ep5 不思議な部屋とトモ達
最初の赤い鳥居をくぐると体がムズムズした、僕はくすぐったくて猫や犬みたく身震いしてしまった。
「あれ、体が軽い気がする。」
さっきまでは病み上がりで疲れ果ててた体が羽が生えたように軽くなっていた。
体が健康体に戻ったら、こんなに楽なんだ。今なら何でもできそうだ。
試しに振り返ろうとしたが、やっぱり目に見えない壁に阻まれてしまう。
「やっぱり、前にしかいけないのか」
鳥居と鳥居の間は1.5メートル程の間隔で並べられている。
一気に駆け抜けてもいいんだろうけど、何となく心の準備が欲しかった。一個ずつ潜ろう。
次は黄色の鳥居、潜ってみると甘い香りがしたかと思うと心が軽くなった。
自分でもびっくりするぐらい、今までの嫌な出来事が小さく感じた。
ここまで来たらこれから起こる事を楽しむぐらいじゃないと、楽しくないや。
残る鳥居は青の鳥居、今までの感じだと、いい効果がかかるだと思う。
だが、心の中でネガティブな僕がこんなに自分が良い目にあっても良いのか、
誰かが僕を騙そうとしていて 悪い事がいっせいに降りかかってくるんじゃないかと、つぶやいてきて疑心暗鬼になった。
こんなうまい話があるのか、と。
選択が一つしかなければ手の打ちようがない。
いま一度覚悟を入れ直し 最後の鳥居をくぐり抜けた。
一気に頭が覚めた。
それだけじゃなくて今まで苦しめられてきた頭痛、耳鳴りが消えた。
頭の中がクリアになってる。
抱えていた悩み(症状)が消えてスッキリした。
こんなに頭が冴えてるのっていつぶりだろうか、これならやりたい事がやれるかもしれない。
こうなったらもっと素直に楽しんだ方がいい。
こんな不思議な体験が誰にでもできる事じゃないんだから。
「よし、残るは扉だけだ。」
僕はドアノブを回すと思いっきり押した。
ん、開かない、、、
「外開きか、」
ちょっと顔が熱くなるくらい恥ずかしくなったが、お陰で冷静になれた。
今置かれている状況を客観的に見て事の重大さに気づく。
もしこの扉の先に死を招くような事が待ち受けているかと思うと肝を冷やした。
開けた瞬間にブラックホールに吸い込まれるとか…
ともかく深夜テンションのような変に浮かれたノリで下手を打ったら目も当てられないしな。
僕は慎重に、何が起きても良いように身備えながらドアノブを開けた。
何もない…扉の中、と言うべきか。そこには光すら飲み込む闇があるだけだ。
少し怖くなって後退りした。ん?そういえば、体を自由に動かせるぞ、振り返ってみると何もない。
鳥居が消えた?
まぁ、今更驚いてもな。前に進むだけだ。
もう一度扉と向かい合うと目をつぶって通り抜けた。
♢
気づくと爽やかな空間にいた。一瞬のうちに見知らぬ場所に飛ばされたのか。
唐突にこの場所が出現したようにも思える。
「ここどこ?」
理解が追いつかず放心状態になった。
混乱してる中、唐突に誰かに声をかけられた
「あなたで4人目かしら、ぼーっとしてるわね。大丈夫?」
「彼は突然現れた様に見える。やはり扉が開いてここに飛ばされたようだ」
「…何故かはわからないが、今は互いに協力すべきだ。自己紹介をしたい。」
びっくりした。先客がいたのか。
「あの、ここは何処ですか。」
そう言いつつ、部屋の中央にある彼らが囲って会話してるテーブルへ歩み寄る。
当たりを見回してみると、自分の家に凄く似ている。ログハウスのリビングは小さい。
というよりどちらかと言うと小屋のサイズだ。
「突然ここへ来て何が起きたのか我々も分からない。君が知っている情報があれば欲しい、教えてくれないか。」
青い髪に藍色の目、瞳は満月の様に丸く黄色い。
パッチリとした目の下には深いクマが付いていた。
目を見開いているのに視線が鋭く見えるから猛禽類の目を連想させた。
端正な顔立ちからは知性が滲み出ていて、
美に疎い僕から見ても クールで異性からモテそうだなと分かるくらいイケメンだ。
寒い土地から来たのか、フード付きの黒いコートを纏い、青のマフラーを巻いて、耳にはポンポンの白いイヤーマフをつけている。
年は近いのかな、若く見えるけど…経験豊富な御曹司というか、大人だ。
「僕も全くわからないよ、水晶玉から煙が出てきて気づいたら真っ白な空間にいるし、」
「水晶玉?煙に包まれたってどういうことなのかしら、私たちはそこまで詳しい経緯は思い出せないのよ。」
この子は最初に声を掛けてくれた子だ。
いけない、ぼーっとしてて返事してなかった。
「僕もよくわかってないんだよね、さっきは気遣ってくれてありがとう。」
少し驚いたのか眉が上がった
「気にしなくていいわ、あなただってきっと記憶が曖昧だったでしょうから、」
彼女はそう言って手を出して気にしないでとジェスチャーをする。
16歳ぐらいだろうか、彼女もびっくりするほど美人だ。外国から来たのかな。
金髪でいいんだろうか。
金と銀の中間色、自然な金髪を後ろで束ねてる。これが金髪ポニーテールってやつなのか。
子供とは思えないほど大人びている彼女には、すでに気品の良さが出ている。
ひまわりを思わせる黄色い瞳は人を惹きつける力強さがやどっている。
それに声が不思議と頭に残る優しい いい声してると同時に張りがあって自信に満ち溢れていた。
フリフリのドレスには金に似た金属が散りばめられている。
凄い似合うな、着こなしてる姿はお姫様と言われても納得してしまうだろう。
「…俺たちは気づいたらこの部屋にいた。お前は記憶があるんだな。」
「あ、うん。さっきは動揺してたけど記憶はしっかりあるよ。
なぜここに飛ばされる事になったのかは全く分かってないけどね」
ピンクの髪をした長身の青年にゆっくりとした落ち着きのある声で尋ねられて、少し背筋を伸ばしていった。
まず目を引くのは顔の半分が火傷の跡みたいに白くなっている。
最初は特殊メイクかと思ったけど傷跡なんだろうな。
僕と同い年ぐらいなのに、すでに歴戦の戦士の様な気迫を感じる。
服装も動物の毛皮で作られていて民族衣装みたいで、西部劇に出てくるインディアンのようだった。
本当に何処かの先住民族なのかもしれない。
傷跡がない地肌の部分は赤褐色で、大柄で屈強な体躯を持っているが、
それを帳消しにするぐらい優しい人物なのだろう。
威張ってもいないし、自尊心も相手を思いやる心も持ち合わせているんだなと伝わってくる。頼れる兄貴肌だ。
うーんそれにしても、
みんな日本人でない事は明らかなのに日本語がペラペラだった。
♢
「彼の話からわかったことがある。これは未知の自然現象ではなく、人為的に何者かが起こした事件だ。」
少し沈黙が続いて、青髪の青年が話を本題に戻した。
「そうね、自然現象にしてはでき過ぎているわ。ここは戦士の彼が言ってくれた様に協力するべきね。
お互い名前も知らない状態で協力もしようがないから、自己紹介といきましょうか」
ピンクの髪の戦士は深く頷いた。
「俺から名乗ろう。ルビ • コランダム。コランダム族の戦士だ。」
やっぱり、部族の人だったんだ。ルビさんが自ら進んで自己紹介をしてくれたお陰で緊張した空気が緩んだ。
「次は私の番 私はパイライト。フルネームはパイライト•フィン•ゴールドよ。パイラでいいわ。よろしくね」
自己紹介を聞いてルビさんが驚いていた。
僕も驚いた、こういう人がコミニケーション能力が高い人なんだろうな。ぐいぐい詰める感じ。 奥手の僕には真似しにくい。
パイラさんは性格でもモテそうだな。
「次は私か、すまない。私は訳あって名前は明かせない。ただのラズライトだ。親しい者からはラズと呼ばれている。」
ラズさん、短いからこっちで呼ばせて貰おう。何か訳があるみたいだけど何だろう。わかんない。
ふと僕に視線が集まっているのに気づいてハッとした。
「あ、僕の番か、僕の名前は無神 経優といいます。無神でも経優でも呼びやすい方で呼んでください。」
「これで全員自己紹介は終わったか、では次はどうしていくか本題に入ろう。」
みんな自己紹介、というよりは名乗りを終えてまた短い沈黙のあと、ラズさんが指揮ってくれた。
「我々が次にすべきは問題の把握と対策だ。まずは無神にここに至るまでの経緯を―」
とたんに新たな扉が現れて開かれた。その瞬間新たなメンバーが現れた。
何もない所から人が現れて度肝を抜かれたが、その人物の顔を見て心臓が止まるかと思うほど驚愕した。
諭?
見慣れたその顔を見て声をかけようとしたが思い留まった。
本当に諭なのか、何か変な違和感を覚える。
いや、17年も一緒にいて見間違えるはずがない。正真正銘 僕の双子の弟の顔だ。
おはようございます、石乃岩緒止です。
いつもご愛読ありがとうございます。
ついに役者が出揃いましたね。
彼らはこれからどうなって行くのかお楽しみに
よろしければブックマーク、高評価、コメントをしていただけると嬉しいです。ばいばい