第二十一話
僕達、私達は、様々な理由、別々の場所で大変な目に合ったけど。
僕達は、兄弟だ。
血は繋がってないけれど。
僕達は『痛み』を共有できる兄弟だ。
「痛み…か…、ふっ、まさかここでもそれを聞く事になるとはな」
レフィーユに『兄弟』の意味を教えると、やはり『痛み』の部分でスーパーペインの事を思い出したのか、そう一言、感想を言った。
ちなみにこれは両親を様々な理由でなくした子供達が入る施設に張ってあるポスターの事だった。
施設を出る事になる子供が犯罪など犯さないように、先ほどのこれを声に出さて読ませ、それによって一人ではない事、相談できる場所がある事を自覚させる簡単な予防策なのだが。
実質これで犯行を行なうのを踏みとどまったりする人がいるので効果があるらしい。
そして、現在に至るまで自分を含めてやらされていたなと昔を思い出していると、まだ息を切らせているロウファがこちらにやって来た。
「レフィーユさん、もう小休止は結構ですので、ご指導お願いします!!」
「そんな事は呼吸を整えてから言うのだな。
リーダーに求められるのは、正確な指示、冷静な判断だ。
そう猪突になるな。
落ち着くまで私は、周囲を見ておくさ」
「お言葉ですが、レフィーユさんはそこから動いてません。
視察ならもっと近寄ってから、見に行くのが普通だと思います!!」
「それが出来るのならな…。
どうも私が接近すると、ここの初等部の生徒はどんなに疲れていようが元気になるみたいだからな、私が遠目から見た方が初等部の本来の能力が見れるのさ」
思い当たる節があるのか、レフィーユは、イワトと一緒に走っているネムを『じっ』と見る。
すると誰かと同じように、ヘルメットを直し…。
背筋を伸ばして走り出すので、どうもグランドから見下ろしている保護者から指示を出しているのが見て取れた。
その点を思えばまだミクモを担当している自分は、良い方だと思っていると、レフィーユは微笑みながら言った。
「しかし、お前が弱みを見せるとは珍しい事もあるな?」
「それは相手に対して失礼な事をしましたからね。
ですから、こうやって謝るのは弱み以前に礼儀じゃないですか」
「ふっ、なるほど、ミクモそれなら遠慮なく聞いてみるが良い。
この男なら色々と教えてもらえるだろう」
『質問してみたらどうだ』とレフィーユは言うが、どうもこのミクモは年上の人に対しての抵抗があるようなので、こう促した。
「ジュース奢ってくれでも、何でも良いですよ」
「私ですら奢られた事のない男がこうも言うとは、随分と大盤振る舞いじゃないか?」
「睨まないでくださいよ。
ジュースくらい奢った事あるでしょう?」
そのやりとりで、ようやくミクモの緊張がほぐれたのか、笑いながら言った。
「な、な、なら、スーパーペインさんの事を教えてくれませんか?」
つい不振に思ってしまった。その視線を感じたのだろうか、ミクモは慌てながら言った。
「す、す、すいません。
馬、馬鹿な事を聞いてますね」
「ミクモ、そんなの前に教えてもらっただろう」
ロウファが前に出て、レフィーユの前で頭を深く下げて言った。
「すいません、僕たちはスーパーペインの事を事前に学んでました。
ミクモ、どうしてキミは…。
『そんな事が出来ないんだ』」
この一言には、レフィーユも顔をしかめていたが、ミクモは答えた。
「だ、だ、だって、僕だって知ってるけど。
相手は100人以上を殺害した…なんて『漆黒の魔道士』より、不思議だと思わないかな?」
「そんなのスーパーペインが勝手に言って、怖がらせているだけだよ。
そんなので怖がせたから、きっと今まで捕まらなかったんだ」
そう言って、この会話を一方的に終わらせようとしたが、レフィーユは言った。
「なるほど、ではアラバ、少しばかりロウファに教えとくべきだな」