第二十三話
「ぐあ!?」
車のドアを思い切り蹴飛ばした反動で体勢を崩したファミリーの一人を、すかさずサーベルで打って聞いてみた。
「ふっ、消耗戦とは、随分とボスを助けるのに手間を掛けるマネをするモノだな?」
短くまとめた髪を掻き揚げた、いつもの仕草に歓声が上がる。
その空気を引き締めるように彼女は叫んだ。
「グズグズするな!!
保護者どもに気付かれる前にケリを付けるぞ!!」
士気が上がる、レフィーユにも油断はない、しかし、ファミリーも陣形を組んでいく、それは治安部と同じ三人陣形だった。
「はあぁぁぁぁ!!」
サーベルで相手の攻撃を攻撃で弾き返し、さらに攻勢に出ると陣形は崩れもする。
しかし、体勢を守っている限り、どうしても時間が掛かってしまう。
「ふっ、ペイン様々だな…」
見るとセルフィもハルバートを振り回し、相手に切りかかっていた。
「ふん、なんで、そんなに冷静なのよ!!」
斧槍の形成上、重量で私より陣形を崩すのを簡単にやってのけていたが、形状ゆえに残りの二人に囲まれる。
しかし、セルフィは構う事無く、一人に集中して攻撃を加えに掛かる。
戦術上、セルフィの選択は間違い。
それを見た完全に背後に回った敵が、セルフィを取り押さえようと駆け寄った。
そのままセルフィは、ハルバートの柄が地面を叩く。
すると走りかかっていた、そのファミリーの身体はまるで顔に何かぶつかり、まるで鉄棒のさかあがりをするかの身体が宙に浮いた。
「ぐあっ!!」
受身も取れず、背中からもろに落ちて呼吸困難に陥ったトコロを、さらにセルフィがハルバートを振り下ろす。
瞬く間に二人を打ち倒すが『確保』までにはいたれなかった。
すぐさま次の三人組がセルフィを遮り、残った一人が、叩き伏せた二名を回収するのでセルフィは苛立っていた。
「セルフィ、一人で掛かるな!!
全員と連携しろ!!」
『いくぞ!!』という掛け声と共に、レフィーユは交戦中の二組に割り込みサーベルを振るう。
一撃、二撃、先ほどとは打って変わって、手首目がけて素早く打ち込む。
武器を落として、味方に対して有利に展開を運ばせようという判断だった。
そして、チャンスがあれば、一撃で叩き伏せる。
ようやく攻撃をレフィーユに仕掛ける事の出来たファミリーの一人が、彼女の付加能力、残像によって完全に体制の崩された状況でサーベルを振り下ろされていた。
「確保!!」
士気旺盛な状況だったので、治安部員も従来以上の実力を発揮していた。
「レフィーユ、まずい時間が来た!!」
しかし、ガトウの一言にレフィーユも思わず、舌打ちをする。
「注意しているのか?」
「さっきからずっと言っている!!
ふざけた事に、もう来ているそうだ!!」
『ちぃ』と無線機をもらおうとした時、さらに通信が入ったのでガトウが応答する。
「レフィーユ、まずい、魔道士が初等部の車に…!!」
その時、何のために現れたのか解ったのは、レフィーユだけだったがガトウは言った。
「あいつらじゃ、相手にならん。
ここは俺たちが何とかするから行け!!」
レフィーユはガトウを見て頷いたが、セルフィは言った。
「ちょっと、ここの指揮はどうするのよ?」
「ガトウに任せる。
この男は、私の入る前、この学園の治安部のリーダーだった男だ」
そのまま走って行くレフィーユを見て、ガトウは周囲に叫んだ。
「これより指揮権をガトウ・レオナが預かる!!」
するとイワトが振り返って聞いた。
「レフィーユさんは?」
「いつもの所要だ…。
お前等、何とか持ちこたえろ!!」
『おお!!』とレフィーユとは違う士気の上がり方をするが、セルフィは目を丸くしていた。
「貴方が『ガトウ・レオナ』だったの?」
「おいおい、まさか女と間違えたとか言うんじゃねえだろうな?」
「ふん、間違えてたわよ。
どおりで姉さんから聞いてみたら、笑っているわけだわ。
姉さんから聞いているわよ。
『良いリーダー』だったそうね」
「昔の話だ、実力の世界でお前の姉さんの方が上だったから譲ったまでだ。
それより今はそんな話をしている場合ではないだろう?」
「そう、『治安部適合試験、第一位』の実力を見せてもらおうかしら?」
するとガトウは背中を向けて、彼の東方術、鉄棒を肩に担いで言った。
「戦いは点数だけで決まらん」