第十二章 その二
「ははははは、冗談じゃ。
ちゃーんと計画はできておる。今回は、内山を守るのが目的だから、対馬の南半分に重きをおこう。
まずは、龍良の地だ。浅藻の八丁角、天仁法師様の塚にしょうたん。そして、裏の八丁角、母君の塔にはあんじょ。これはもう決まっておるからの。
あと、太陽神を古くから祀っておるのは、美津島のアマテル神社だ。ここにはやまわろうのゲン、そなたが行ってくれ。そして、天仁法師様をはじめ、天道教の信者、そして信國のご先祖さま達が修行をしたり、参ったりした霊峰、白嶽には龍神様がいるのでお願いしよう。
それから内山を西と東から守るのに、西は阿連のオヒデリ様。東は曲のシラサキ様に行って、力を与えてもらおう。ここも古くから太陽神と関わりのあるところ。
阿連には、木太郎とさんき。お前さんたちが行ってくれ。曲のシラサキ様の塔には龍太郎が飛んでくれ。
そして、最後、豆酘のタクズダマ神社にはわしが行く!
みな、そこでいつものお経を唱え続けるんじゃ。そして、日神の神々に心を合わせ、力を貰い、内山で戦うあゆみ様に念を送るんじゃ。みんな、頼んだぞ」
「白ババ、おいらは?」
「ん? ああ、ひとこえおらびか! そなたは、龍太郎に乗って一緒にシラサキ様の塔へ飛んでくれ!」
ひとこえおらびは嬉しそうな顔で胸をたたいて喜んだ。
「白ババ、ありがとう。私はすぐに弱気になっちゃうダメな末裔だけど、いつも皆なに助けられて幸せね!」
あゆみはぎゅっと白ババの手を握った。
「私どもがついておりますぞ。あゆみさま、必ずや内山をお守り下さい。内山と浅藻に挟まれた龍良は、日神の守り神の地でございます。あとの地も、もともとこの対馬をお守りになられた太陽神の神々にゆかりのある地。歴代日神の神々のお力を呼び覚まし、私どもがあゆみ様に力を与え続けます。
必ず、春子さんにとりついた黒目を倒し、内山を侵そうとする悪の気を追い払って下さい。それが出来るのはあゆみ様だけでございます。
われらは日神の神々の力を貸して貰えるようご祈祷致します。この身が、この力が尽きようともあゆみ様をお守り致します」
「白ババ、私は、あゆみ様と共に内山へ行き、戦いの援護を致します」
「ああ、信國殿、あゆみ様を頼みましたよ」
「はっ!」
信國は、急に片膝をつき、白ババに頭をさげた。
「では、みな参ろう」
白ババの声を合図に魔魅たちは勇んで家を出た。
「みんな、お願いね。力をかしてちょうだい」
あゆみはそうつぶやいて、それぞれ祈りの地へと出発する魔魅たちを見送った。




