表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/39

ep7 価値観と世界線

 「そろそろつくね。」


 すでに月が沈み、太陽が背を照らしている。


 「ええ、」


 彼女の声が何故か、ぎこちなく聞こえた。


 遠くにはもう入り口が見える。


 あれ?あそこにいるのはルビかな。


 まだ遠すぎて小さくみえるだけだが、ピンクの髪が見える。


 ( ああ、俺だな。)


 そうだよね、なんだか最近目が良くなった気がするよ。


 僕の目は少し近視だから、遠くのものは見えないはずだが これも体力がすぐ回復するのと似たものなのかも。


 砂漠は足が取られるのも慣れてきたし、だいぶ便利な体だ。


 「ルビがいるのは気まずいわ。経優、側にいてよ。」 


 「そんなに気を揉まなくてもルビは優しいからいいでしょ。」


 彼女はわかっていないと首を振った。


 「凄いやりづらいのよ。私だってもう大人なのに。」


 「うーん。まぁ、愛情ゆえのやつだよ。きっと、」


 「そんなことない。ルビは私を未だに子供扱いするのよ。『族長の俺は構わないから、サファを良くしてやってくれ』って真顔で。」


 ( むむ、サファをなんとかしてやりたかったが、むしろ俺がやりにくくしていたのか)


 「う、うーん。どうしても、他の人に指図じゃないけど、あれこれ言われたくないのは分かる。」

 

 僕の場合は、弟のさとしの気遣いや優しさを正面から受け止められなかったから何とも言えないが…


 

 そうこうする内にコロネルの入り口に着いてしまった。


 「…ただいま。」


 「ああ、サファ、経優、おかえり。お腹減っただろ、昨夜の分を残してある。」


 「兄さん、私の分だけ多くしなくていいから。あと私、もう今年で16になるし、子供扱いはやめて。」


 「あ、ああ。そうだな、気をつける…」


 彼女はルビの足元を見ながらも気持ちを伝えると広間へと行ってしまった。


 「サファはルビのこと、嫌いじゃないよ。むしろ、好きだから面と向かって言ったんじゃないかな。」


 ( …経優。ありがとな。)


 彼は泣かない様に目頭を指で押し、上を向いた。


 本当、いい兄弟だな…


            ♢


 大広間には殆ど人がいなかった。床には昨日の晩餐会の食器がそのまま散らかっている。


 早朝のこの時間にみんな朝ごはんなんて食べないよな。


 サファは既にご飯に手をつけていた…


 僕のはサファの隣りか。なんかお腹減ってないけど、せっかくだし食べてしまおう。


 「朝ごはん、朝ごはん!コランダム族の料理はどんなだー」


 「え?あれ?昨日の晩餐…」


 ここに来て一番のカルチャーショックがそこにあった…


 「サファ、これ食べ物だよね…鳥の餌とかじゃ…」


 「何寝ぼけてるのよ。今日は特に豪華ね、何かめでたいことでもあったのかしら、 モゴモゴ」


 彼女は先程の言葉が嘘の様に美味しそうに口いっぱいにほう張っていた…


 僕はサファの隣りに あぐらをかいて、石の皿に盛られている食材と向き合った。


 箸はなかったので、手でいくしかない。


 うねうねと うごめいているのは虫だった。


 「いやいや、いけるか!こんなのご飯じゃない!」


 「ゴホッ!ゲホ、急に大声出さないでよ。もう、せっかく久しぶりにウィルバクが沢山食べられるのに。」


 ウィル、バク…


 果肉植物をパンの代わりにして、ウィルバクと言われたミミズをはさみ、食べている…


 

 ルビ、君の故郷はミミズを食べるの?食欲が無くなるんだけど、、


 ( さっきお腹は減っていないと言ってただろ。ウィルバクは恵だ。塩辛くサボダによく合う。)


 うーん。けどなぁ、そう言われても…


 「食べてみなさいよ。美味しいわよ。」


 「わかった、そんなに言うなら一回だけ試す。」


 僕はサボダと呼ぼれた野菜と一緒に食べてみた。


 「う、独特…何とも言えない味…」


 不思議な匂いがしてすぐに水で洗い流す。


 確かに塩っぱい、目をつぶって食べればなんとか…


 「サファ、後は君にあげる。」


 「え!いいの?じゃあ遠慮なくもらうわね。」


 彼女は既に食べ終えていたが、僕の分のミミズも美味しいに食べている…価値観の違いだなぁ。


 「はぁ、食べたわー。食べたら眠くなっちゃった、少し寝よ。」


 サファは満足気に自室へと帰ってしまった。


 そういえば、眠気も全くないな。いつも朝になると眠くなるのに、


 ( 大丈夫か、眠くなくても少し横になった方がいいだろ。)


 

 ルビは僕の事を心配に思ってくれた。サファの件からも分かるけど、本当に面倒見がいい。



 大丈夫。全然平気だから。もうちょっとしたら人が来るんだよね?


 ( ああ。そうだな、もう四半時しはんどきしたら朝が早い奴は来るだろう。)


 しはんどき?30分ぐらいかな。一時いっときは2時間だから…


 ( うむ、言葉に違いがあるんだな。30分だ。)


 そっか、かなり明るくなってきたもんね。



 このホールに来て最初は違和感なく過ごしていたが、絶妙な構造で朝日が入っている。


 

 凄いな。反射光で部屋が明るくなってる。普通にガラスがないからかもしれないけど、凄い技術だ。


 

 壁も何もかも白いから、少しの日の光で部屋が明るい。


 

 こういうところは異世界にきた感じなのになぁ。物理法則は ほとんど同じなんだろう。


 ( 経優、さっきお前は別の世界から来たって言っていたな。)


 うん、ここと重なってる別の世界かな。


 ( 俺はここに戻る前に不思議な体験をした。あれがあったから理解はしていないが言っている事が分かるんだ。)


 ( 俺にも何が起こっているかを知っておく必要があるんじゃないか。)



 彼の純粋に理解したい意思が直接心に伝わってくる。


 正直、僕もよく分からない。当てずっぽうもいいところだし、相手に教えれるほどじゃないが―



 やってみるよ、けど、今はみんなが来る前に終わるようにしよう。


 ( 頼む。)


 ルビはパラレルワールドって知ってる?


 ( 知らないな。)


 だよね、



 僕の世界、現代人になら一言で済むんだけど、やっぱり難しい。



 じゃあ、そうだな。僕からしたらこの世界は絶対に来れない場所なんだよ。


 ( 来れない?経優はここにいるだろ。)


 うん、これは変な事なんだ。交わることのない時空間じくうかん、この場合は世界に何故か存在できてしまっているんだ。


 ( 経優、わからなくなったぞ。)


 ごめん、そうだよね。じゃあ、イメージだけ説明するね。


 ルビはもし世界がこうだったらどうなってたんだろうって考えたことはある?


 ( それはあの時こうしてればってことか?)


 うん、あの時こうしてれば、こうなっていたらって奴。


 ( ああ、あるぞ。)


 じゃあ、もし君が生まれてこないとしたら、ご両親が生まれなかったら、君はここにいないよね。


 ( ―ああ、考えたくはないが…)


 うん、もし少し違ってしまえば、全然違う未来になる。人も周りの環境も全然違う世界ができる。


 ( ああ、そうだな…)


 そうやって、感じ取れないだけで色んな世界が実はあるんだ。


 僕は、僕が居るはずのない世界にいるってこと。


 ( 結局、難しいが、ただ事ではない話だな。)


 うん、僕もわかんないから。



 そう、これはもしものお話になっちゃうんだよなぁ。

こんばんは、いつもご愛読ありがとうございます。


すみませんでした。あまりにもパワレルワールドが面白くて、、ハマってしまいました。


次回は主要キャラが出てくる予定なのでどうかご慈悲をください、、、

次回もお楽しみに。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ