吾輩は犬である
猫みたいな性格のわんこもおるんやから、
ツンデレタイプのわんこもおるはず!
という妄想の延長線上。
吾輩は犬である。名前はもうある。ココアだ。
吾輩は立派なオスである。間違いなくオスの象徴も
存在する。
なのに、何故このような名前なのだ。
我が輩の家族は人の言葉でいうところの、
ネーミングセンスというものがないのだろうか。
我が輩前に見たぞ。母が
『ココア飲む人だれー?』『私のむー』『俺も』と、姉と弟がほかほかと湯気の立つ、薄い茶色の液体をさも美味しそうに飲むのを。
同時に思い出した。美味しそうに姉が〈ココア〉と似たような茶色い物体を食す物だから、ついつい、机の上に顎をのせて、クンクンと匂いを嗅いで口に入れようとした事があった。その時、姉から『チョコレートはココアには毒だから絶対食べちゃダメ‼︎』と追い払われ、どれ程叱りつけられたか。そんなに怒るのなら、我が輩の目の前でさも美味しそうに食べないでくれたらいいのに。
せめて、口に入れるものから離れた名前にすれば良いものを。
色々と悲しくなったので、寝た。
……………………
朝。父が長い紐を持って、私の方を振り返り、
『じゃあ、ココア、散歩行こっか。』と言った。
散歩‼︎仕方がないな、父の頼みだから行ってやろう。勘違いするなよ。
別に嬉しいなんて思ってないんだからな!
我が輩は急いで父の方に向かって尻尾を振りながら、駆け出した。
父は、空を見上げる程の大きな白の扉を開けると、私を連れて外に出た。我らの日課だ。
我が輩の毎日の楽しみなのだ。
父は忙しくていつも空が真っ暗になるくらいの最も眠い時間に帰ってくる。だけど、朝だけは必ず我が輩と散歩に出てくれるのだ。たまに、早起きした姉や弟も一緒に散歩に出ることがある。そういう時は、クールで強くて品格のある我が輩も流石に興奮して、普段適度にしか走らないにもかかわらず、無我夢中で走り回って、父や姉や弟の周りをぐるぐる回るのだ。
特別大サービスだ!
まぁ、それは一旦置いておいて。
いつもの遊歩道、いつもの草花、いつも一緒に散歩に行ってくれる父、何も普段と変わらないはずなのに、何故か違和感が拭えなかった。
でも、父が私に微笑みかけて、色々とお喋りしてくれるのが嬉しくて、やっぱりどうでも良いかと思った時、いつも通りかかる家の大きな真っ黒の犬が、我が輩を見て「ヴー、グルるるるる、っガウ!」といきなり我が輩に大きく口を開けて飛びかかってきた。
ひっ、食われる!
「キャイン‼︎」思わず我が輩は後ろに飛び上がった。
……………………
そこで我が輩は目が覚めた。奴が近くにいないかと、キョロキョロと周囲を見回した。
すると、先程まで洗い物をしていたのだろうか。
母が、いつの間にか 手を拭きながら心配そうな顔をして近づいてきていた。
だが、何も問題はなかったので、何も無かった事にした。
少し尻尾の先は股の間に挟まってしまったかもしれないが。いや、少しである。そう少しなのだ。我が輩は立派なオスであるからな。
『あら、ココア、どうしたの?怖い夢でもみた?』
いいや、怖い夢など見てはいない。我が輩には怖いものなど無いからな。当然であろう。我が輩は強く立派なのだ。ただ、少し我が輩よりもずっと大きな犬に食われてしまう夢を見てしてしまっただけである。そう怖がってなどいないのだ。『ふふ、大丈夫だよ、お母さんがいるからね。本当にココアは可愛いわねぇ』
そう言いながら、母は破顔して我が輩の体を撫でてきた。失敬な。我が輩は強いオスであるぞ。まぁ、我が輩の背後からブンブンと音がしている気がするが。気のせいだろう。決して、母に撫でられているのが嬉しいなどと、爪の先程も思ってはいない。そう、思っていないのだ。
我が輩には、人と同じ言葉を話すことなどできない。どれだけ我が輩の思いを伝えようとしても、我が家族には伝わらなかった。まぁ、ある程度は意思疎通ができるから、普段は全く問題ないが。ただ、母と父と姉と弟が当たり前のように会話しているのを見ると、我が輩も人と同じ言葉を話せたら良いのにと思うことも無くはない。まぁ、仕方ないことなので、諦めてはいるが。何事も諦めが肝心だと、テレビとかいう箱の中で誰かが言っていた気がする。
でなきゃ、やってられない時もあるからな。
何日か前、姉も就職活動?という物を始めてから、それはもう一気に5歳ほど老け込んだのでは?と思うほど、溜め息も増え、疲れ切った顔をしていた。
そういう時は、我が輩は姉に顔を擦り付け、
くっついてまるまるのだ。
母も父も姉も弟も皆、我が輩が守るべき家族なのだ。だが、我が輩は人ではないから、できる事は限られる。昔、弟が小学校とやらで友だちと喧嘩して、泣きながら帰ってきたことがあった。」少しでも良いから笑ってほしくて、『大丈夫だ、我が輩がそばにいるから』と伝えたくて、「くぅんくぅん」と何度も声を出したが、悲しいかな。頭を撫でてはくれるが、伝わらず、悲しそうに微笑むだけだった。だから、家族が苦しみや悲しみを堪えるような顔をする時は、必ずそばに行く事いる。そうすれば、少しだけ、ほっとしたように、笑みを浮かべてくれるから。我が輩は、家族が笑みを浮かべてくれるのが1番好きだ。我が輩も幸せな気持ちになれるから。
我が輩がこの巣に来てから、
7年の月日がたっていた。
ある日姉が、久しぶりに我らの家に帰って来た音がしたので、ブンブンと尻尾を振りながら、廊下に出て、姉の元に駆け出した。だが、隣には知らない人間がいた。我が輩は思わず、近くにいた母の元に突撃した。姉は結婚するのだそうだ。何と家を出て、これから2人で暮らすのだという。
我が弟も何週間か前に家を出たきり帰ってこない。いつのまにか、
それからは、母と父と3人での暮らしが続いた。
父は昔よりは、家にいる事が多く、嬉しい筈なのに、何故だか寂しい。やはり姉や弟がいないからだろうか。たまに、姉や弟が小さい人間たちを連れて戻ってきてくれることがある。我が輩はその小さな家族も大好きなので、来てくれた時は嬉しくて、ゆっくりと起き上がり、尻尾を振りながらのそのそと彼らの元に歩いていく。
だが、彼らが行ってしまうと途端に静かになる。
その静寂が物悲しくて、我が輩は、少しずつ動きが鈍くなってきた母と父の間に挟まってまるまって眠るのだ。
姉や弟が別の巣で生活するようになってから3年が経っていた。
吾輩は犬である。だが、我が輩の家族は人間だ。
我が輩は寂しいのは嫌いだ。
だから、我が輩は許されるまで、父と母の側にいよう。一緒に過ごす家族が減っても、
全ての家族が幸せであるよう祈り、
できる限り側にいよう。
今日も家族と共に生きていく。
我が輩が眠りにつくその時まで。
お読みいただきありがとうございました。
なんて書いていいのか困ったので、
とりあえず最近の願望を。
あー、猫になって、なんも考えんとゴロゴロしてぇ。
犬は可愛いがる分には可愛いけど、犬になると大変そうですよね。主に飼い主に媚び売ることとか?
知らんけど。




