第十三章 その二
家に戻ると、あゆみはすぐに白い装束に着替え始めた。
着替えが終わると母君が眠る布団の側に座り、ずっと眠り続ける母君に向けて語りかけた。
「かあさま……」
母君は美しい顔のまま何の反応もない。
「かあさま、あゆみの声は届いているよね。かあさまの側にずっと居てあげたいけど、すぐにでも三根の観音堂に行かないといけない。三根の観音様は焼けてしまって結界が弱くなってるから、大魔王たちが狙ってるはす。
多分、奴らは内山で騒ぎを起して私達を引き付けた隙に結界を破壊するつもりだわ」
あゆみの側について離れないあんじょが驚いた顔であゆみを見た。
「え! あゆみ様、もう行かれるのですか!?」
「ええ、ゆっくりする時間はないわ。ただ、内山のことも心配……」
あんじょは考え込むように下を向いた。
「あゆみ様、内山のことは心配されなくともよいですぞ。太陽の神々の力をかりて、皆ではった結界でございます。あゆみ様がまた内山に戻って来られるまでは破られぬと思います」
いつの間にやってきたのか白ババがあゆみの側にきてつぶやいた。
「きゃ! 白ババ、いつの間に帰ったの。びっくりさせないで~」
そう言いながらも、あゆみは嬉しそうに白ババに抱きついた。
「これこれ、あゆみ様、子どもじゃないんだから、白ババはもう抱っこはできませんよ」
白ババもなんだか嬉しそうだ。
「だってまだ、あゆみは子どもだもん! 白ババ、抱っこして、抱っこして。あははは……」
「あゆみ様、だいぶ元気になられた……」
二人の様子をみながら、あんじょが安心したようにつぶやいた。
じゃれ合っていた二人だが、急に白ババが何か思ったのか、顔をかしげるようにあゆみを見て言った。
「あゆみ様、少し大きくおなりになりましたな」
「そう? 気のせいじゃない?」
あゆみはそう言ったが、実は自分自身のある変化に気づき始めていたのだ。




