第十九話
「ふぁああ…」
イワトは早朝に相応しい大あくびを披露していた。
彼は『スーパーペインの監視』というAM1:00からAM5:00までの任務を終えたのだから仕方のない事だろう。
後、彼の仕事と言えば、治安部の活動で特別に設けられた休日を利用して爆睡するだけ、それだけ自室に戻る帰路への足取りは軽く、アラバの部屋を横切った時。
ギィィ…。
背後でそんなドアの音がした。
それは別に友達の部屋だから何事でもない事だと思うだろう。
だが、朝日も上がってもないそんな時間にドアが開くので不振に思い、振り向くと、そこから出てきたのは、眠っている妹を背負ったレフィーユだった。
「…おはよう」
「レフィーユさん、どうしたんすか?」
知っている人物だったので少し安心したが、彼女が出てきたのは友達の部屋、しかもドアノブに何の代用だろうか木の棒が突っ込まれていたのが、さらに不信感をあおったのでイワトはアラバの部屋を覗き込もうとしたが、ゆっくりとレフィーユは手で制して言う。
「そっとしておいてやれ…」
止める気もないのだろうか、さっさとレフィーユは出て行く。
おかげでイワトはさらに困惑してしまうが、イワトはそこが友達の部屋だったのため、ほっとけなかったのだろう。
そっと一度は閉じたドアを開いて…。
「アラバ…?」
その名を呼ぶが、まだ薄暗い室内だったせいもあり、最初は誰もいないと思えるほど、その部屋は静まりかえっており、トイレ、浴室、さらに窓際にいたるまで奥へと順に調べるが見つけられず。
更に日が昇ったのか、さらに明るくなってようやく見つける事が出来たが驚いた。
「うおっ、アラバ、…どしたんや?」
「何でもないです」
「何でもないって、お前、服がボロボロじゃろうが?」
イワトの言うとおり、彼の衣服はズタズタに切り裂かれて…。
カタカタカタカタ…。
と、彼は震えて『ぶつぶつ』と何やらを呟いていた。
「アラバ、何があったんじゃ?」
イワトは何を呟いているのかを耳を近づてみた…。
「昨日の私は死にました、昨日の私は死にました、昨日の私は…」
「アラバ、しっかりしろ!!
アラバ…、アラバー!!」
……。
そんな叫びの朝を迎えた、アラバは…。
「はい、よーいどん」
手拍子と同時に初等部のミクモを走らせていた。
今は体育の授業で親睦を深めようとしている最中である。
なら、普通はスポーツで交流を深めるのが普通なのではないのかと自分でも思うが、誰かの差し金なのだろう。
みんなが一対一で体育を行っており、レフィーユもロウファと一緒に体育をしている最中である。
今、ミクモのタイムを計ってはいるのだが、それより気になっていたのは、ミクモ、いや、初等部達の服装である。
前のパトロールの時に見られた、あの少年防衛隊の服装だった事だ。
おかげでミクモを走らせている間、その服の装備を一品、一品、確認出来るいい機会ではあったが、ほとんどの生徒はそれに気づいてて、少しやりずらそうにしているのも無理もない。
とりあえずゴールをしたミクモに装備されていた信号弾の銃口をミクモに向けてみた。
「いけませんね、タイムが落ちてますよ」
ミクモはさすがにジョークだとわかるが、一応、身を屈めるので弾が入ってない事を見せながら返すと、さすがに次に何をやるのかをわかったのだろう。
今度はヘルメットを差し出すために、さっきから人形を担がせて走らせていたせいか、それを脱ぐの時間が掛かっていたのを見てしてアドバイスをした。
「人を運ぶ時は、無理に担がない方がいいですよ」
「えっ、で、でも、ロウファに、けが人を引きずったらかわいそうだって注意されましたから…」
「…なるほど」とあの性格なら仕方がないとロウファを見ていると頷けたが人形の足の部分をミクモに見せる。
「これ、引きずった後があるでしょう?
足に怪我をしているのなら話は別ですが、みんなそうしてますので、別にいいと思いますよ」
まだ納得が出来ないのか、ミクモは戸惑いを見せるが肩を竦めて言う。
「貴方は初等部なんですよ。
自分の命を助けられて、大の大人なら文句は言いませんよ」
そう言いながら、人間の平均体重50キロの人形を担いで、25メートルを往復して走るミクモにはつい目を細めてしまっていた。
先ほど『タイムが落ちている』と言ったが、自分の手元にある初等部の記録を軽々と塗り替えている記録なのだから。
「あああ、あのヘルメット…」
そんな彼の記録にしばらく注目していると、ミクモがヘルメットを遠慮がちに差し出している事に気がつくのに時間が掛かってしまっていた。




