第八章 その六
「あゆみ様、大丈夫です」
信國はゆっくりとうなずきながら、大猫神の呼吸がわかるおなかのあたりに目をやった。
「ああ、よかったぁ」
あゆみは嬉しそうに笑うと、剣を鞘におさめた。
「信國、大猫神様はだいぶ弱っていらっしゃる。この後、どうしたらいいの?」
「大猫神様の事なら、我らに任せてください」
そう言って、あゆみの前に集まってきたのは、葉太郎たちだった。
「葉太郎!」
「御嶽での我らの情け無い姿を挽回するためにも、大猫神様をきっと元気にさせてみせます!」
葉太郎の仲間たちは、いつの間にか、どこかしこからやって来たのか、大猫神を囲むようにたくさん集まっていた。
「葉太郎。じゃあ、お願いするわ。大猫神様を宜しくね!」
「しかし、さすがでございます。
あのように黒い霧に巻かれながらも、簡単に憑依されなかったのは、大猫神様だからでしょう」
信國が一つ大きく息をしながら、そう言った。
「大猫神様はだいぶ前から弱っておられました。多分、森の気が弱っているからでしょう」
「森の木って?
山に生えてる木が弱ってるってこと?」
あゆみが首をかしげて信國を見た。
「ははは……」
信國がさも可笑しそうに珍しく大声で笑った。
「もう! 信國ったら、そんなぬ笑わなくってもいいでしょ」
あゆみは少し膨れた顔で信國を睨んだ。




