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第三話

 「モンスターペアレント、ですけど事情が事情だと思いますが?」


 「それはな、校長も事情くらい話したさ、だが、私なりに調べてみてわかったが、どうも今回、初等部側は授業参観も兼ねているらしくてな。


 校長にこう言ってきたそうだ。


 『私達はワザワザ、ホテルの予約までして今日に望んだ。


 親が子供の成長を見にやってきて何が悪い』


 そう言って、聞かなかっただそうだ」


 似せる気の無いモノマネをするのが、よほどレフィーユがそのモンスターに呆れを見せているのが見て取れ、少し自分の中に『モンスターペアレント』というのをよく知らない性か。


 「随分と理不尽ですね」


 と少し冗談混じりにレフィーユに茶化しに掛かったが、彼女は窓を開けて視線で『アレを見ろ』と言った。


 「正味20分程度で終わる話が、2時間くらい延ばされた結果が『アレ』だ」


 「う、うわあ…テツヤさん…」


 どこにでもいそうな風貌の白鳳学園のテツヤ校長は黙ったまま、グランドを一人静かに眺めていた。


 「や、やめませんよね?」


 「何故、お前や他のみんなは自分達の校長を名指しで呼ぶのかはわからんが…。


 ふっ、決まった事は仕方がないさ。


 年下の人間と年上の私達が話したり接する事は人格形成の大事な事だというのも、理解をしている。


 私は全力を尽くすだけだ」


 『なるほど』と理解をする中、時間が経って少し疑問に思った事があった。


 「それでどうして私がこんな役をしなければならないのですかね?」


 ガラガラと食事を載せた手押し車の独特の金属音が鳴る中、どうして自分が食事係になっているのかレフィーユに聞いてみた。


 「すまない、指名手配犯の食事係など誰もやりたがらなかったのもあるが、正直、させる気もなかった」


 「それで私に?」


 「適任といえば、聞こえは良いかもしれないが…、お前は『指名手配犯』というのがどういうのか知っているのは、お前と私だけだからな」


 なんとなく自分の事を棚に上げた気になったのか、レフィーユは少し顔を曇らせたまま学園内にある留置所の検問を一緒に通ったが、自分も『漆黒の魔道士』として指名手配犯を何回か見たことがあった。


 快楽目的で人を傷つけるモノ、犯行に及ぶモノ、中には自分のような人間もいたが、ただ言えた事は…。


 「スーパーペインは『事実』ですから、仕方ありませんか…」


 「……」


 レフィーユは何も言わないまま、ゆっくりと自分の東方術でサーベルを作り出す。


 指名手配犯を前にする時は、常に武装しないといけないのが、この時代のルールでもあるが自然に車を押す手に力が入った。


 「あら、アンタが?」


 レフィーユが二人の番に自分の入る事情を説明する中、もう一人番を勤めていた、レフィーユの妹、セルフィもすぐにハルバートで対応出来るような自分に話しかけていた。


 そして、『ソレ』と至近距離になった。


 今までどこにいたのかわかるような色気の無い服に、東方術が機能しないように玉のような手袋をした男が自分を見て言った。


 「…セルフィとレフィーユはわかるが、何者だ?」


 「ふん、アンタが気にする必要ないわ」


 さらに手錠を光らせたが、セルフィは『さっさと用意しなさい』と視線を送った。


 「またスープにお粥か久々の食事とはいえ、こんなベーコンじゃなくて厚めの肉が食べてえよ」


 用意する最中、セルフィがペインの後ろに立つのは、何かしたら容赦なく攻撃をするようにするためだった。


 それを見て、玉のようなグローブに空いた小さな穴にスプーンを突き刺すと自然とペインと至近距離になったが、構わず離れるとペインはスプーンを使って器用に食べていた。


 「そんなに人の食事が珍しいか?」


 セルフィは何も言わないまま、ハルバートの重量を利用して伸し掛かろうとするが、いつもの態度で答えた。


 「随分と器用にスプーンを使う人だなと思ったモノですからね」


 「まあ、手がこんなだからな。様は慣れだ」


 セルフィはいつもの態度に呆れながら答えた。


 「アンタね、何も言わず聞かずはルールよ。


 さっさと…」


 途中で止めたのはレフィーユだったので、ペインは興味深そうに自分を観察して答えた。


 「ほう、珍しい人物が止めに入った。レフィーユ、こいつは?」


 「ふっ、そこはお前が知る必要は無い。ただの食事係だ」


 「いや、コイツは中々、度胸が据わっている。


 一目見てわかった。


 名前を知った所で、どうにもならん事くらいはお前も知っているだろ。


 それとも何だ、俺はコイツを『食事係』と呼べばいいのか?」


 そう言って、ペインは自分をじっと見て名前を聞いてきた。


 「じゃあ、漆黒の魔道士でお願いします」


 あっさりと答えるので、よほどタイミングが良かったのか悪かったのかセルフィはさらに呆れていた。


 「ふん、アンタの場合は『度胸がある』じゃなくて『タチが悪い』の間違いじゃないの?」


 すると指名手配犯のスーパーペインは笑っていた。


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