表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSUSHIMA 魔魅ブギらんど  作者: わたなべみゆき
98/109

第二十四章 その四

 あゆみは少し寂し気に「そうなのね……」と答えると、今度は信國の方に体を向けて尋ねた。

「ところで、なぜ観音堂はここ法清寺(ほうせいじ)に移されたのかしら? 他の場所ではなくて、ここに移された理由があるの?」

「おそらくですが……。私の考えでは、ここが由緒ある寺であったことと、宗助国公(そうすけくにこう)の胴塚があるからではないかと」

「宗助国公の胴塚?」

 あゆみは、信國を食い入るように見た。

「あゆみ様、胴塚は隣の法清寺の境内にありますので、一緒に参りましょう」

「あゆみ様、どうぞ参ってきて下さい。ここは私どもが見張っておりますので」

 大ババ様も大きく頷きながら、扉の方に手を指し示した。

 あゆみは観音堂を出ると、右側にある垣根の切れ目となっている道を抜けた。すぐ隣が法清寺の境内になっているのだが、その間には沢山の石仏や仏像が所狭しと置いてある。

 あゆみは仏像に手を合わせながら境内に入った。信國について案内される方に歩くと、すぐに左手側に「宗助国公お胴塚」と書かれた標識が目に入った。

 あゆみは、その前で足を止めた。そこには石を積み囲んだ真ん中に、墓標のような大きな石が建てられいる。

「あゆみ様。ここが胴塚でございます。元寇の時、宗助国公は大将として勇猛果敢に元軍を迎え撃ち、多くの敵を倒しながらも敵は何千何万。最後は敵の矢に倒れ、体は頭部、胴、手足とバラバラに切断されたのです。ここは、そのうちの胴の部分を埋葬し祀ったものです。以前、観音堂があった床谷の丘には、「首塚」があり、ここから小茂田方面に少し下った所に「手足塚」がございます。元寇では、助国公だけでなく、元軍と戦った全ての武将。民百姓もみな、それほど壮絶な戦いを()いられたのでございます」

「首塚が床谷の観音堂跡に……」

 そう小さく呟くと、あゆみは突然「信國、わかったわ! 黒の法師の居場所が」と叫び信國の顔をじっと見た。

 信國も頷くと、

「おそらく、そうでしょう。黒の法師は床谷の首塚に向かったのだと私も思います。

 元寇があった頃は、海岸線は今よりもっと奥にあったと考えると、小茂田地区というよりも、佐須や床屋がある下原地区は壮絶な戦いがあった場所です。多くの対馬の、武士や民衆のみならず、元軍も無残な死を遂げた事でしょう。そこには、まだまだ人々の無念や恨みが渦巻いているはず。それが黒の法師が床谷の首塚に行った理由でしょう。

 あゆみ様、我々も急ぎ後を追いますか?」

「ん、今どうしたら良いか考えてたの。先にここの観音堂に結界を張るべきか、それとも先に黒の法師を倒しに行くのが良いのかと。

 観音堂に入った時から、私達を見守って下さる美しい観音様。昔と変わらないお姿でいらっしゃる。元寇の戦いをも、よくり抜けられて……。やっぱり法師様の結界の力なんだろうね」

 あゆみは観音様のお姿を思い浮かべながら感慨深そうに呟いた。

 

「私は、まず観音堂に結界をはり、ここを固めた方が良いかと。そのあとは、阿連の守り人が守ってくれるはずです。あゆみ様、とにかく急ぎましょう!」


 二人の後を追って法清寺の境内に来ていた安國が、凛々(りり)しい表情で二人の間に割って入った。

「そうだな! 安國。 あゆみ様、私もそう思います」

 信國は頼もしくなった安國を見て、嬉しそうにそう言った。 

 あゆみも笑顔で頷き、三人の間に光の風がきらりと吹き抜けた。

 しかし、その頃、以前に観音堂があった観音山は不穏な闇に包まれ、これから始まる戦いに備えているかのように黒々とした霧が渦巻いていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ