表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
crime  作者:
1/2

1

ODをして自殺未遂をしていた主人公を拾って日常をすごすお話です コメントが生きがいだからよろしくお願いします ※薬の過剰摂取はやめましょう、当作品は過剰摂取を推奨していません。

「あんたなんか産まなきゃよかった!!」

「もう顔も見たくない!出ていけ!!」

「二度と帰ってくるな!!」


そう怒鳴られて真冬のなか学校の制服ひとつで締め出された。

今日はいつもより冷え込んでいて肌がピリピリと傷んだ。


殴られた傷が冷えていいかもしれないとか呑気に考えるが指先からどんどん冷えていく感覚に少し焦る。もう深夜の為暖かい場所に避難する事も出来ないだろう。


「こうなったらもういっそ、死んでしまおうか」


ぽつりと零した言葉だが、口から出してみると意外にすんなりきて本気で死んでしまおうと考えた。

確かカフェイン剤を100粒飲めば死ねるって何かで聞いた事あるな

そう考えてドラッグストアを回って合計100粒のカフェイン剤を買った。


プチプチとひとつひとつ開けながらぼんやりと考える

これを飲めばもう生きなくて済むのかな

殴られなくて済むのかな

実の母親にまで存在を否定されたりしなくて済むのかな。


悲しみが心をナイフでグサグサと刺してくる。


「……よし、これで100錠だ」


こんな世界、早く去ってしまおう。

ザラザラと口に放り込みグレープフルーツジュースで飲み込んだ。


はぁ、と息をつけば白い煙が口から吐き出される


もう飲んでしまった。戻る事は出来ない

ぼんやりと空を見上げ手を擦り少しでも温めようとした。


飲んでしばらく経ったなと考えると不意に吐き気が込み上げてきた


「……っ!」


ご飯も何も食べていないから吐くものなんて無いはずなのに吐き気が猛烈に込み上げて、慌てて立ち上がろうとするとぐらりと世界が回った。


立ち上がる事も出来ずに中途半端に力を入れた身体は地面に思い切り倒れ込んでしまった


「……おえっ……はあ……」


倒れても止まらない吐き気に嘔吐くが胃液しか吐き出されない

カフェイン剤で死ぬのってこんなに辛いのか……?

立ち上がる事も出来ず頭は宇宙にいるかのようにぐるぐる回る。

もう死ぬのかななんて考えていると誰かの足音がした


「ちょっと、君大丈夫……?顔色最悪だよ」


話しかけられた……?


「あ……、オエッ……」


返事をしようと口を開けるがまた吐き気が込み上げて言葉にならなかった


「気持ち悪いの?これ口つけてないからよかったら飲んで」


ミネラルウォーターを差し出されて震える手でそれを少し飲み込んだ


「俺ん家近いからとりあえず移動しよう、お兄さん冷え切っちゃってるし……おいしょっと」


そういいながらお兄さんは俺を背負い込んだ

服が汚れてしまうと思って吐き気を我慢するのは大変だった。


「すぐ着くから頑張って」


そういいながら早足で歩くお兄さんの背中は暖かくて涙が出た。

勝手に死のうとして薬飲んだのに人様に迷惑かけて何してるんだろう……


「ほら、ここが俺ん家。今暖房入れるから待ってね」


そういいながらお兄さんはソファに寝かせてくれた


「その制服、野崎高校だよね、高校生でもう夜の12時なのに親御さん心配しないの?」


「あ……二度と帰ってくるなって言われたので……」


「なんだそれ、それであの寒空の下1人で倒れてたの?」


「……はい……オエッ……」


「ああもう、起き上がらないで!君なんか飲んだでしょ。何飲んだの」


「……エスタロン○カ」


「ばかだなあ、あれは飲んでも辛いだけだよ。とりあえず落ち着くまで家にいていいから沢山水飲んで薬薄めよう」


「……すい、ません、ありがとうございます……」


頭がぐるぐる回る

世界がぐるぐる回る


でもさっきと違って暖かい。

見知らぬ人なのに優しくて、何故か落ち着く


「俺は黒崎欖。君は?」


「……蔦田白音、です」


「……白音君ね、怪我手当するからちょっと痛いの我慢してな」


先程殴られた傷に暖かい手が触れて薬を塗りこまれる

ちりっと痛みが走るが触れる手が暖かくて何故か嬉しくなる。

ずっと触れていて欲しい、そんなことを考える。


そのまま気がつけば眠ってしまっていたらしい。目を覚ますとあのぐるぐるは消えていた。


「あ、起きた?どう?調子は」


振り向くと黒崎さんはキッチンでなにか調理しているようだった。いい匂いが鼻をくすぐる。


思えばしばらく何も食べていない

そう気づいたら空腹感が目を覚ましたように訴えかけてきてぐぎゅーと音を立てた


恥ずかしくてカッと耳が熱くなる


「どうせご飯食べてないんでしょ、おいで、一緒に食べよ」


「あ、ありがとうございます……」


「敬語じゃなくていいよ」


「あっ、ありがとう……」


キッチンにあるダイニングテーブルにつくと黒崎さんが味噌汁とご飯を置いてくれた。

いい匂い、お出汁の匂いがする


「い、いただきます」


「どうぞ」


ゆっくりちびりと味噌汁を飲めば、あまりの温かさに涙が出た

暖かいご飯なんていつぶりなんだろう。


「えっ!?大丈夫!?まだ気持ち悪い?」


「ご、ごめん暖かいご飯久しぶりで……」


「……どんな生活したらそうなるのさ……白音君さぁ、しばらく家にいなよ」


「そんな、迷惑かけられないよ……」


「いーや、ここでほっといたら君また公園で倒れてそうだもん。元気になるまで帰さないよ」


そう言ってはにかむ黒崎さんが眩しくてつい目を逸らしてしまう。

なぜかさっきから心が落ち着く、黒崎さんともっと一緒に居たい。そんなふうに思うなんて初めてで戸惑ってしまう。


戸惑いつつもゆっくり味噌汁を飲んでいたが急に昨日の吐き気が込み上げてきて反射的に立ち上がるとまた世界がぐるりと回った


そのまま力が入らなくなりまた床に倒れ込む


「ちょっと大丈夫!?昨日のカフェインが抜けてないんだね。大丈夫だからね、このゴミ箱に吐いちゃおう」


ゆっくりと背中をさすられて折角つくってくれた味噌汁を吐いてしまった

罪悪感で呼吸まで苦しくなってくる


「ご、ごめ……なさ……折角……」


「いいから、大丈夫だから落ち着いてね。一緒に深呼吸しよう、ほら吸って、吐いて」


優しい声につられてゆっくり深呼吸するとだいぶ呼吸が楽になった

なんでこの人はこんなに優しいんだろう


また黒崎さんに担がれてソファまで戻ってきて寝かせてもらった


「昨日だいぶ飲んだんでしょ、すぐ抜けるもんじゃないんだから休んでて」


「……すいません……」


「あやまんないの、大丈夫だからね」


そう言いながら頭を撫でられて心が少し軽くなった。

なんでこの人はこんなにまぶしいんだろう。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ