ep8 ホワイトホール
パチン、部屋全体に音が響く。
「ラズ、この棒がどうしたんだ?」
「…向きの問題か、」
ラズさんはもう一度向きを変え手渡す。
―何も起こらない。
「ラズさん、これは何の実験なの?僕も分かんないよ。」
「そうだな、この棒は紙に書かれた儀式に関係しているのが本当だとしたら、
これで人と人を繋げば重なり合った事になるんじゃないかと思ったんだ。」
ラズさんは思い付いた事をそれからスティックについて教えてくれた。
「なるほどね、ラズさんがしたい事がやっとわかってきたわ。」
パイラさんは目を輝かせ、手を打って呟いた。
「すまない、俺は頭を使う話は点でだめなんだ。」
対してルビさんは肩をすくめる。
わかるよ、僕もだめだ。
「よくわかんないけど、ラズさんは そのスティックで人と人を繋げば何かが起こると考えたんだね。その方法を試していると。」
「そういう事だな、ただし、誰でも言い訳ではないらしい。」
そう言いつつ、ラズさんとパイラさんはスティックを握って渡しあったが、何も起こらなかった。
「そういう事なら、俺で試してくれないか、」
「コランダムさん、これは最初に試す方がリスクが高いのよ。命に関わるかもしれないけれど、それでもやるの?」
パイラさんは、ルビさんに少し厳しいと感じたが、それだけ思いやりがあるのかな。
「ああ、覚悟はできている。俺はここに来てから何も出来ずにいたからな。」
ルビさんの意思は固いらしい。パイラさんに忠告されても顔色一つ変えてない。
さすが戦士と名乗るだけの事はある。
「そこまで言うなら止める事ではないだろう。パイラ君ここはルビに任せてみよう。」
ラズさんはそう言ってパイラさんを制した。
僕は少し以外だった。ラズさんは指導権を必ず手放しはしないと思っていたが、何か通づるものがあったのかな。
「経優、君にも協力して貰いたい。」
突然声をかけられビックリした。
「僕?うんいいけど、」
「君だけまだ試してないだろう。このステッキは君の部屋から出てきたものだ。
君がその選ばれし者である可能性が高い。」
僕も薄々は気づいていたんだろう。言われて腑に落ちる自分がいる。
これもいい機会かもしれない。
もし僕が選ばれし者だと判明しても この人達なら僕が黒幕ではなくて利用された側だと察してくれそうだし。
「このステッキを握ってればいいんだよね。」
僕は白の部分を握る。何となくだが、黒は喪服とか死のイメージが強くて、白は対極のめでたい時に着たりするし。
結婚式とか…あくまで例え話だ。僕の恋愛対象は女性だ。(よく墓穴を掘ってからかわれた黒歴史を思い出してしまった)
そんなくだらない事を考えていると、なぜかパイラさんに笑われてしまった。顔に出てたのだろうか。
「ルビ、今度は君が反対側を握ってみてくれ。」
「ああ、やってみよう。」
僕は手に汗をかいているのに気がついた。
何かある。このステッキに既視感を覚えた。
ルビさんの手がステッキに触れると目の前に黒い穴が出現する。違う、この目で確かにルビさんが消えて代わりに黒い穴が現れて見えた。
僕は光の粒子となり、散り散りに分裂するような奇妙な感覚に襲われ、気づけば真っ暗な空間にいた。
♢
僕は気づけば光の届かない暗い空間にいた。けど、自ら光を発していた。
まるで星になったような気がした。
時間が止まったかのようも、初めから時間なんてなかったかのよにも感じる。
"ブラックホール"
そんな単語が頭をよぎったきた。
確か、ブラックホールに吸い込まれると時間が止まって感じるぐらいゆっくり進んでいるとか、
もっと調べておくんだった。どんどん奥底へと落ちていき寒くなっていく―
僕は、生きていたかったんだな。終わってから気づくなんて…
あれはなんだ
急にどこからか光の玉がやってきて体を暖かく包み込み、どんどん加速していった。
僕の体は散り散りに砕けたが、光の玉はカケラを纏めて留めてくれている。
体が燃えるように熱い。暗闇が晴れ、流れ星となって地球に降り注いだ。
途端に暗闇の世界から新たな光の世界へと飛んでいった。
いつもご愛読くださりありがとうございます。石乃岩緒止です。
今回で神隠し編が無事終わりを迎えられました。読んでくださる読者のみなさんには感謝しきれません。
楽しみにしてくださる読者さんがいるから、一章を終える事が出来たんだと思います。(ただ書くのとではモチベーションが違う)
次回からの新編をお楽しみに、頑張ります。ばいばい




