第十五章 その一
三根の観音堂を後にした四人は来た時と同じように、あゆみ、定國、盛國は龍太郎の背に乗り、
信國はいたずら天狗の飛び傘で飛んだ。
四人は次の観音様がある曽という所を目指したのだが、あゆみはふと、曽に移る前に観音様が置かれていた朽木に寄りたいと思い、龍太郎に朽木に寄ってくれるよう頼んだ。
「あゆみ様、朽木の観音堂があった場所に到着しました」
そこは、神社の側の空地で一面、背の低い草におおわれていた。
龍太郎の背から三人が下り、続いて信國が直ぐそばに降りた。
「天仁法師さまと来た時とはだいぶ変わったなぁ! もっと海があの辺まであって、家ももっと多かったような……。そりゃそうだよね、あれからもう1400年位経つんだから」
あゆみは周辺を見まわしながらつぶやいた。
「お役所も観音堂も無くなってる。だけど、どうして朽木から曽に移ったんだろ!?」
「あゆみ様、ここは以前は朽木と言ってましたが、今は吉田という地名に変わりました。大昔は、朽木氏という有力者がとこの土地をおさめていたそうで、地名も朽木と言っておりましたが、1600年代と言うから、今から400年くらい前には朽木氏が途絶え、吉田という地名の変わった様です」
「へー、今は吉田って言うんだ。信國は何でも知ってるね! 信國、神社を参ったら、そろそろ曽に行ってみようか!」
「あゆみ様、かしこまりました」
四人は、あゆみを先頭に代わる代わる神社を参拝した。
「ここは佐護の観音堂がもともとあった神社と同じ名前で、天諸羽神社って言うんだよ。この神社があるところでは、占いのプロがいて政について占ってたんだって!」
あゆみは定國と盛國の方を向いて話しかけた。
「へー、そうなんですね! 今はいないのかな? その占いのプロ!」
「どこかにいるかもねー! 定國達みたいに1000年以上ずっと修行してるかもよ」
あゆみがにんまりと笑いながら定國を見ると、後ろから信國の声がした。
「あゆみ様! 予定を変更します。定國と盛國は龍太郎に乗って、里へ帰りなさい。曽の観音像には私とあゆみ様で参ります。曽にはまた別の我らの仲間が待っております」
「えっ! 定國と盛國は帰っちゃうの? なんか寂しいなぁ。それで、どこに帰るの?」
盛國を軽くにらむようにぐっと目力をいれた。
「あゆみ様、それは……」
「それは?」あゆみの顔が輝いた。
「それは秘密です」
盛國が勝ち誇ったような顔であゆみに向かってニヤッと笑ってみせた。
「もう~!」
そう言いながらも、龍太郎に乗って舞い上がった二人に元気に手を振りながら見送った。
次にやってくる信國の仲間とはいったい誰なのか!?
修験道者なのか? 全く違う仲間なのか? はたまた占いのプロの末裔なのか!?
あゆみは心の中でわくわくと想像を膨らませるのであった。




