プロローグ 白昼夢
僕は白昼夢の中にいた。ここは一面白の世界が広がっている。
そんな中でとびきり目立つ建物が3つ。
信号みたいに赤黄青とカラフルなアーチのトンネルを作っている。
神社の鳥居、だよな…
背景が白一色の世界に嘘のようにリアルな質感(色)を持った鳥居は浮き上がって見えた。
「まるで描きかけのキャンパスみたい」
背景が描かれてない本物そっくりな鳥居の絵のような印象を覚える。
この白い世界の中は閉鎖的で絵の中なのかと思うくらい。
それでいて自分の鼓動すら飲み込むほど静かでもあった。
「ーーーん?」
気づかなかったけど、奥に白い扉があった。南国なイメージだろうか。
ハワイのログハウスに使われていそうなドアだ。
"す◯めの戸締り"で出てた木のドアにそっくりでもある。
何だか怪しいよな。驚くほどこの空間に馴染む三色の鳥居があって、
その奥には、誘う様にドアが立ってるんだから、罠か何かにしか思えない。
遠くから見ても分からない。一番手前の鳥居に近づいてみよう。
これも夢か何かだろうし、怖がる必要なんてないや。
地面が、地平線が無いとこんなに怖いのか。
宇宙空間ってこんな感じなのかな。ガラス張りの橋を渡っている様な。
わかっていても足を踏み出すのに躊躇ってしまう。
辿り着くのに時間はかからなかった
そんなに距離がなかったな、あっという間に鳥居が目前にあった。
何もかも白だし、鳥居が無かったら上も下も分からない、全く並行感覚がない。
だから、遠くから見た時より大きくはないと感じる。
その上、距離感が掴みにくいし―
恐る恐る手を伸ばして鳥居に触れると、ヒヤリとした心地よい感触を得た。
よく見ると木ではなく石作りだ。
鳥居は情熱を持つ赤色で、気高いようで、どんな人でも受け入れられるような深くてあったかい色合いだった。
赤い鳥居は珍しくは無いけど、朱色とも違うし、普通の鳥居より特別頑強に見えてくる。
やっぱり鳥居が赤だと、安心感があるな。
奥にある二つ目の黄色の鳥居はところどころゴツゴツしていた。
金色と黄金色とがあって、光沢の具合が違うからマダラ模様に見える。
金色の方は金属っぽい輝きで、折り紙に一枚だけ入っている金色とおんなじだ。
安っぽさは無い。メタリックなところが、むしろ好印象だった。
黄金の方は説明はいらないだろう。金箔の様に高級感がある。金そのものって感じか。三つの中で一番派手だ。
最後のは群青の青。信号機で例えたけど、信号の色は緑だよな。
前は青色は好きだったけど、マイナスイメージが強まってしまった。
ブルーな気分だとか、アオハル(青春)だとか、
青春はいいモノだって?僕には、ただ浮かれているだけにしか見えない。最近は人が嫌いだし、怖い。
人間恐怖症なんじゃないかってぐらいに人を信じることが出来ずに、いつしか青が好きじゃなくなっていたんだ。
そんな暗めの青の中に夜空に浮かぶ星々のように、金や黒色の細かい点が散りばめられているところも僕の心を揺さぶった。
そんな個性的な鳥居と見比べると、一番奥にある扉は、この中で一番ありきたりな木で出来た普通の扉だった。
正方形と長方形を組み合わせている模様の洋風な扉で、ボロいことを除いて、これと言って特色も無い。
これからどうしよう。
こんな わけのわからない場所になぜ僕はいるのだろうか。
あれ、そもそも僕は当然の事実として受け止めているがここは、現実なのだろうか。
そんな中、唐突に今日の出来事がフラッシュバックしてきた。
僕は辛くてその場に崩れる様にしゃがみ込むと、後悔した。
思い出すんじゃなかった。今まで生きてきた中で、そうそう立ち直れない壁はなかったのに。
少し違うな、壁が立ちはだかったというよりも、決して壊れてはいけない心のダムがついに決壊してしまったんだ。
おはようございます。初めまして、石乃岩緒止です。
小説家になろうに触れてまだ日も浅く、上手く使いこなせていないかもしれません。
執筆は早い方ではありませんが、6つ程書き溜めているので6日間投稿してみようと考えております。温かい目で見守って頂ければ幸いです。
末永くよろしくお願いします。