日々に少しのスパイスを
結婚して数年が過ぎると、毎日が同じ形をして流れていくように感じることがある。
朝の光も、夜の会話も、ほんの少しずつ違うはずなのに、気づけば全部が一つの「日常」という箱にまとめられてしまう。
ふとした瞬間、彼女がその箱に飽きてしまったのかもしれないと考える。
それで他の男の影が見えるようになったのだとしたら、まったく理解できないわけじゃない。
一途でいることは、思っていたよりずっと難しい。
一途であり続けるというのは、毎日同じ風景を歩き続けることに近い。
最初はどこを見ても新鮮で、少しの色の違いに心が動いたのに、慣れてしまえば景色はただの背景になる。
同じ道を何度も往復しているうちに、最初の感動はどうしたって薄れていく。
人間はそういうふうにできている。
だからこそ、結婚という長い旅では、季節が変わるような出来事が必要になる。
春の風みたいな優しい言葉とか、秋の光みたいに温かい思い出とか、そういう小さな変化。
一瞬だけ景色が違って見えるだけで、人はもう一度その道を歩きたいと思える。
彼女が飽きてしまったのなら、今のままじゃきっと続かない。
けれど、歩く道そのものを変える必要はない。
少し寄り道をしたり、新しい靴を買ったり、同じ道でも違う歩幅で進んでみたりするだけで、風景は不思議と新しくなる。
夫婦って多分その繰り返しなんだと思う。
同じ日々をただ歩くんじゃなくて、同じ日々を「もう一度好きになってもらえるように」整えていくこと。
それができるなら、飽きることも、離れることも、きっと防げる。
彼女の心がどこに向いているのかは分からない。
でも、もしまだ少しでも俺の方へ歩き出してくれる可能性があるなら、季節の変わり目みたいな小さな変化を、これからもっと大事にしていくべきなのかもしれない。




