第十九章 そのニ
「白ババはね、魔魅の中でも妖力がとっても強いの!」
「妖力?」
「そう。特に人の心を見抜く力がものすごく強いの。安國がもし隠し事なんかしてたら、直ぐにバレちゃうわよ」
あゆみはちらっと安國の顔色を覗いながら言葉を続けた。
「安國がどこの誰かなんてすぐにわかっちゃうってこと!」
「な、なんだよ、それ! 俺をおどしてもダメだから……」
「おどしてなんかないよ! これまでだって嘘ついて魔魅になった人間もいるんだから」
あゆみはじろりと安國を見た。
「ま、まじかよ。やばいなぁ、親父が俺を一緒に行かせたりするから、こんなことになるんだ……」
安國は下をむいて、ぼそぼそと独り言を言った。
「安國、何ぶつぶつ言ってんの! もう覚悟決めたら」
薄笑いを浮かべてあゆみが言うと、安國はしかめっ面をして、眉間に人差し指を押し当てて、何かを考えてるそぶりを見せた。
「あ~、やっぱり、そうだ」
「ん?」
きょとんとした顔で安國があゆみを見た。
「やっぱり拓郎だ! 拓郎の癖は、困った時にしかめっ面で眉間に人差し指を押し当てて考えるんだもん。私には誤魔化しはきかないわよ!」
安國は口をポカンと開け、白目を向いたような顔をした。
「きゃははは、何? その顔。拓郎ダヨね! だって、その癖があるのは拓郎しかいないもん。
本当のことを言って! 私だって、こうして正体を拓郎に知られたんだから。私が天野あゆみだってこと、みればわかるよね!」
安國は何も言わず黙ったままである。沈黙が続いたあと、安國は顔を覆っていた白い布を取った。




