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TSUSHIMA 魔魅ブギらんど  作者: わたなべみゆき
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第十九章 その五

「それともう一つ、聞きたいことがあるの。白ババ、なぜ悪の大魔王は対馬を狙い続けるの?」

 あゆみは少し落ち着いたところで、信國にした問いを白ババにもしてみた。

「それは、対馬が平和と融合の島だからです。

「平和と融合の島!?」

「さようでございます。

 三〇〇万年前に、今の日本の形が作られた時……」

「さ、三〇〇万年まえー! そんな大昔に遡るのー?」            

「そうです。それほど大昔に、われらの神は日本を今の形に作り上げられました。大陸から見れば、離れ小島のような日本ですが、美しい自然に恵まれ、金、銀などの宝も取れる豊かな島。

 われらの神は、その日本と大陸との間に島を二つお作りになりました」

「二つの島?」                                                             

「はい。それが、この対馬とお隣の壱岐の島でございます。対馬が太陽神 天照(アマテル)

島で壱岐が月神の島です。

 対馬は大陸と日本の間に立ち、物質や文化など様々な交流の橋渡しとなり、またある時は、交渉の狭間となり衝突の危機を緩和する島でもありました。そしてまた、両方の生態系や文化を飲み込み、独自のものを産み出だす。いわゆる融合の島でありました」

「へー、なんか難しそうだけど、とにかく対馬は太陽神の島で平和を保つ役目があるってことね」                               

「そうです。神々は、この平和の島に太陽神を置き、お天道様の恩恵を受け、その愛と自然を守る教え。そう、「天道信仰(てんどうしんこう)」の元となる原始太陽信仰の種を落とされました。

 一方、悪の心を広げ世界を支配しようとする大魔王にとっては、対馬があるとその企ての邪魔になることから、太陽神を滅ぼすために、この島にやって来たのでございます。

 そうして大いなる光と闇の戦いが長い間、繰り広げられました。まだ人類は誕生し                              

ていない遠い遠い古の頃の話です」

「それで、それでどうなったの?」

 最初の戦いは太陽神が勝ち、悪の大魔王を退けました」

「最初の戦い? と言うことは……」

「そうです。執拗なまでに何度も何度も襲いかかる悪の大魔王。         

 その戦いの中で人類の歴史が始まり、対馬の太陽神は人間を守るために、先ほども言った「天道信仰」というものを広めました。

 これで、ある程度、島の防御はできましたが、悲しいことに人間は日神の教えを心に留めながらも、悪の大魔王に心を奪われることもあるのです」

「それは、どういうこと?」

「あゆみ様は、純粋なる日輪の血筋のお方。然しながら、人間と言うのは、神のように行かないのでございます。 

 苦しみや悲しみに心が奪われると、ちょっとした隙間に悪の大魔王が忍び込み、惑

わされる。そんな弱い存在でございます。そのために……」

「そのために? そのためにどうしたの?」

「そのために、太陽神の神は、天仁法師様を対馬に遣わされたのでございます。

 今からおよそ一三〇〇年前に、あのような素晴らしい救世主を私達にお贈りくださいました。

 そして、それに対抗するように忍び込まされたのが、悪の大魔王の子、忌まわしい黒の法師。いわゆる光仁法師でございます」

「そうだったんだね。私達の日神の一族はそんな大昔からこの世を守るために、悪の大魔王と戦ってきたんだね。

 私は嫌だったの。ずっと、なんでこんな家に生まれて来たんだろうって思ってた。

 拓郎やはるかちゃん達みたいに普通の人間として生きたいって思ってたの。

 でも ……今思えば、拓郎も普通に生きてるわけじゃなかったけどね……」

「ん? なんですか? 最後の方がよく聞き取れませんでしたが」

「ううん、何でもない! だけど、いろいろな事を体験するうちに、私には私の気持

ちとかどうでもいいような使命があるってわかったら、そんなちっちゃな事、気にならなくなってきた」

「あゆみ様、ずいぶんと成長されましたね……。お辛い気持ちもあるでしょうが、みな日神の血筋の神々は大変なご苦労を背負われて、この世の安泰に貢献されてまいりました。

 あゆみ様もきっと立派な日神の……」

 そう言いかけた白ババは、「ん? ちょっと待ちなされ」と洞窟の入口の方へと行った。誰かと話してるようで「そうか」と小さく頷いた。そしてあゆみの所に戻ると「信國殿は山口に戻られているそうじゃ。あゆみ様は、安國殿と共に山口の家にお戻りくださいとのことでございます」

「え? 白ババ、今、誰と話したの?」

「今、山気が伝言を届けてくれました」

「白ババ、山気が来たことに良く気がついたわね。私、全くわかんなかった! 安國は気が付いた?」

「え? 俺も全くわかんなかった」

 安國は頭をぽりぽりとかきながらバツが悪そうに言った。

「お二人とも未だ修行がたりませんなー。はははは……」

 白ババは愉快そうに大声で笑うのだった。

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