目覚め
目を覚ますと、不思議な空間にいた──
上半身を起こし、ここはどこだろうと、辺りを見回す。
ただ薄い暗闇が広がるだけで、端も見えないような空間だ。
現実感もなく、これは夢なんじゃないかと思いボンヤリしていると、いきなり正面に眩い光が現れた。不思議と目も眩まなかったので、その光を眺めていると、すぐに薄まりだした。
そこからは頂点がハゲた、長身の爺さんが現れた。濃い口髭と長い顎髭を蓄え、裾や袖がフワッとした白いローブのようなものを纏い、右手には頭にでかい瘤のついた、なんの木だがわからないような杖を持ち、地面(?)に突いている。
その爺さんが唐突に語りだした。
「唐突に現れ、いきなり語られても理解できぬかもしれんが、ワシはお前たちがいう所の『神』という存在である。ここはお前達が言う所の『あの世』であり、お前はすでに『死している身』なのじゃ」
……そう言われると、朧気ながらだが思い出してきた。
俺は30歳の男性で、無職の引きこもり。しかも、デブでブサイク。
このままではいけないと思い、焦りが出てきたので意を決し外へ出て、このボサボサヘアーを散髪しに行ったのだった。だがその途中、丁度下校時だった生のJSを街道沿いで見惚れてしまい、そこを居眠り運転していた軽トラックに撥ね飛ばされてしまっていた。そのまま打ち所が悪く、亡くなってしまっていたようなのだ。
「本来、お前は死せる身でなかったのだ。まぁ、天界側の手違いというやつでな(ゲフンゲフン)。だからまぁ、お前を復活させてやる事にしたという訳なんじゃが、どうする?」
いきなり出会った神と名乗るハゲに、いきなりそんな事を聞かれても困る訳なのだが、俺は座り直して胡坐をかき考えてみた。
正直、元の世界に復活した所で、すでに詰んでいるような身なのでそれはつまらない。
死んでしまっている身の大胆さなのか、とりあえず復活する世界を選べないのかと、ハゲに聞いてみた。
「……まぁ、それも出来なくはないが、本当にそれでいいのか?今いた世界よりも、キツい生活になる可能性の方が高いぞ?」
できたら、なるべく穏やかに過ごせる世界に行きたいと懇願する。
「う~ん、お前らみたいな奴等が考えそうな事はだいたいわかるが、世の中に儘ならぬ事が多く、理不尽な出来事がまかり通っていて……」
ハゲによる説教が始まった。理不尽に死なされている身なので、伝えたい事の意味はとてもよくわかるのだが、『お前が言うなよ』とそんな思いはある。そんな思いはとりあえず伏せ、ハゲに真剣に頼み込んでみた。
「要はお前らが好みそうな、『異世界風ヨーロッパ』みたいな所に送り込めばいいんじゃろ?本当にお前らときたら……」
わかっているならサッサとしろよハゲと思いながら、『ソレソレ』みたいな顔をして、何度も頷いた。
「仕方ないから送ってやろうとは思うが、ひとつだけプレゼントをやろう。お前らが好きそうな『特殊能力』というやつじゃ」
キターーーッ!異世界に転移するなら、『特殊能力』は必須だろう。『特殊能力』のひとつもなく異世界に送られた所で、どうしようがなくて困ってしまう。
俺は餌を待つ、犬みたいな期待の表情を浮かべた。
「それでどんな能力にしたいと思う?肉体強化系か超能力のような異能か……」
神様には申し訳ないが、しばらく「ウンウン」と唸りながら考えに耽ってみる。果たして、どんな能力がいいのだろうか?肉体強化系は『俺ツエー!』でき、わかりやすくていいとは思うが、当たり前過ぎる様な気もする。超能力のような異能と簡単には言っても、想像に幅があり過ぎて選択するのが大変だ。
長い事考えた末、結論を出した。
「……『女の子にモテモテになる能力』とかでもいいですか?」
神は一瞬、なんとも言えないような微妙な表情をしたが、すぐにそれを消し答える。
「よし!それでいいと言うのじゃな!ではさっそく、お前にその『特殊能力』を与え、別世界へと送ってやろう!」
ハゲが右手に持ってた、杖の天辺を上へと翳す。すると、俺の身体が薄ボンヤリと光を放ちだした。俺の意識も少しずつ薄まりだす。
そして俺は完全に意識を失くした──




