第8話 「忍者の街のメロディー」
『伊瀬ちゃんをアイセ!』
第8話 「忍者の街のメロディー」
三重県アイドルフェスティバル、Aブロック4回戦――実質的なブロック決勝。会場は伊賀市内のホール。青い山々に囲まれ、忍者の里を思わせる神秘的な雰囲気だ。おかげ☆ガールズの対戦相手は伊賀市の四十九高校「忍者☆メロディー」。忍者と青梅をモチーフにした、トリッキーなパフォーマンスが売りの7人組。黒と青の衣装に、手裏剣型の小道具が光る。控え室で、舞理は相手の動画を見て興奮を抑えきれない。「忍者ダンス! 手裏剣投げてるみたいにキレッキレ……でも可愛い!」双実は眉を寄せる。「トリックが多いわ。タイミングが命ね。一瞬の隙で勝負が決まる」深園は餅菓子を食べながら穏やかに言う。「ふわっとね……伊賀の青い山みたいに、澄んだ歌声が聞こえてきそう」ステージ袖で相手リーダーの服部と出会う。蔵持はクールビューティーで、静かに微笑む。「伊勢の巫女さんたち。Aブロック決勝まで来るとは思わなかった。忍者の里のメロディー、味わってね」舞理は元気に返す。「忍者☆メロディーの動画、めっちゃカッコよかったよ! 伊賀の音楽も大好き!」バトル開始。先攻は「忍者☆メロディー」。ステージが暗転し、煙が立ち込める。突然7人が現れ、手裏剣を模した小道具を投げながら高速ダンス。「青い山の影 忍び寄る~ 伊賀の風 メロディーを運ぶ~」変幻自在のフォーメーション、隠れ身の術のような消え登場え。観客はどよめき、拍手が鳴り止まない。おかげ☆ガールズの3人はステージ袖で息を飲む。「速すぎ……目で追えない……」舞理が呟くと、双実が静かに言う。「私たちは正統派でいく。祈りと絆で勝負よ」おかげ☆ガールズのターン。和太鼓の荘厳な一打から始まる。新曲「三重の絆」。舞理がセンターで巫女の袖を優しく広げ、歌い上げる。「伊勢の神宮から 名張の山へ~ 三重の大地 みんな繋がってる~」双実のダンスは忍者の速さに対抗するように、流麗で正確。深園の高音が青い山の空気を思わせる澄んだ響きで会場を満たす。人数は少ないが、3人の一体感が圧倒的。観客が静かに聴き入り、手拍子が自然に生まれる。2巡目。「忍者☆メロディー」はさらにトリッキーに。煙と照明でメンバーが次々消え、残像のように再登場。手裏剣ダンスで観客を魅了。しかし、おかげ☆ガールズは揺るがない。ラストは「夫婦岩の約束」+「神宮の祈り」のメドレー。双実のラップが伊賀に向かって響く。「忍びの影も 巫女の光も 三重の宝 みんなで守ろう 青い山と海 神様が見てる!」深園の高音がホール全体を包み、舞理の和太鼓が力強く締めくくる。フィナーレは3人で深くお辞儀。会場は一瞬の静寂の後、スタンディングオベーション。投票結果――おかげ☆ガールズ、僅差で勝利! Aブロック優勝決定!ステージ上で両チームが並ぶ。服部が悔しそうに、でも清々しく笑う。「負けた……でも、あなたたちの歌、忍者の里まで届いたよ。純粋で、強かった」舞理が涙目で手を握る。「忍者☆メロディーのトリック、めっちゃワクワクした! 伊賀のお菓子、絶対食べに行くね!」深園が餅菓子を差し出し、蔵持たちも伊賀のお菓子をお返し。「ふわっとね……これからも三重を一緒に輝かせよう」ライブ後、会場は感動の渦。SNSは「Aブロック決勝、神回すぎる」「巫女vs忍者、最高のバトル!」と大反響。控え室で3人は抱き合って泣き笑い。「Aブロック優勝……! 決勝戦だよ! 四日市の諏訪町高校と……!」双実が珍しく声を震わせる。「ここまで来たら、絶対に三重の頂点を取るわ」深園が優しく微笑む。「みんなと戦えて、幸せだった。決勝も、ふわっとね」その夜、伊賀の山を見上げながらバスで帰る3人。「ライバルがどんどん強くなってく。でも、それが三重の魅力だよね」「うん! みんなで故郷を輝かせてるんだもん!」Aブロックを制したおかげ☆ガールズ。決勝戦への切符を手に入れ、少女たちの夢は最高潮に達しようとしていた。
(第8話 終わり)




