第二十三章 その一
「あゆみ様、ガンゴウはオヒデリ様の祠へ向かったのかもしれません!」
「おひでりさま? あっ!! 内山の闘いの時に光の力をいただいた場所ね!」
「そうです! 太陽神である阿連の守り神をお祭りしている所です」
「ガンゴウはそこに行ったかもしれないと言うの?」
「我々の目を欺くために、阿連の民の一部だけに雷命神社を襲わせ、おそらくガンゴウと 残りの民は、オヒデリ様を襲いに行ったに違いありません」
二人がそう話をしている間にも、憑依された阿連の人々がわぁわぁと叫び声を上げながら本殿に向かってだんだんと近づいてくる。
「信國、とりあえず今はここを守るのが先ね!」
「佛伝光滅黒説門摩訶般若……」
あゆみは呪文を唱えながら高く舞い上がると、日神の剣を抜き天に掲げた。まぶしい光が剣から放たれると、その光を操るように憑依された人々の間に漂う黒い霧を絡め取った。
霧が晴れた人は、気を失うようにその場に倒れた。倒れた人々の着衣のポケットからはポロリと黒い石がこぼれ落ち、それは直ぐに元の海岸の石ころへと戻った。
「やはり、海岸の憑依された石に憑りつかれていたんだ!」
信國がそう叫んだその時、下の方から男の声がした。
「おーい、どうしたんだぁ。誰かおるのかー?」
男の怒鳴り声が近づいて来る。安國が心配そうにあゆみを見た。
「あゆみ様。誰か来ました! 我々の姿を見られては……」
「では、いったん社殿の裏へ身を隠して様子をみよう!」
あゆみは二人にそう言い、三人は社殿の裏に回った。
社殿の裏から様子を覗っていると、
「わー、おいちゃんにおばちゃん。みんな、どうしてここに倒れとるとね! 何があったと!?」
下から駆けあがって来た男はそう叫びながら、倒れている村人を抱き起こし声をかけ始めた。
「あ、あの方は!」
様子を見ていた信國がつぶやいた。
「信國、あの人のこと知ってるの?」
あゆみは信國の方を向いて、返事を待った。
「はい、あの方は……」




