第11話 「夏の夫婦岩と私たちの約束」
『伊瀬ちゃんをアイセ!』
第11話 「夏の夫婦岩と私たちの約束」
フェスティバルから1ヶ月後。夏休み真っ盛り、三重県伊勢市は観光客で賑わっていた。岩渕高校の屋上。伊瀬舞理、茶屋双実、長屋深園の3人は、いつものように集まっていた。決勝で惜敗した傷は癒えつつあり、むしろあの合同ステージが新しい絆を生んだ。「ねえ、今日は練習じゃなくて……海行かない?」舞理が突然提案する。双実は日焼け止めを塗りながら頷く。「たまにはいいわね。漁師の娘として、案内してあげる」深園は大きな袋を抱えて笑う。「ふわっとね。お弁当と餅菓子をたくさん作ってきたよ!」二見興玉神社の近く、二見浦のビーチ。夫婦岩が沖合にそびえ、夏の陽光が海面をキラキラと輝かせる。3人は水着に着替え、砂浜にシートを広げた。舞理は巫女風の白い水着に赤いパレオ。双実はクールな黒のビキニ。深園はおっとりしたピンクのワンピースタイプ。「わー! 海綺麗! 伊勢海老も泳いでそう!」舞理が飛び跳ねる。「バカね、海老は岩場よ」双実は苦笑いしながら、深園と一緒に弁当を並べる。伊勢海老の刺身風サラダに、松阪牛の焼き肉弁当、熊野のさんま寿司、名張の青梅ゼリー……フェスで知り合ったライバル校から送られてきた名産が満載だ。「みんな、送ってきてくれたんだ……」舞理の目が潤む。食事を終え、3人は海へ。波が足元をくすぐる。「決勝で負けた時、悔しかったよね……」舞理がぽつりと言う。双実は波を蹴りながら答える。「悔しかった。でも、あの合同ステージでみんなと歌えた時……優勝より嬉しかったかも」深園が夫婦岩を見つめる。「ふわっとね……あの時、私たちの歌が三重中に響いたよね。観光客も増えてるってニュースで言ってた」突然、砂浜の向こうから声がした。「おーい! おかげ☆ガールズ!」振り返ると、そこには大野木、愛宕、有馬、蔵持、そして坂部たち――フェス出場校のメンバーたちが、水着姿で集まっていた。みんな手には地元の名産や浮き輪。「みんな、どうして!?」坂部が笑顔で言う。「決勝の後、みんなでLINEグループ作ったでしょ? 『夏に集まろう』って話になって」大野木が緑茶のペットボトルを配る。「度会のお茶、冷やして持ってきたよ!」愛宕が松阪牛の串焼きを振る。「お肉パーティー!」海水浴は大賑わいに。ビーチバレーでは双実のチームが圧勝。舞理は和太鼓のリズムでみんなを盛り上げ、深園の歌声が自然のBGMになる。夕方。夫婦岩の前で、みんなが輪になって座った。夏の夕陽が海を赤く染める。坂部が切り出す。「フェス、終わっちゃったけど……またやりたいよね」舞理が目を輝かせる。「うん! 次はもっと大きなステージで、三重全部のアイドルで!」有馬が頷く。「熊野も参加するよ。炎と巫女のコラボ、絶対カッコいい」蔵持がクールに笑う。「忍者も混ぜて、トリッキーに」深園が新しい歌詞のノートを見せる。「実は……みんなの想いを集めて、合同曲の続きを書いてみたの」みんなで歌い始める。「三重の星たち」アコースティックバージョン。ギターは持ってきていないので、手拍子と声だけ。夫婦岩がバックに、夏の風が運ぶハーモニー。「三重の星は みんなで輝く~夏の海でも 冬の山でも故郷を輝かせるのは 私たち!」歌い終わると、自然と拍手。誰かがスマホで録画し、後でSNSにアップされることになる。夜。花火が上がる。伊勢の夏祭りの一環だ。みんなで空を見上げる。舞理が双実と深園の手を握る。「私たち、アイドル続けてよかったね」双実は照れくさそうに。「まぁ……本気だったからね」深園が微笑む。「ふわっとね……これからも、ずっと一緒に」花火が夫婦岩を照らす。少女たちの青春は、フェスティバルが終わっても続いていく。この夏の思い出は、きっと新しい歌になるだろう。
(第11話 終わり)




