28. スキルの常識
俺の仮想を聴いていた彼等の1人から、「待て待て!そんな事言いながら、お前は俺達から飲み代を取る気だろッ!」と声があがりましたが、俺は首を横に振りながら、「いいえ、俺と祖母は皆様から、宿に泊まられたお金だけを取ります。皆様が飲まれました酒も、浸かられた露天風呂も、食べられました食材も、温泉宿の主である大神様から授かった恩恵ですから」と、全ては大神様からの御恵だと語る俺に、彼等は酔いも覚める程に呆然とするしかなかった。 「スキルは神から与えられし賜物でしょ?もしかしたら、人間以外で山にスキルを与えられたなんて、皆様が知ってるスキルの常識を覆してるかもしれませんね」と、俺が一方的に語った仮定を聴いた彼等からは、ただ沈黙するしかなかった(あれ?何だろう、この空気感…)。 あッ!スキルで思い出しました。 俺と祖母にスキルが備わってました。 その名も『自動翻訳スキル』。 コチラの世界の言語は、ロシア文字なのに英語読みです。 ここで自動翻訳スキルが発動します。 彼等から英語で言われている言葉が、俺と祖母には日本語に聴こえています。 逆に、俺と祖母が日本語で言う言葉が、彼等には英語で聴こえています。 文字も同じです。 彼等が書くロシア文字が、俺と祖母には日本語に見えてます。 逆に、俺と祖母が書く日本語が、彼等にはロシア文字に見えてます。




