第三十一話
「ふっ、勝負勘…か…。
セルフィ、随分と面白い表現を使うモノだな。
だが、これは決定だ、変更はない」
廊下を歩くレフィーユに、セルフィは珍しく問い詰めていた。
「でも私たちを使っておいて、ミクモを使うなんて、この決断には頷けないわよ。
理由くらい教えてほしいわ」
この姉の決定には、この学園にいる生徒のほとんどが逆らう事が出来ないのは、姉の性格だからだろう。
しかし、食い下がるのは、この妹くらいではある…のだが、レフィーユは冷静に答えた。
「それはお前の報告を聞いたからだ。
確かに候補に挙がる子らは、ロウファと対等に戦えるのかもしれん。
そこまでは私の見解と同じだ」
「だったら、どうして…。
勝てないわよ?」
するとレフィーユが一旦、彼女を手で制して、まったく足音をさせずに歩き始めた。
そして、少し小声で答えた。
「だが、そんな子らほど、あのモンスターどもの『強い教育』を施されている。
それが問題でな…」
そう言って、さらにレフィーユは身を隠し、セルフィに指を差していた。
「ロウファちゃん、ミクモって子はどんな子なの?」
「ほら、前の武道の時にボクが取り押さえていた子の事だよ」
ミチコとロウファが親子の会話をしていた。
完全に気配を殺した二人に気付く事無く、その二人は話し始める。
「なら、勝てるのね?」
「大丈夫、アイツよりボクの方が強いから…」
「なら、余計な手は打たないでいいわね。
ロウファちゃん、貴方はレフィーユに実力を示すの。
レフィーユ・アルマフィにさえ認めてもらえれば、それが将来のためになるの。
わかったわね…」
それに頷くロウファを見ながらレフィーユは、その場を離れ、声が聞こえない距離を測った上で答えた。
「やはり、もし、その候補を使っていたらワザと負けるように仕向けさせるつもりだったようだな」
「ふん、でも明後日には戦う事になるのよ。
そんな短期間に、二人の実力差を埋める事なんて不可能よ…。
それに彼が一番、ワザと負ける可能性が高いと私でも考えるわよ。
姉さんだって、それに気付いているでしょう?」
そのセルフィの答えには、さすがのレフィーユも黙っていた。
そして、その夜の事である。
「勝負勘…?」
アラバは走り込みを終えたミクモに、武道の時間でセルフィの言っていた事を大まかに説明していた。
「二日では実力面を縮めるのは不可能に近いのは誰でもわかりますが…。
ここからが問題です。
しかし、西方術者の私は戦う事が出来ません。
どうすれば良いでしょうね?」
アラバはある問題に直面していた。
実質、『漆黒の魔道士』でもあるので、彼は素手で立ち向かえもする。
しかし、ミクモが問題だった。
正体を探られる事はあるだろうが、そんな事は倍を走らせて誤魔化せばすむ。
「そして、勝負は武器を持ったモノ同士の戦いなのだから、私が相手をするとなると大していい参考にはならないでしょう」
「そ、それなら、木刀でいいのじゃ…?」
すると突然、暗闇の中から声がした。
「ふっ、だが、あのモンスターなら考えるだろうな。
東方術者同士の戦いなのだから、お互いの東方術で勝負を決しようとな。
そうなると木刀と本物の武器では、緊張感が段違いだ…」
そう言って、ものすごく聞きなれた声がした。
そのまま照明に反射されその顔を映し出したのだが…。
「……」
思わず、ミクモと二人で黙り込んでしまった。
「何やってるんですか、レフィーユさん?」
多分、正体を隠しているつもりなのだろうが、仮面を着けた女性が腰に手を当てて胸を張って立っていた。




