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第二十四話

 レフィーユが現場に近付く頃、このロウファの叫ぶ声が聞こえていたのだろう。


 「やぁぁっ!!」


 被害的な声でなく加害的に、十手を構えたロウファが、黒い法衣を纏った男に飛び込んでいった。


 その男は、大きく息を吸い込み手を前に出して構える。


 漆黒の魔道士と呼ばれた男は、ロウファの攻撃を全て防御に徹していた。


 その攻撃は洗練された動きではあるが、しかし、あまりにも基本どおりなため苦労はなく連撃を受け止める。


 そして最後の一撃に対して、一旦、ロウファの攻撃を左腕で受け止め。


 くるりと捌いて彼の蛍光色のヘルメットの目掛け、右手で突っ張る。


 当然、ダメージはなくよろけただけのロウファに言った。


 「退いてほしいモノですね、貴方では相手になりませんよ」


 ただ足止めをするだけだと気付かないこちらに対してロウファには、どう思ったのだろう。


 「そんな攻撃、効くものか!!


 ボク達には恐れない勇気がある、その勇気で漆黒の魔道士、お前を倒してみせる!!」


 意気揚々、しかし、それはロウファだけだった。


 視線だけで戦いの行方を見守っているミクモ、後の生徒達もそうだが東方術なりで武装は施すが完全に血相が引いていた。 


 自然と一対一の隊形が取れたから苦労がないとは言え…。


 「そういう事は、周囲を見て言ってほしいですね」


 思わず口に出してしまうほど、こちらも呆れているとロウファは言う。


 「ボクは、前回、恐怖というのを知った。


 もうボクは恐れはない。


 この勇気で、今度こそ、ボクは実戦でお前を倒す!!」


 そういって、ヘルメットを被りなおすので、言わされているのかどうかはわからない。


 ただ、自然に『敗けは許されない』と言い聞かせるように見えてしまう。


 そんなロウファは距離出来たのを見たのか『基本どおり(ベーシック)』に彼の付加能力、衝撃波を連続で素振り放つ。


 それを自分はただ法衣を翻して衝撃波を迎え撃つ。


 ロウファは視線を一切外さないのは、飛び掛るタイミングを見計らっているからだろう。


 「甘いですね…」


 そう呟き、ロウファの放つ弾幕を、法衣で受け止める事によって黒煙を上げ。


 彼が気付いた頃には、ロウファの視界は完全に闇で塞がれていた。


 単純な戦術ミスに苛立ちを見せた瞬間、彼の視界が次に目にするのは闇の中から襟を掴んだ両腕だった。


 「一つだけ言っておきます、貴方に足らないのは…」


 ロウファは引きずり込まれるかのように、前のめり…。


 「『工夫』ですよ」


 「うわあああ!!」


 一気に引き寄せられて、足払いから放り投げた。


 彼にも受け身を取るという動作も練習していただろうが、投げられれば視界を有して一ヶ所のダメージを無効にする防御本能など意味がない。


 ダメージと痛みにロウファは悶絶していた。


 もともと装備も重く、動作に支障が出ている事ですら改善してないのだから、誰かと同じようにアドバイスしてしまう。


 「貴方がそんな重たい装備をしている限り。


 これから先、誰にも勝てませんよ?」


 同じ事を指摘され、ロウファは驚くが、この会話はどうやら聞こえているらしい。


 ロウファはヘルメットを、押さえたまましばらく黙り、答えた。


 「ま、惑わされるモンか。


 この装備は、僕たちの安全を守るためにあるんだ。


 そうやって、自分の思う通りにしようたって…」


 「戦っているのは、貴方自身ですよ?」


 思わず遮るように言ってしまう。


 「う、うるさい!!」


 「それが貴方の治安部を目指す姿勢なのですか?」


 「ボクは正義のために治安部のリーダーになるんだ!!」


 「それは貴方のお母さんが満足だけだと思わないのですか?」


 「…うるさい、うるさい、うるさい!!」


 完全に足が止まったロウファに、構えを解いた。


 完全にロウファは動揺した。


 周囲も戦闘に加わる事もないだろうと思った、その時だった。


 「わあああ!!」


 ロウファからではなく掛け声が聞こえた。


 目視確認に至ろうとした瞬間、自分の両方の二の腕を束縛する圧迫感が襲い掛かる。


 ようやくその人物を見ると、それはミクモだった。


 彼の東方術『刺す又』が、ちょうど自分の体格と合わさったのだろう。


 「むおっ!!」


 取り押さえる事に特化した武器が完璧に機能を動きを封じる中、ミクモは言った。


 「それでもロウファは、が、頑張ってるんだ!!」


 足だけがドタドタとバランスを取る羽目になり、漆黒の魔道士は一気に壁に押し込まれていた。


 「ロウファ、今の内に!!」


 完全に油断した形で、ミクモを見たながら、一撃は覚悟しようと思い、防御本能を強めた。


 「余計な事をするな!!」


 思わず、ミクモと二人してロウファを見た。


 「ボクは実力を証明しないといけないんだ。


 お前は余計な事をするな!!


 コイツはボクが倒すんだ!!」


 そう言われ心なしか、自分を取り押さえていたミクモの力が弱まったような気がした。


 『し~ん』としてしまい、ため息を出すほど時間が過ぎた事を感じ取ってしまう。


 「じゃあ、キミは最大のチャンスを逃しましたね…」


 最初に反応して振り返ったミクモを、闇が地面にうつぶせるように束縛、唖然としたロウファを立ったまま捕縛した。


 「もし、貴方が勝てる可能性があったなら、連携が重要だったと言うのに…」


 そのまま地面に落ちた『刺す叉』を拾い上げ、ロウファに突き出す。


 それを見たミクモは慌てて、その武器を消したのでミクモを見て言った。


 「貴方に治安部のリーダーなんて勤まりませんよ」


 まだ、怯えてる初等部の子を見た。


 もう動く事はないだろうと、静かになっていると新たな気配がそこにやって来る。


 「ふっ、見てられん…な…」


 「おや、遅い登場ですね?」


 サーベルを右手にレフィーユは歩み寄って来るので、ミクモだけ束縛を解いて軽く羽交い絞めると、周囲を確認するようにレフィーユは聞いて来た。


 「随分と派手にやってくれたようだな?」


 「偶然ですよ…。


 相手は子供ですからね。


 これでも『手加減』はしたつもりなんですが?」


 ワザとらしく言うと、レフィーユは微笑みながら聞いて来た。


 「それで、見込みのあるような相手はいたのか?」


 「どうでしょうね、自分の実力もわからない一人だけが立ち向かって来ただけでしたからね。


 見込みのある人…と言われたら…。


 この子くらいでしょうね。


 不意打ちとはいえ、良い攻撃をしましたよ?」


 羽交い絞めしたミクモを軽く揺さぶると、レフィーユは言った。


 「ふっ、お目が高いな。


 なら、その男は助けてもらえないだろうか?


 子供には手を出さない。


 それはお前のルールでもあるはずだろう?」


 すると眼中にないと言われたと思ったのかロウファは言った。


 「レフィーユさん、下がってください!!


 ここはボクが戦います!!」


 「下がっていろ、ロウファ。


 お前の目の前に立っている相手は、お前に手には負えないのが、この一戦でわかっただろう?」


 するとロウファは黙り込む、おそらく言い返す文章を教えてもらっているのだろうか、こう答えた。


 「…お言葉ですが、レフィーユさん。


 ボクが手合わせをしている時、ボクはレフィーユさんの動きに反応できました。


 あの魔道士の時でも、動きに反応できました。


 だから、ボクも十分に戦えます。


 せめて戦闘に加わらせてください」


 「言っておきますけど、私は手加減していると言ってませんでしたか?


 おそらくですが、レフィーユさんも、その時は手加減していると思いますがね」


 そう言って、ミクモを解放するついでにロウファも下がらせようとしたが、退く気はないらしく、何度目か肩を竦ませた。


 それをレフィーユはじっと見ている事に気付いた。


 「どうしました?」


 「いや、ついお前の役目というのを考えてしまってな…。


 難しいものだな?」


 ようやくレフィーユにじっと睨まれたが決まり手か、ロウファは後ろに下がる。


 「ああ、私はつい怒られると思いましたが?」


 そのため二人にしか、この会話は聞こえなくなっていた。


 「ふっ、どこがだ。


 お前は正しいと思ったからやったのだろう?


 どこが責めれる、こんな重要な任務を一人でこなすのだから、私は褒めてやりたいくらいだ」


 つい笑ってしまい、空を見上げてしまう。


 「じゃあ、見せてあげなければいけませんね。


 貴女の実力がどれほどのモノか?」


 「たまには良いのかもな。私のよく知ってる人物は『それが』出来ない男だからな」


 そして、静かに微笑む。


 「私も、見てみたい…」


 相手はサーベルを構え、自分は闇の法衣を被りなおし。


 不思議と飛び込むタイミングは一緒だった。


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