第十五話
ロウファが強いだろうとされているのは、別に前の立ち回りを見たからではない。
『魔法が使える』この時代、彼が秀でていると言われるのには、大きな理由があった。
彼の東方術『十手』という簡単な武器に、付加能力である『衝撃波』その二つがあまりにも基本的だからだった。
凡庸性に優れているというのは教本にも載りやすく、指導する人間にしても簡単に教え込め、自分の戦術を早い時期に叩き込める。
そのおかげが彼、ロウファの自惚れる理由なのは言うまでも無いのだが…。
完成された戦闘能力が相応の成績をたたき出す内は、彼がこの自惚れを自覚出来るのは難しいだろう。
「おっと…」
食堂の洗い場にて思わず収めようとしたスプーンを落としそうになるが、ようやく片付けが終わった。
そこを出たのは深夜に差し掛かろうとしていた。
「アラバ」
後ろからレフィーユの声が聞こえてきたので振り向くと、どうやらちょうど彼女も帰りらしい。
そして、やはり気になる事なので彼女に聞いてみた。
「挑戦を受けるのですか?」
「ふっ、おそらく今日中、明日には受けざるおえなくなるだろうからな。
たとえ仕組まれているとしても、目星くらいは付ける必要があるだろう」
「やはり気付いていましたか?」
「ふっ、『負ければお前は、モンスターたちの言う事を聞け』と言っている様なモノではないか。
これほど滑稽な話はないが、私とて実戦に行動できない生徒を現場に出す気など毛頭ない…」
そうは言うが難しい検索条件の中で、初等部の生徒を探しださなければならないのは間違いない。
それならレフィーユと手合わせさせて、自信を無くしてしまえば良いのではないかという、自分達側の白鳳学園生徒達にも、そんな意見も出始めているが誰が燃え盛る油に水を注ぐだろう。
「受けざる負えなくなりますよね…」
そう言っている内に、自分の部屋に着いたのでカギをクルリと回していると、自分の表情が変わった。
「どうした?」
「カギが開いてまして…」
「なんだと…」
自分が魔道士だからだろうか、すぐさま彼女は警戒する。
お互いに頷きあって、隙間を少し開けると電気も付いていた。そのおかげで誰かがいると言うのがわかった。
さらにゆっくり中を覗き込むと…。
「…セルフィ?」
話し声が聞こえて来たのである。
「まったく姉さんといい、どうして…答えなさいよ」
誰かと話しているのだろうかとさらに覗き込もうとするが、セルフィのいるであろう位置には、彼女の東方術であるハルバートの柄が見えたからので、それがさらに警戒を強める結果になったのだが…。
ようやく異変に気付いたのは、彼女の立ち位置から話し声が聞こえるのなら、相手いる位置には自分のPCがあったからだからだろう。
「ふん、私なんか、いぃぃぃったいい、何なのさぁぁ」
確信に至れたのは、ろれつの回らない声と机の上のある飲み物だった。
「あぅ、何してんのよぉ。
アタシぁ、アンタに言いたい事があんのぉ。
こっちに、座んなさい!!」
そんな酔っ払ったセルフィに、見つかってしまった。