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魔魅ブギらんど  作者: わたなべみゆき
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第七章 その四

 扉をあけたその先には、数々の魔魅達が集まっていた。よく見ると、みな手を合わせ、観音堂の上を眺めている。

「わらかざしに木太郎、ひと声おらび!それに山童たちまで。どうしたの?」

 その問いには誰も答えず、みな観音堂の上を見て、口々にお経を唱えている。

 あゆみは外に出て、魔魅達が見ている方を振り返った。

「あっ!」


 あゆみはその場に立ちつくした。

「法師様! 法師様、来てくれたのね。私達を助けに来てくれたのね!」

 観音堂の上には、天道法師の形をした影が立っていた。

その後ろには、後光のように幾筋もの柱が空に向かって昇り、より神々しさをましていた。

「法師様」

「天道法師様」

 魔魅たちは口々に呟き、泣き出すものもいた。

 あゆみは膝まづき、手を合わせた。

「あゆみ様、いけません! それは闇仏で、大魔王の手下です。気をつけて!」

 観音堂の中から飛び出した三位坊は、大声で叫んだ。

 三位坊がそう言い終わらないうちに、仏様に見えた影は、化け狐のような顔になり凄いスピードで魔魅やあゆみのところに忍び寄った。

「きゃあ!」

 みるみるうちに、魔魅たちは黒い化け物に飲み込まれ、姿を現した時には、目の色が真っ黒になっていた。

「アユミヲコロセ」

 黒い化け物は低い声で呟く。

 黒目になった魔魅たちは、まるでゾンビのようにあゆみに襲い掛かろうとしている。

 あゆみは突然の事にその場から動けない。

 黒い化け狐がだんだん迫ってくる。

闇の化け物は口を開けて、あゆみに襲いかかった。

 あゆみはあっという間に、闇に飲み込まれた。

「はっ、あれは!」

 あゆみは闇の奥に飲み込まれて行きながら、その先に黒の法師の姿を見た。

 闇の体の中で、黒い霧が何度も何度もあゆみに襲いかかる。

 あゆみは、剣を抜こうともがくが体が思うように動かない。

 あゆみは抵抗するのをやめると、目を閉じた。

 気を王冠の石に集中し、お経を唱え始めた。

 すぐに王冠の石が輝きはじめた。

 闇の化け物の体の中から、急に光が放たれた。

「なんだ、この女は! なぜ、黒に染まら

ぬのか」

 闇の化け狐が唸り声をあげた。

 その時だった。

「光の矢を射ろ!」

 三位坊は叫び、背中にかけた矢入れから矢を取り出すと、黒い化け狐の眉間に向かって矢を放った。他の二人も一緒に放った。

ぐあぁー

 太いうめき声をあげると、黒い化け狐はあゆみを吐き出し、そのまま霧となった。。黒目にされた魔魅たちも正気に戻った。

「あれ、なんで、おいら、こんな所にいるんだ」

「ひと声おらび、おまえ、黒の大魔王に憑依されて、あゆみ様に襲いかかるところだったぞ」

 そう言われて、ガクンと肩を落としたひと声おらび。あゆみの顔を見れず、泣きそうな顔だ。

「ひと声おらび、仕方ないよ!

 私だって天道法師様だと思って、手を合わせてしまったんだから」

「あゆみ様、、、」

 他の魔魅たちもあゆみの周りに集まって来た。

「私がいけないの。

 また、誰かにすがろうとしてるから。

 天道法師様に助けて貰いたいって思ってるから、そんな私の弱い心につけ込まれたの」

「あゆみさま。大丈夫!

 皆んなで戦いましょう。

 みんな、これまでずっと島を守ってきた魔魅たちです。いつもあゆみ様の味方です」

「わらかざし…。有難う」

 あゆみは、わらかざしの体をギュッと抱きしめた。

「あなた達は、観音堂が川の向こうにある時からいたよね」

「はい、私たちは観音堂が出来るずっとずっと昔からこの地にいます」

「観音堂が出来る前から!」

「そうです。私たちは、この島の自然や動物達の命が誕生した時に生まれました。

命の化身ですから」

「そう! じゃあ、ずっとこの島の移り変わりん見て来たのね」

 すっとあゆみの側に来た小さな山気が唄うように答えた。

「生まれたり滅んだり。そしてまた生まれたり、滅んだり。何百回も何千回も繰り返してきました」

「昔は、こんなに家や建物ってなかったでしょう!

 人間が、自然を壊したり汚したりしてる事で、魔魅たちが困ったりしてない?」

「自然を壊すものはいずれ滅び、そのあとにまた新たな命が芽生える。

 自然無くして命は生きていけないのです。私達はその決まりごとの中で生きてるだけです。

 でも、この島は大好きだから、ずっとずっと人間と一緒にいたい。美しい島を守りたい」

「さんき…」

「あゆみ様! 大魔王の手下が来ないうちに結界を…」

 三位坊が、そっと声をかけた。

「あ、そうだわ。ここから出来る限り広く結界をはるから!

 あなた達、魔魅が平和に暮らせるように。あゆみ、頑張るから!」

「あゆみ様、がんばれ!」

「あゆみ様、お願いします」

 魔魅たちは、観音堂に入るあゆみを見送り、そのあと観音堂を見張るように周りを飛んだ。

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