第二話
「ふんふふふーん♪ふんふふふーん♪鈴がっ鳴る♪」
そうクリスマスソングを口ずさみながら、イワト・ゲンゾウは張り切って自分の任せられた力仕事をこなしていた。
別に今はクリスマスという訳ではない。
ただ、この男はイベント好きでそれでテンションが上がれば、何かしら季節柄の鼻歌を歌うような男なのだ。
「ゲンゾウ、その机はもう必要ないから、隣の教室に持って行ってくれ」
もう一人、イワトと同じくらいの大柄な体格の男がイワトを振り向かせた。
名前はガトウ・レオナという。
先ほど『男』と言ったとおり、名前にレオナと付いているこの大男は、イワトがある程度運んで来た、
いつも使ってる机よりワンサイズ、小さい机や椅子を大小大小と言った感じに交互に並べ立てていると、他の男子がレフィーユに寄ってきた。
「これなら初等部の児童が、治安学習の授業中に質問されても隣に私達がいるから即座に対応出来ると、このジング…」
「ふむ、だが、やはりこれでは授業の後で、通行の邪魔になるようだ。
お前には悪いが、右側に私達が固まって、もう片方に初等部が固まるようにしてくれないか?
出来れば意見交換の際の話し合った、生きた意見が聞きたいのでな」
そう言うとさっきの男子生徒まるで、おだてながらまるで自分が考えたかのように他の生徒に命令を出して、彼女の近くを離れないでいた。
「……」
しかし今、彼女は機嫌が悪いのもあり、無言で彼女の元々細い目がさらに鋭くして突き刺すので、普段しつこいこの男もさすがに理解したのだろう。
『お前も働け』と…。
そそくさと作業に移って行くのを見ていると、レフィーユは次に窓拭きをしている男、シュウジ・アラバに眼をやった。
「よっこいしょ」
彼にはもう1つの『顔』がある。
だが、その『顔』に似合わない声をあげて窓のサンから着地すると機嫌悪いレフィーユと目があうと。
それは拭き作業の進行方向のままさっさと逃げて行った。
「…何故、逃げる?」
「例え女性でも、機嫌の悪い人に近寄って痛い目を見るくらいなら逃げますよ。
私の方こそ言わせてもらいますが、指名手配犯を預かっているというのに、初等部の合同授業を行うなんて随分と余裕があると思いますが?」
「仕方ないだろう。
事態が事態だからな、最初は私も断った。
だが『支援者』がうるさくてな。
このまま断り続けたら、支援を止めるそうだ。
私としては言わせておけと言いたかっただが…な…」
レフィーユは、その理由をかみ締めるように黙った。
その態度が彼女自身、このイベントには乗り気だった事を思い出させた。
では他に理由があるのかと『どうしました?』と聞くと理由は頷けるモノだった。
「実はその支援者の子が、初等部にいてな。
いや、これは理由にならんな。
まあ、その親が…」
「親が…?」
「浴に言うモンスターペアレントなんだ」