状況が悪いようです」


 「ふっ、治安部が普段使ってる通信機が、接触不良を起こすようならそれは不良品だと思うが?」


 思わずミクモは彼女の方を見る。


 自分も見つめ、思いは一つである。


 「腕組みをしたまま、口も動かさず通信を入れる。


 貴女にだけは言われたくありませんね」


 半ば呆れ気味に彼女を見ていると、ミクモは言った。


 「あ、あの、作戦とか…?」


 「通信機をすり替えるのに苦労していまして、教えてませんでしたね…」


 その発言が、ミクモを呆れさせたかもしれないが、作戦を伝えるとミクモの表情は驚きに変わっていた。


 「えっ、いいんですか?」


 「ルール違反ではないではありませんからね」


 戸惑い気味だが、今度は別の距離からレフィーユの声がした。


 「では、開始線まで来てもらおう」


 三メートルくらい離れた場所に、地球防衛軍の格好をした両者は向かいあう事となる。


 この距離になるとさすがに、通信機からでもレフィーユの声を拾う事も出来て、ロウファの声も拾う事も出来るだろうが…。


 彼は、深呼吸を一つして東方術で十手を作り上げて気合を入れた。


 「はっ!!」


 まるで威嚇にも取れる叫びを上げたが、ミクモはゆっくりと刺又を作り出すので冷静なのがわかった。


 「それでは…始めっ!!」


 次の瞬間、ミクモは猛然と走り出した。


 あっけ取られたのはロウファだろう。


 作戦通り、突然、逃げ出したのだから、レフィーユを見るが彼女は冷静に答えた。


 「どうした、犯罪者は全員戦う者ばかりだと思っているのか?」

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