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魔魅ブギらんど  作者: わたなべみゆき
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第七章 その五

 観音堂に入ると三位坊があゆみの顔を覗くように見た。

「あゆみ様、大丈夫でしたか? お怪我などありませんか?」

「三位坊、助けてくれて有難う。

 あ、そうだ! 化け物狐に飲みこまれて、気を失いそうになった時、中に黒の法師が見えたの。あれは目の錯覚だったのかな」

「いえ、私も見ました! ちょうど闇仏の眉間の裏に、黒の法師の姿があったので、頭を狙って矢を放ちました」

「そうだったのね。三位坊、有難う。三位坊がいなかったら、今頃どうなってたか…」

「いや、あゆみ様の光には黒の魔力もかないませぬ」

「あ…、そう言えば、なぜか気がついたら、この王冠に意識を集中してお経を唱えてた。そうしたら王冠の石が輝き出して」

「それが、あゆみ様の力です」

「ねぇ三位坊、黒の大魔王って、やっぱり黒の法師なの?」

「そうでもあり、そうとも言いきれません」

「どういうこと?」

「黒の法師は、ドライバーのようなもの。黒の大魔王の命令に従い、黒い霧と共にこの島を闇で覆うことを狙っています」

「じゃあ、大魔王は別にいるの?」

「そうだと思います。しかし、大魔王の正体が我々にもわからず…」

「そうなのね。黒の法師はさっきの戦いで死んじゃったの?」

「いえ、矢は命中しましたが、刺さる前に逃げ出したようです」

「じゃあ、またどこかで襲ってくるかもしれないってことね。

 今はとにかく、観音様のお力を借りて、この地に結界をはりましょう」

「はっ、かしこまりました」

 三位坊と、あとね二人の男たちも片膝をつき、頭を下げた。

「ふふふ」

「何がおかしいのですか? あゆみ様」

「だって、三位坊たち、まるで忍者みたいだから」

「まぁ、似たようなものですよ。

 我らの先祖は、室町時代から江戸時代には、対馬藩主の宗家のしもべとなって働いた者もいたようです。

 先祖の一部には英彦山で修行した者もおりましたので、その者達は手厚い保護を受けたようです」

「宗家?」

「はい、阿比留一族に代わって対馬を治めた対馬藩の元になった一族です」

「へー、そうなのね!」

「はい、阿比留家との最初の戦いの場は豆酘でございます。そして、宗家の初代当主は内山に眠っておられます」

「え、内山に?」

「はい。木武古婆神社はご存知てすか?」

「それは知ってる。学校の遠足でよく行く所だから」

「あそこに祀られてるのが、宗家初代当主、そう 重尚しげひさ様でございます」

「そうなんだー! あゆみは、まだ対馬のことよく知らないけど、1400年前の法師様の時代から、いろんな事があったはずよね」

「我らは、修行を重ね術を磨き、強さのよろいを身につけて参りました。

 しかし、やつらが一番恐れているのは、我らがどれほど術を極めることよりも、あゆみ様のもつ光には敵わない事です」

「ひかり?」

「はい、それは日輪の血筋の人の持つ光です。特にあゆみ様は、強い光を放っておられる」

「うーん。それが自分ではよくわからないの。

 あ、そうだ! 早く結界をはらなくっちゃ」

 思い出したよいたにそう言うと、観音像のまえに置かれた座布団に座った。

 ろうそくに火を灯し、線香に火をつけると、灰にたてた。

 そして、手を合わせ目を閉じて、しばらく祈り続けた。

 目を開けるとお経を開き、太鼓をたたきながら、お経を唱え始めた。

だんだんと大きくなる声。昌和するように三位坊たちの声が重なる。

 あゆみは一心不乱にお経を唱えた。

 観音堂の中から四方八方に広がる光。

 外にいる魔魅たちは手を合わせ、観音堂を拝んだ。

ここまでが『魔魅ブギらんど第一巻』の内容です。TSUSHIMA魔魅ブギらんど第一巻は昨年の十二月に出版されました。

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