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仲が良いほどケンカする

 …朝か。いつのまに


 この世界線に来て4日目の朝。


 外は鎮まり帰っていた。砂嵐が止んでいる。


 

 瞑想が睡眠の代わりになってるんだろうなぁ。



 ( おはよう。瞑想が上手くなったな。よく寝れた。)


 おはよう。よかったね。ずっと寝不足だったんだよね。



 目を開けると 色が鮮明に入り込んでくる。白いような青みがかった世界は美しかった。


 

 ( そうだな。調子が良くなった。お前の心も澄んでいる。お前は本当に強いな。)


 ルビほど強くはないけど、そんなに悩んでもしょうがないなって思って。


 

 僕は伸びをした。集中して気づかなかったが、体中が固くなっている。



 ( 柔軟をしてもいいかもしれんな。解れて体が良くなるからな。)


 そうだね。


 

 軽くストレッチをして、外に出た。


 日の出と一緒に起きているから、誰もいないだろうな。



 そう思って、部屋を出て階段まで歩いていると道場の方で音がした。


 まさか、僕より朝が早い人が…そりゃいるか。



 気になって覗くと知っている顔がいた。


 

 あれは ルビ。朝早いんだね。


 ( そうだな。早寝するからな、早朝に起きて体を動かすようにしている。)


 へぇ。凄いね。


 ( …直ぐに鈍って動けなくなるからな…俺から武道を取り上げたら何も残らない…)


 …そんなことは無いと思うけど。



 僕は ルビにあいさつしに行った。


 「おはよう。稽古?」


 「経優か、やっていくか?」



 ルビはストレッチを念入りにやっていた。サファもそうだが、めちゃくちゃ体が柔らかい。



 「大丈夫だよ。気にしないで。」


 「( やっていかないのか?)」


 …シンクロ率100% 逆に心地よかった。


 

 「うーん。やってこうかな。覚えてる受け身しか取れないよ。」


 「構わん。受け身は "一の受け身"が一番 肝心なんだ」


 

 そう言って受け身を取り始めた。


 目で追えない程 早く体が浮き上がる。


 

 「倒れるのと ほぼ同時だね。」


 「?そうだな。倒されても直ぐに起き上がれば さばけるからな。」


 ?それって…


 ( 体を捌く。相手に対処することだな。戦う、逃げる。いずれにしろ 起き上がっていた方がいい。)


 

 なるほど。



 「もうストレッチは澄んだんだよね。受け身をやってみるよ。」



 受け身をすると めちゃくちゃ遅いことに気づいた。


 何年もやってる人と比べるのは、思い違いも図々しいかもしれないけど。



 「どうすれば、もっと良くなるかな。」


 「向上心があることはいい。そうだな、後転を加えてみるか。」



 …頭をったやつか…


 ( あれも、こつがある。じっくり教えてやれるのは この時間だけだ。教えてもらえ。)



 「…頭を擦っちゃうんだよね。どうしたら、怪我しないかな。」


 「そうか、…」


 

 彼は少し考えた後で、目の前で後転してみせた。


 「やってみろ。」


 「え、ちょっと分からないよ。」


 「そうか、ではもう一度。」


 そう言って、少しペースを落としてみせてくれた。



 そうか、これでも凄い遅くやってくれてるんだな…



 「どうだ?」


 「足を上げているね。それは分かるんだけど…」


 「そうか、寝そべった状態でやろう。」


 もう一度、今度は寝た状態からみせてくれた。


 

 「なるほどなぁ。そうなってるのか。」


 

 地面に受け身を取るのは 覚えたのと同じ動き。


 高く足を上げて そのまま足を回して立ち上がっている



 「とにかく、やってみせてくれ」


 「わかった。」



 タン。


 「イタッ。やっぱりダメか。」


 「真後ろに足を上げているからだ。」



 ルビはそう言うとまたやってみせる。


 「こう、足を回す時にずらす。目線は足先を追う。受け身を取る時に頭を上げるとつから気をつけろ」


 

 頭を上げる。上げる。


 「イテッ。」

  

 「大丈夫か。」


 注意してくれたのに、倒れ込んだ時に頭を打ってしまった…



 「横になって後転するのを覚えてからの方がいいな。」



 僕たちは、みんなが起きるまでの間、特訓した。


 ルビは、つきっきりで教えてくれた。不思議とルビのコーチはとても わかりやすかった。

 


            ♢



 「だいぶ良くなったな。初めてとは思えない。」


 「ありがとうございました。自分でも良くなったのが分かるよ。」



 体を後転させることが身についてからは 直ぐに良くなった。


 後転をすることで、倒れた勢いを殺さずに起き上がれたのだ。



 「…そうだ、お前に伝えなくてはならんことがあった。クオツに言って、当分は武道をやることに決まった。」


 「そういえば、そうだった。」


 コランダム族の全てを知って、その上 全部の適正があると証明しろってやつか…


 「戦士については俺がみる。受け身は かなり筋がいい見込みがあるぞ。」


 「ありがとう、なるべく頑張ってみるよ。」


 本当に 僕にそんな才能があるかも って思わすルビは教えるの上手いんだよなぁ。



 「それと、経優。今日はお前の硬度こうどを計ることになったんだ。朝食の後はかろう。」


 「硬度。…わかった。覚えとくよ。」


 硬度に関しては期待はでいない無いだろう。

 

 

 ( やってみるまでは分かるないものだ。)


 ありがとう、けどこればっかりは どうしようもない。



 仮にあったとして、転んで怪我するのに 強靭な体だと言うのは 裸の王様と同じだろう。


 

 どちらにせよ、今日わかることだもんね。楽しみだ。


 ( そんなに楽しい鑑定かんていにはならんと思うが。ただお前の皮膚に―)


 待った。お楽しみなんだから。



 「今日は ずっと晴れるな。もし、けんの日なら外で計った方がいいかもな。」

 

 ルビは 光が入り込む 通気口をみて言った。


 コロネルの所々で見かけるこの穴は 光と新鮮な空気しか通さない。


 屈折していて外は見えないが明るいのと風の音がないから天気は良さそうだ。


 「見ただけで、今日の天気がわかるんだね。」


 「…見るというより感じとるんだ。」


 「…」


 さっぱり言い切られてもな。


 現実味のない つかめない話は苦手なんだけど…


 ( 肌で感じる。五感の中でも触覚しょっかくだな)


 しょっかく?アリについてる二本の棒かな。


 あれで雨を感じとれるって どっかで聞いたような。



 「経優、俺は朝食にいく。一緒に行くか。」

 

 「あ、うん。行こう。」

 


            ♢



 「どうした?入らないのか。」


 

 僕は ホールの入り口で入るのを躊躇ためらっていた。


 「いや、入るけど。…行きずらいと言うか。」


 「そうか、俺は 今朝はアンドルと朝食をとるか。後で行くから。お前も来るか?」


 「大丈夫、サファも待ってるし 行くにするよ。」


 そうと言ったものの、ルビが戻ってからも その場で立ち尽くしていた。


 なぜかといえば、昨日の今日で、つまり…会いたくない


 広間には いつものように 全員揃っていた。そこにはスピネルもいるのだ。普通に気まずい。


 ( スピネルは とっくに昨晩のことは忘れている。気にすることはない。)


 えー。そうは言っても、まだ ツンツンしてるように見えるけど?


 ( いつも ああだろ。)


 わかったよ。


 

 僕は そろそろとサファの隣りに座った。


 そういえば、サファもこの先が心配だとか言ってたよね


 ( 経優、気にしすぎだ。サファは お前を責めていない。あいつは 揉めごとを嫌うんだ。)


 そうか、そうだったんだ。


 ( それより、あいさつをしてやったほうが喜ぶ。)



 「サファ、おはよう。みんなもおはよう。」


 「おはよう、経優。あなた 朝が早いのね。起こしに行ったのにもういないんだもの。」


 「今朝はルビと稽古してたんだ。」


 

 彼女は、僕の分のサボテンをくれた。機嫌は 変わりがないみたいだ。よかった



 「お前、ルビと稽古って!抜け駆けしたな!」


 「おはよう、スピネル…元気いいね。」


 「こんにゃろう!兄ちゃん、もしかしてケンカ売ってるな!道場に来い。ケリつけてやるぜ。」


 「す、スピネル。ケンカはよくないよ、経優さんは何もしてないよ。」


 

 マラカイトくんがスピネルを 押さえてなだめた。



 あれマラカイトくん。あんなに辛そうにしてたのに平気なのかな。


 「マラカイトくん。平気なの?昨晩は凄く、その… 具合が悪そうだったけど。」


 「え?さ、昨晩?あ、ああ。き、気にしないで下さい。いつものことなので。」


 え、そうなのか。いや、そうなら…


 「僕も変なこと聞いたよ。ごめん、」 


 「そ、そんな。なんで あなたが謝るんですか。」


 

 …やっぱり、向いてないな。人間関係…


 

 「チッ。朝から しみったれて、ウジウジ抜かしやがって 面白くねー。」


 何が気に入らないのか、スピネルは 大声で意地悪く言った。


 「そんなに 言うことないんじゃない?もう少し 楽しく食事しましょうよ。」


 「チッ。わかったぜ。強え奴が決める。"今は" それでいいぜ。」


 「おう、スピネル。おめえは 朝から騒がしいな。」



 スピネル、面倒くさいなと思っていると、二人の戦士が 割って入ってきた。

 

 ルビと隣りにもう一人。


 確か、アンドルだったかな。淡いピンクの髪をしていたと思ったけど、ルビと同じぐらい濃く見える。


 ( アンドルの髪も光の具合で濃くなるからな…アンドルがいればスピネルも少しは落ち着くだろう)


 「チッ。手をどけろや。髪型が崩れるだろうが!」


 「なんだお前。ツンツンして。整えてやったんだよ。」



 アンドルは 会って早々にスピネルの頭を わしゃわしゃと撫でた。



 くせ毛が治ってる。なんか もうこれ、スピネルのお兄さんなんじゃない?


 ( 出身は同じだが。出会ったのは ここ[コランダム]だ。血も繋がってない。)


 

 へー。そうなんだ。


 

 「そういえば、アンドル。硬度って どう思う?」


 「なんだ急に。別に気にしねーよ。そんな小っちゃいこと」

 


 僕は 気になって聞いてみた。


 ルビは 硬度の違いは関係ないというし、サファは 話に上げるのを嫌がってた。

 

 何となく、アンドルは スピネルよりな気がするんだよな。硬度が全てみたいな。


 「例えば、自分より硬度が低い 相手がいてアンドルは警戒する?」 


 アンドルは 「そんなの考えたことねぇや」と頭をかきながら 唸ってからこう言った。


 「硬度が低いからって 油断ならねぇ。ルビみてぇな とんでもねぇ使い手がいるかもしんねぇからな。」



 うーん。外れたか。ルビみたいな使い手… 言われてるねールビさん。


 ( …アンドルは コランダムで一番の攻撃手アタッカーだからな。わきまえているのだ。)



 「てぇか何だ?もしかして スピネルが硬度で鼻を高くしてやがったのか?」


 「うん、そうなんだよね。硬度の話をしてさ。ちょっと気になったんだ。」


 「てめー、まだ そんな事 言ってやがったのか!」


  

 あ。しまった。また、余計な事しちゃった。


 スピネルは きっと硬度が低めなんだ。


 昨晩、サファに強く 言っていたのも 自分が硬度(才能)という どうしようもできない限界に苦しんでたとか。


 きっと、硬度の話はスピネルのコンプレックスなんだ。



 ここは誤っておくべきか…


 ( 経優。謝らなくていい。それは 深く考え過ぎだ。)


 わかった、謝らない。けど、聞きたいことがあるんだ。


 ( …)


 「スピネル、君の硬度を教えてくれない?参考までに聞いておきたいと思って。」


 

 そうすれば、サファの硬度9というのが どれぐらい凄いのかも、 どれだけ差があるとキツいかが分かる!



 「ああ?8だよ。覚えとけ!」


 

 8、… 8? 1しか違わないような…



 「あ、あなたね!8って何よ!あなたも高かったんじゃない!私が あんなに気を使ったのに!」


 彼女は激怒した。


 サファは キレたら怖いんだな。


 「ちゃんとマラカイトに 謝って! じゃないと絶対におかしい!」


 「な、なんでだよ。俺は悪いことしてねぇ。謝んねー」


 サファが 怒っていうと、スピネルは立ち上がってそう言った。


 

 「お前の妹のくみとんでもねぇな。止めるか。」


 「だめだ。本人たちに任せろ。俺たちが介入するのは マラカイトたちに良くない。」

 

 

 ルビとアンドルは そんな事を話している。


 これ、問題になっちゃってるのかな。



 「や、やめてよ。ぼ、僕のために争うのは止めて!」

 

 「な、お前のためだぁ?何言ってるんだお前は。」


 「ふざけないで。あなたが一言 謝るだけでいいのよ。」


 

 カオスだ。もう、僕が入る隙は無さそう…


 ( 経優。お前に頼みたいことがある。)


 …何?


 ( マラカイトにこう伝えてくれ。―――と。)


 何それ?


 ( 頼む。お願いだ。)


 うん、言うけども。


 僕は 小声でマラカイトに言伝ことづてした。



 「マラカイト、お母さんの為にも ここは安心させてやれ。お前ならできる。アレを用意する。」



 「え?なぜ― …分かりました。」


 

 「スピネル。僕は君に負けたことはないよ。硬度が低いから、戦士になれないって言うのは間違っているよ。」


 「ああん?何だ。マアラ。いきなり何言ってる?」


 「君は 僕に勝てないって言ったんだ。君を倒して、僕は戦士になる。」 


 

 一瞬の間、スピネルの顔から表情が抜けた。 さっきまでの薄ら笑いはもう影もない。


 「やるからには、決着が着くまでやる。いいな。」


 「う、うん。それでいい。」


 マラカイト少年は 固まっていた。


 さっきまでの勢いは 完全に無くなってる。


 大丈夫かな。


 大広間の端に、うっすらと一匹のクモが巣を張り出しているのが見えた。


 沢山の目が部屋を写しながら、獲物がかかるのをずっと待っている。息を殺しながら。


こんばんは、石乃岩緒止いしのいわおとです。

いつもご愛読ありがとうございます。

不穏ですね。過去一 怖いです。優しい人は 怒ると怖いですね。

 次回、初めて 人の対戦を書きます。お楽しみに!

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