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エルフの家

 俺は彼女が乗る荷馬車の、荷台部分に膝を抱えて座っている。サスペンションもないので、地面の凹凸の衝撃が直にケツに来る。荷台にはいくつかの少量の藁束と、よくわからない野菜のような作物、布に包まれたそんなにでかくもない、なにかよくわかない物やらが積んであった。

 馬車に揺られている間、彼女からいろいろな事を質問された。しかし俺は、『記憶を失っている』という設定で、すべての質問を躱した。正直に答えたりして、なんだかよくわからない、こちら側の世界の禁忌(タブー)に触れてしまったりするのが、怖かったからだ。名前だけは覚えている振りをして、ちゃんと本名を答えた。彼女も名前を教えてくれたが、『アーリエ』というらしい。

 ついでに書いておくと今の俺の格好は、上はアニメキャラが描かれた、紺地のヨレヨレのTシャツ。下は青いデニムの長ズボン。足元には有名なメーカーの白いスニーカーを穿いてる。この格好でも、そんな寒くもなく熱くもない、丁度いいぐらいの気候だった(俺がデブだというのもあるかもしれないが)。スマホと財布も死ぬ前には持っていたはずだが、どこかに消えてしまっている。

 

 そうこうしている合間に、彼女に家に着いた。あれからも道はほぼまっすくで、30分程掛かっていた。

 森の中の少しだけ開けた場所に、こじんまりとした木造の建物が立っている。正面から見て右側には掘っ立て小屋があり、どうやら中には家畜がいるようだ。その掘っ立て小屋の側には、粗末な柵で区切られた、小さな家庭菜園のような物もある。不思議なのは、この住居以外の住居らしい建物が近くに見えないことなのだが、今はそんな事を気にしても仕方ない。

 アーリエは、荷馬車を掘っ立て小屋の側に停めた後、馬を家畜小屋の中に入れ、俺を家の中へ招待してくれた。

 家の中の広さは、十畳程しかない。隅や棚には食器やら、なんの道具かわからない物やらが、雑然と置かれてある。奥には煮炊きや暖房の為の炉、左手には屋根裏行く為の梯子が、天井の開口部に掛かっている。アニメ『アルプスの少女ハイジ』に出てくる、ハイジとお爺さんの家の様だと思った。

「あまりキレイな所とは言えませんが、とりあえずくつろいでください」

 彼女は家の中央にある、長方形のテーブルの側にある、背もたれもない四角い台のような椅子を勧めてくれた。

 その椅子に腰かけると、

「喉は乾いてませんか?」

 と、尋ねてくれた。

「ひゃい」と奇声のような返事をする。彼女は棚に置いてあった木のコップを持ち、外に出てからまた帰ってきて、テーブルの上に置いた。

 コップの中身は、どうやらただの水だ。

 俺はそれをまず一口だけ飲む。味もただの水だ。それから半分程飲み、テーブルにコップを置いた。   

 なんとかこちらに来てから、一息吐いた訳なんだが、これからどうなるのだろうか?

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