第十一章 その四
みんなの視線が信國に集まり、信國の口からどんな言葉が飛び出すかを注意深く見守った。
「あゆみ様、拓郎殿が私の子であっても、なくても、それはお答えできません。私ども、修験道者はこれまで誰も正体を明らかにすることはありませんでしたし、これからも明かすことはありません。
それが私ども、天仁法師にお仕えして来た修験道者のしきたりなのでございます」
「そ、そうなの。修験道者って、そんなに厳しいしきたりがあるの? 子どもの頃から鍛錬してるって……、大変だね」
「物心ついた時には父に修行させられていました」
「そっかぁ。じゃあ、拓郎はたぶん違うね! ジャッキーチェンの真似して木から落ちてケガするくらいだから」
ぷぷぷ。
うひゃひゃひゃ。
たくろう、たくろう……ふふふ。
魔魅たちのささやくような笑い声が広がる。
「コッホン」
白ババの咳払いで、一気に部屋の中が静まった。
「あゆみ様、どうなさいますか? 天仁法師の末裔であり、日神の一族であるあゆみ様しかこの島を、いえこの星を守れる人はおりません。
あゆみ様が、この島をお守りになると覚悟されるならば、私達、魔魅たちはこの命をかけて、あゆみ様と共に戦います。
なぁ、ここにいる魔魅たちは皆そうであろう!」
魔魅たちは、うんうんとちぎれるほど首をふった。
「あゆみ様、共に戦います」
「あゆみ様について参ります」
「もちろんです!」
魔魅たちは口々にそう言ってあゆみの周りに集まった。
「みんな、ありがとう、ありがとう」
あゆみはそう言うと、また手で顔を覆って泣きじゃくった。
白ババは優しい顔になりあゆみに向かって言葉をかけた。
「あゆみ様は一人ではありません。この島を心から愛し古より守ってきた仲間がおりますぞ」
「白ババ……」
あゆみは顔をあげると、わぁーんと大声をあげながら白ババに抱きついて泣き続けた。
白ババは、そんなあゆみの背中をなでながら、
「お辛いでしょうが、母君たちが同じ思いで守り続けたこの島の光をお守りください」
そう言うと、あゆみをギュッ強く抱きしめた。
と、その時だった。がらがらと乱暴に玄関の扉が開いたと思うと、いきなり和室の襖が壊れるかと思うほど勢いよく開いた。




