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二度目の目覚め

「チュンチュン、チュンチュン」

 という、小鳥が(さえ)ずるような音が聞こえてくる……。

 どうやら俺はどこやらかで、また横たわっているらしい。目を開くと木の枝の切れ間に、青空が広がっていた。上半身を起こし、またもや辺りを見渡す。周りには木々が、たくさん植わっていた。下に所々に草が生えている、土の地面がある。

 そこで胡座をかいて、さっきの出来事について考えてみた。あれは本当にあった出来事だったのだろうか?いきなりこんな所に放置されているということは、本当にあの世で神とやらに出会い、異世界に飛ばされたという事なのだろうか。いまいち現実味が湧かないが、とりあえず辺りを探索してみて、状況を確認してみよう。

 と思ったが、数十歩手前に歩くだけで、木々の合間に道を見つけた。幅5メートルぐらいの土の道が、まっすぐに左右へと続いている。

 この道を、どちらかの方向に進んでいってみるべきだと思うが、どちらへ行けばいいのかわからない。そのまま思案していると、左の道の先の方から、なにかがゆっくりと近づいてくるのが観えた。反射的に木々の中へと隠れる。

 ゆっくりと近づいてくる何かは、どうやら荷馬車のようだった。一頭立てで幌はなく、馬の後ろには馬を手綱で操っている、御者台に乗った何者かがいる。

 そう言えば、俺は視力が悪く眼鏡をかけていたはずなのだが、眼鏡をなくなってしまっている。それなのに近付いてくる何かが、普通にハッキリと見えている。これは神様の配慮かなにかだろうか?

 近付いてくるにつれ、その何者かの正体がわかってきた。それは女性の様だった。しかし、俺の目を一番に惹いたのは、その『耳』だった。その人の耳は、横に長く伸びているように見えたのだ。

 「(エルフだ!本当に異世界に転移してるんだ!)」

 そう思った瞬間、俺は驚嘆と歓喜の感情に包まれた。十数メートル先に、本物のエルフかもしれない存在がいる(本当に俺が思っている、エルフという種族なのかはわからないが)。

 木の陰から目を凝らし、その女性を射殺すかのように見詰める。その女性は金髪で肌が白め。鼻は高く、西洋人のような感じの見た目だ(耳を除けばだが)。座っている為、背丈の程はわかりにくいが、俺よりは身長は低いと思われる(俺の身長は175cm)。

 濃緑色の長袖の服を着ていて、下は座れば脛まで見える丈のスカート。足元には革のブーツを穿いている。

 顔付きは、とても整っているように見えた。


 荷馬車が近付いてくるにつれ、俺はどうしようかと焦っていた。

 いきなり異世界の人間(?)に声をかけるのは、危険なのでやり過ごすべきか。ここで出会ったのも神のお恵みと、思い切って声を掛けるべきか。

 数瞬だけ思考した後、俺は彼女が俺がいる地点の前の道に差しかかかる直前、木々の間からガサゴソと音を立てながら、なるべくスマートに見える様、歩み出た。

 荷馬車が動きを止める。声こそあげなかったが、馬も彼女も驚いているようだ。

 しばらく向かいあった後、俺は話し出した(緊張するのでなるべく、エルフの顔は見ないように)。

「……おおおおお驚かせてしまって、すいません。その、僕は怪しい者じゃなくてですね」

 どう観ても怪しい風体なのに、そう言ってしまった。

 彼女はまじろぎもせず、驚いた表情でこちらを見詰めている。

「ぼぼぼ僕はこちらの世界にあまり詳しくなく、ついここで見掛けたあなたに声をかけてしまった所存であり……」

 相手には訳がわからないであろうことを、ますます訴えかけた。元々コミュ力もなく、職歴もない引きこもり、しかも初の異世界人相手に、自分から話しかけているのだから仕方ない。

 だが、自分には勝算がある。神から貰った例の『特殊能力』だ。

 相手は女性だと思われるので、この能力が遺憾なく発揮される事を願っている。

「でででですので、偶然見つけたあなたに声を掛け、なんとかお恵みをと」

 相手の怪訝な表情は、ずっと変わらない。ここまで語ってから気付いた事なのだが、本当に俺の言葉は、彼女に通じているのだろうか?そういえば、言語的の問題については、神様は何も説明してはくれなかった。

「……すいません。なにを言いたいのかよくわかりませんが、野盗などの(たぐい)ではないのですか?」

 女性が語りかけてきた。

『やった!彼女の言葉がわかる!そこら辺の設定は、ちゃんとしといてくれていたのか神様!』と、歓喜の感情が、またしても湧き起こる。俺はブンブンと首を縦に振った。

「なにかお困りの様でしたら、ここからワタシが来た方向に15スタルクほぼ行けば、村がありますよ」

 ……15スタルクがなんなのかはよくわからないが、たぶんこちらの単位なんだろう。彼女はその村から来たらしい。その村とはどんな村なんだろうか?彼女のように耳が長い、エルフの村なんだろうか?行くのはしょうがないとしても、一人で行くのはやっぱり怖い。できればここで会った彼女の力に縋りたい。

「ぼぼぼ僕はこちらの事情に疎く、できればあなたと一緒に行ってもらえたらなんて……」

 けっこう無理目な事を勢いで言ってみた。異世界に来た興奮からか多少、大胆になっている。

 彼女は少し考えた後、こう答えた。

「……わかりました。何者かわからない人を村に連れていってもあれですし、一旦ワタシのうちへご招待しましょう」

 おっ?なんか彼女の家に招待される流れになったぞ?これはかなりラッキーなやつか?

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