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ep4 宴会前半

 とりあえず、荷を下ろそう。


 いつもの癖で鞄を逆さにして中身を空にした。


 どのみち忘れ物を探す時に鞄を空にするので、いつも帰ってからすぐに鞄をひっくり返す習慣が出来た。


 「あ、ケータイ。」


 すっかり忘れていた。一応使えるか確かめてみよ。


 ( 何だその板のようなものは?)


 あ、ルビさん居たんだった。ごめん、一息ついて安心したら忘れてた。


 えーとね、これは遠くの人と話せたり、知らないことを調べたりできるものなんだ。


 ( それにしては薄い。石板とは違うな。)


 ああ、うん。


 そう言いつつ、電源を入れてみた。


 質素な暗い部屋のなかに、文明の明かり(ブルーライト)が光を放つ。


 「一応、電源はついたと。」


 充電は殆ど満タンで減っていない。最後にさとしと話したぐらいだからか。



 「あー、やっぱり。圏外かぁ。内心ではわかってたけど辛い。」



 今を生きる現代人にとってスマホがないことは、ずっと頼ってきた自分の半身はんしんを失うようなものだ。


 


 ( そんなに大事なものなのか。)


 うん、これが無いと生きていけないぐらい…


 ( …無神、この世で一番無いと困るものは何だと思う?)


 え?急にどうしたの?そうだなぁ。



 急にルビに聞かれて戸惑いながら、一応考えてみる。



 体とか?体が無いと生きていけないでしょ。


 ( ああ、そうだな。それもあるが大事なことが抜けている。)


 そうかなぁ。他に無いと思うけど、、、


 ( そうか、俺は天と地がないと生きていけないと思うがな。)


 ―ああ!確かに。地球と宇宙がないとね!


 ( 天があるから明日がくる。地があるから今日を生きれる。俺の師匠の口癖だ。)


 ( 俺たちはその中間にいる。俺たち一つの全体((天と地))で繋がっているんだ。)


 なんかかっこいい言葉だね。



 関係は無いけど、ネットも同じく 一つの集合体(世界)で横に繋がってるもんな。うん、間違ってない。


 そんな事をぼんやり考えているとルビが僕の部屋を尋ねた。


 「ああ、ルビ。もう時間?ちょっと待って。」


 「あ、ああ。何か良いことでもあったのか。口元が緩んでいるぞ。」


 「確かに、今面白い事を考えてたからかな。直ぐ支度するよ。」


 自分が笑っていた事に感心した。というのも ここ最近笑った事はなかったからだ。


 僕は、制服のセーターを脱ごうとしたが、心の中でルビに止められた。


 どうも、晩餐会の会場は外と繋がっているので夜は冷え込むらしい。


 僕らは玄関(といっても扉などないが)からすぐのホールに向かった。


 そこで待っていたのはフロウだった。壁にもたれかかって手を組んでいる。


 「遅いぞ、ルビ。晩餐の支度が済んでしまう。」


 「そう急かすな。経優、改めて紹介しよう。フロウだ。」


 「こんばんは、フロウ。僕は経優 無神。改めましてよろしく。」


 フロウは僕の顔を見るや、なんとも渋い顔をした。


 「ここに来てふざけるなよ。俺はお前の身元を証言する立場だ。それをわかった上で言ってるのか。」


 確か、彼らにはキヨーユと聞こえるらしい。


 どうも僕にはピンと来ないが、どうやら伸ばし棒をつけると偉い神様や精霊の名前になるとか言っていたような…


 「すみません、キヨーユではなく、キョウ•ユウこれで経優です。」


 同じ日に何度も自分の名前を言うのは少し恥ずかしいものだ。転校生とかは大変なんだろうな。面倒くさいし。


 「キョウ•ユウ…どちらにせよ。またも精霊せいれいの名を―」


 フロウは明らかに引いている。なんでなんだろう。


 ( …)


 「経優。音を飛ばすして呼ぶのは精霊使いと精霊だけなんだ。」


 ルビ、なんで教えてくれなかったのさ。


 ( …無神にあった時に何か特別なものを感じたのでな精霊の加護を受けていてもおかしくは無いと思ったんだ。)


 「ルビ、どうなんだ。こいつからは特別な"何か"は感じたか?」


 「ああ、精霊のものかは分からないが確かに感じた。」


 

 フロウはルビの顔を見てそれから僕にこう言った。


 「出来るだけの事はしてやる。言っておくが、これはルビの為にやる事だからな。」


 なかなか、フロウはツンデレなところがあるのか?

何にせよ。ルビのおかげで何とかなったようだ。


 「広間に行く。ついてこい、経優だったか。」


 「うん、そうだよ。今度こそよろしく、フロウ。」


 フロウはフンッとそっぽを向いて奥の広間に行ってしまった。


 なかなか クールなのか、愛嬌があるのか、僕には判断が出来なかった。 



            ♢




  広間にはとんでもなく広いところだった。


 例えるなら、体育館の縦と横を2倍以上引き延ばしたような大きなホールだ。


 床には いたるところに茶色いキャンドルが置かれていた。



 凄い神聖なところだな。まるでハ◯ーポッ◯ーに出てくる食堂兼用の大広間みたいだ。


 だが不思議な事に一本もキャンドルに火を灯していない。これでは目が悪くなっちゃうじゃないか。


 コランダム族の皆さんは5人か6人組で皿を囲っている。

暗くてよく見えないが、どう見ても陶器のお皿ではない。


 なんだろう。


 ( 経優、経優。)


 え?何。


 ( 奥にいる老婆は見えるか、アンドルとフロウが両隣に立っている。)


 淡いピンク髪の男の影が手を大きく振っていた。


 白髪の老婆の後ろを性格が正反対な戦士が控えて居る様子は暗闇の中でも目立ってみえた。


 ( 晩餐は彼女が主催する。緊張するな、お前の歓迎会だ。)


 緊張するなと言われても、人前では緊張するもんでしょ。


 そういいながらトボトボと老婆の方へ歩いていく。


 見たところ日本人の白髪しらがというよりは濁ったような白に近い。どことなくグレーに寄っている白色。


 背は曲がりながらも、年長者の特有な経験が滲み出ている雰囲気をまとっていた。


 「初めまして見知らぬ若者よ。俺の名前はクオツという。よろしくな。」


 「あ、え、初めまして、キョウ•ユウと呼んで経優。苗字は無神です。」


 一瞬主語が俺でビックリしたが、まぁそういう事もあるよね。


 「経優って名前だったのかよ。なら何も問題ねえじゃねえか。」


 「まだ、根っこの方は全然解決出来ていない。クオツ、俺の方でもう一度確認する。」


 アンドルは嬉しそうにそう言うのを、フロウが真顔で止めに入る。


 「よかろう。もうせ。」


 

 「ちぇ、頑固婆め。俺が教えてやったってのによ。フロウもしけた野郎だぜ、俺を仲間はずれにしやがってよぅ。」


 アンドルは小声で愚痴を言って二人の後ろに引っ込んでしまった。なんかちょっと、かわいそう。


 


  フロウはその後、端的に事情を説明し始めた。


 僕は話を聞いてビックリした。そりぁ怪しいなと思う。

 


 ウルブロ(狼)のねぐらを探索するために岩に餌を仕掛けようとしたところに僕がいたこと。


 日が暮れる日没時に現れ、怪しい服装をした身元の知れない人物だったということ。


 その不審人物が神の名を名乗ったが、ルビが安全だと判断して連れてきたこと。


 これまでの経緯けいいを口にした。


 「うむ、星の占いによれば今日は絶好の機会と出たのだが…」


 クオツの顔がより一層いっそうと難しくなっている…



 ルビ、これ大丈夫かな。僕、めっちゃ怪しいじゃん。


 ( …フロウを信じてくれ。奴はコランダム族で一番の知恵者だ。)


 フロウはクオツをみてこう付け加える。


 「クオツの占いで良いと出た日に彼は現れた。聞くところによると"ここに来たばかりで何も知らない"という。」


 「はぁ!もしや、お前はポラリスの使者であらせられるか!」


 さっきまでは頑なに怪訝そうにしていたのに今は口を震わせて何か呟いて、今はあっけらかんとしている。


 「ここにおわすは空の縁者(ポラリスの使者)じゃ!今宵こよいは存分にハーラをたたえよ!」


 彼女は突然、揚々とした口調で皆に届くように声を張り上げて言った。


いつもご愛読ありがとうございます。

仕事の方がまだ立て込んでおりまして、しばらくペースが落ちてしまうかもしれませんが、、、只今、合間の時間で執筆し続けておりますので、これからもよろしくお願いします。

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