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第二十話

 そういう調子で、ミクモとヘルメットの機能を確認していると、ミクモは時折、レフィーユの方を見ていた。


 自分にとってはいつもの光景だが、そのレフィーユは息を切らせたロウファに言った。


 「どうした、その程度か?」


 ロウファは、もう一度、構える。


 さっきから一太刀も与えられない状況だったのが苛立ったのだろう。


 「やああぁぁ!!」


 飛び掛る様は無防備に近く、レフィーユは冷静に横に避ける。


 だが、ロウファもそれに反応出来るくらいは鍛えられているのか、レフィーユのいる方向を憶測だけで振り向く…。


 「す、すごい…」


 さっきからずっとミクモはこの調子で感嘆していたがこの時は、不思議とはっきりと聞こえるほどの一秒間だった。


 ロウファの目視する頃には彼女はいない。


 その一秒は、レフィーユが与えたのだ。


 遠目から見ている自分でもわかった。


 ロウファの振り向く、その体勢を読んで反対側にさらに後ろにまわった、そんなレフィーユはまるで座禅をする僧侶に『パシン』とするように木刀を当てるので、ため息をついた。


 「いい手品ですね」


 「て、手品、そ、それってどういう意味なんですか?」 


 そう言うと、レフィーユはまるで呆れるようにロウファに言う。


 「立派なのは装備だけだな?」


 そんな挑発にロウファは顔をそらすように身体を沈めたが、実際、これはヒントだった。


 「この防衛隊の服、確かに耐火性に優れ丈夫でしょうが、かさばって行動に支障が出てるのですよ。


 さらに信号弾、照明弾、シグナル弾もありますね。


 簡易医療キット、手錠に何でしたっけ…これ?」


 「あ、安全ベルト、ハーネスです」


 「たくさん常備しているのはいいですが、信号弾だけでも、一発だけじゃありませんでしょう。


 それを抱えて行動しているのですから、最初の行動をするのは構わないのですが、次の次のと行動を取ろうとすれば、どうしても装備の重量に振り回されてしまうのですよ」


 「は、はあ、く、詳しいのですね?」


 つい何ともない指摘に警戒をして目を細めてしまうが、だが相手は初等部だった。


 「…まあ、年の功ですね」


 そう言うと納得をしたようなので、こう付け加えた。


 「まあ、いくら上等な装備をしていても、重量も考えず実戦投入させようなんて、よほど現場を知らない、人が注文したのでしょうね」


 そうミクモに言うと、どうやら思い当たる事があったらしく。


 「あ、あの、じ、実はこの防護服も、ロウファのお母さんが関わってるらしくて…」


 そんな中、ロウファは息を切らせている。


 経験上、もう動けないだろうと解っていたが、その身体は一瞬、『ビクリ』と動いた。


 思わず肩を竦めてしまう。


 …おそらくだが、外野席からヘルメットに通信が入ったのだろう。


 「ミュンヒハウゼン・ミチコ…」


 見るとミチコも苛立っていた。


 これほど実力差があったとは思わなかったのだろうか、それともどう思ったのだろう。


 とにかくヘルメットを正すフリをして、通信を聞くロウファは見るに耐えないので、ミクモの事を聞いてみようと思った。


 「…どうして面接に参加しようと思ったのですか?」


 ミクモは戸惑うが、レフィーユから手渡されていた面接参加者の中にミクモの名前があった。


 「ぼ、僕らのクラスは全員、参加…する事になってまして…」


 「ご両親が薦めたのではないのですか?」


 「ああ、ぼ、僕の両親は事故で…」


 治安が下がったとはいえ、みんなには両親がいるものだと勝手に自分が思っていた。


 「……」


 ミクモの返答は正しい、しかしその分、つい黙ってしまった。


 この反応は間違いでもある。


 「あ、ああ…別に気にしてませんから…」


 「私も同じ身なんですが、少し軽率すぎましたね…」 


 謝ると、そして微妙な空気が漂い始めたのは言うまでもない、それを取り払うために冷やかした。


 「という事は『私達はみな兄弟』という事ですか?」


 「あっ、それ」


 ミクモは驚くようにこっちを見た、この話題は施設で育ったというから出来る。


 「やはり貴方の施設にも?」


 「あ、あれ、声を揃えて言うやつですよね。


 やっぱり、お、お兄さんもやらされたのですか?」


 「やらされましたよ。あそこにイワトというゴツい人がいるでしょう。


 あの人もそうなんですが、一緒にやらされたモノですよ」


 『へえ〜』とミクモがイワトを見ながら明るくなるのがわかったので、この急ごしらえの話題も役に立ったと安心していると背後から声がした。


 「ふっ、何だその『兄弟』とは?」


 小休止中のレフィーユが、いつの間にやらミクモの背後に立っていた。


 「レ、レフィーユさん!?」


 そのおかげでミクモは腰を抜かすように、しりもちをついた。


 

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