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第十三話

 建物の屋上から誰もが自分を見ていることを感じながら、そのまま壁に張り付きながらすべり降りると、レフィーユは聞いてきた。


 「相変わらず派手な登場の仕方をする男だな」


 「別に狙ってやってるわけではありませんが、今回、気にして、これでも地味な登場の仕方を選んだつもりなのですが?」


 「壁、一面に闇を撒き散らせて着地するのは、派手というのだが?」


 魔法使いはおどけて、レフィーユは微笑みを浮かべ、まるで世間話をするように、自然と集団のど真ん中に押しやられてしまう。


 「ふっ、随分、にぎやかに行動するようになったではないか?」


 「今回、傍観を決め付けていたのですがね。


 彼等が随分と頑張っていましたので、顔くらいは見せて置こうと思ったのですよ」


 『おおっ!!』とペイン側の歓声が上げる。


 しかし、こちらにしてみれば、本当の狙いは周辺の住民と初等部の避難のための時間稼ぎだった。


 さらにペイン達の士気が上がり、治安部の中には後ろに下がろうとするモノ達も見え始めたので、それを見せないようにレフィーユを褒める。


 「しかし、さすがですね。


 いきなりの奇襲に対して、ここまでの硬直状態に持ち込むとは…。


 どうやら彼等の奇襲は『ここまで』の様ですし、彼等では貴女方を消耗させるのは出来なかったようですね」


 一瞬、静かになったが、すぐに士気が下がったのが見て取れた。


 ようやく気が付いたのだろう。


 治安部の面々の被害が、そこまで大きくない事に。


 「後は『全滅』するのも時間の問題でしょうね」


 「ふっ、お前だったら、どう動かしていた?」


 「よく話し合って、奇襲の打ち合わせをするべきだと思いましたね」


 「だが、それでも私はこの硬直状態に持ち込む自信はあったが?」


 「それは現に今、そうしていますからね。


 それでも、ある一手を教え込む余裕はありましたよ」


 「どんな一手だ?」


 「もう無理でしょうが言わせてもらいますが、私が現れたのにも関わらず攻勢に出る事ですよ。


 残念ながら、今ある手駒の中にはそんな人はいないというのは…」


 そう言いながら、初等部の避難は手間取っていた。ロウファだけではなく避難するのを頑なに拒む生徒達もいたのだ。


 「あまりにも!!」


 治安部の隙間を縫って、闇が初等部の子の身体にまとわり付かせていた。


 「わわわわ!!」


 その初等部の生徒は慌てて取り払おうと『素手』で侵食を防ごうとするが、そんな事で何とか出来るわけがなく捕食を完了させる。


 別に捕縛するつもりは毛頭なかった、だが、怖がらせるには十分な手段だった。


 そして、セルフィが期待通りいち早く反応して、頭を撫で回している闇の帯を切り裂くと、その子の装備していたヘルメットが脱げた。


 おかげでセルフィに睨みつけられてしまったが、このまま戦闘に加われば被害も出るよりマシなのは目に見えていたので、レフィーユは『すまない』と頷いていた。


 「…不手際が多いのですよ。


 さて、みなさんも私がここに現れた意味くらいは理解してほしいのですがね?」


 ペインの部下はどういう事か、聞いて来たので肩を竦めながら答えた。


 「ただでさえレフィーユさんに硬直状態に持ち込まれて、もう少しすればセルフィさんがやってくるのですよ。


 そうなると、もう勝てる道理がなくなるのは目に見えているでしょう。


 ここは私に任せて、さっさと撤収しなさいと言わないとわかりませんか?」


 「に、逃がすな。このジング…」


 「おやおや、そんな事で陣形を崩すとは随分な小物ですね?」


 そういいながら闇を使って、先ほど脱げたヘルメットを拾い上げるとレフィーユは、こちらもホントに逃がすために時間稼ぎをしているのだと、態度でわかったのだろう。


 「ふっ、部下思いだな。義理でもあるのか?」


 「いいえ、ありませんね。


 ただあの人達は、ホントにリーダーを慕っていますので…?」


 「どうした?」


 何か違和感に気付いたので、一旦、周辺を見回し、あまりにもヘルメットを凝視していたせいか、レフィーユは気になったのだろう。


 「ちょっと静かに…」


 治安部も取り囲みだしたが、自分の奇行をじっと見ていた。


 「レフィーユさん、これ…」


 そう言って、ヘルメットを耳に当ててようやく『違和感』に気が付くと、ヘルメットをレフィーユに手渡すと同じように彼女も耳を当てていた。


 ちょうど耳を付けている、その辺りは、よく聞こえるだろう。


 『頑張るのネム、貴方は戦うの。解る?』


 そのヘルメットには、両親の声が聞こえていた。


 『避難なんか、無視しなさい…。


 聞こえてるの…?


 貴方は戦うの』


 多分、このヘルメットを装備していた子の両親の声だろう。


 このあまりの異常さに、思わずレフィーユに聞いてみた。


 「レフィーユさん、今回は何と戦う事になるのでしょうね?」

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