30. 異世界では初登場です
「はぁ~」。 只今、深夜の大露天風呂を、大満喫中です。 何でしょうか、この疲労感は…? 流石は大神様の湯ですよ、皆様。 癒されます。 ぜひお泊りは、温泉宿『大神』へ。 さて、昨夜に続きまして囲炉裏のある大広間では、呑んだくれ太郎達が屍の如く、純米酒に溺れて酔い潰れております。 先程から気になる事があるのですが、視界の片隅(正に大露天風呂の端っこです)に、いつの間にやら宿泊客様が入浴中のようでした。 ですが、湯煙りの中に浮かぶシルエットに、かなりの違和感があります。 身長170cmの俺でさえも、肩まで湯に浸かっている露天風呂です。 それなのに、湯煙りの中に浮かぶシルエットは、上半身と頭。 しかも、かなりデカい…。 2mはあるイケメンなクーガさんかな? それとも、2mはあるタンクなガルムさんかな? あ…、山下の荒廃した大地から噴き上がる、乾いた風に流される湯煙り。 と、湯煙りの中から現れたのは、宿泊客ではありません。 いや、見覚えの無い奴です。 咄嗟に「お前は誰だッ!」と、俺の声が大露天風呂に響き渡りました。 張り上げた俺の声に反応した奴が、ギロリッと俺を鋭い眼光で睨み付けました。