表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TSUSHIMA 魔魅ブギらんど  作者: わたなべみゆき
14/109

第五章 その一

 法師はあゆみを抱きしめると、優しく言い聞かせた。

「いいか! そなたは私だ。私はそなただ。おのれを信じなさい。これからあと四か所の観音像を参り、結界をはる。

 そして、そなたに術のすべてを伝授する。

 母君が眠りから覚めぬのなら、そなたが覚醒し闘いの力をつけるしかないのだ。

 それが、日神の家に生まれた者の定めだ。

 六観音の最後の地、豆酘(つつ)の観音堂に着いたら、そなたの力を引き出すための装束(しょうぞく)と剣をそなたに渡そうぞ」

「装束と剣?」

「そうだ。日神の血を継ぐ者だけが身に着けられる祈祷の時の衣装であり、武具ともなる。

 すすり泣きしながらも、法師になだめられたあゆみは、母や自分の帰りを待ってる魔魅たちの顔を思いうかべていた。

「すまないね。まだ子どものそなたに辛い道を歩ませる事になって」

 法師は目を閉じた。

「法師様。わかってるの。私が闘うしかないこと。かあさまやあんじょにしょうたん。山童(やまわろう)達もみんな、私の帰りを待ってる」 

 法師は、あゆみをじっと見てうなづいた。

「もう弱音は吐かない」

 あゆみはきっとした顔で法師に言った。

 二人は、龍太郎の背に乗って、三根の観音像が置かれている小牧宿禰(おひらすくね)神社を目指した。

「わ! 神社だ。この中にあるの?」

「そうだ。さぁ、まずはご祭神に手を合わせよう」

 参拝を済ませた二人は一番奥にある観音堂に入った。

「わぁ、すっごい。お顔がたくさんついてるわ」

「これは、十一面観音と言う。さぁ、座りなさい」

 そう言うと、あゆみの前にお経を広げた。

「さぁ、私について唱えてみなさい」

「え、私、まだお経を唱えた事がない……」

「よい。私について一緒に口にしてみなさい。何回も唱えるうちに覚えるから。

 そして文字をよく見なさい。すべてに意味があり、音にも力がある。そして、リズムが大切だ。私が読むように、そのまま真似をするのだ」

 あゆみはお経を見ながら、法師の声をよく聞きお経を唱えた。

「声が小さい。丹田に力を入れなさい」

「たんでん? なに、それ?」

「丹田とは下腹にある。へその下辺りだ。よし、これも修行の一つ。今、やってみなさい。  

 足を肩幅くらい広げ、軽く膝をまげ、お尻を落としてごらん」

 あゆみは言われた通りにやってみた。

「そう、いいぞ。そして、丹田(たんでん)に気を集め力を入れる。どんな感じがするか?」

「んー、なんか、身構えて戦う感じ」

「そうだな。覚悟を決める時の動作だ。

 人は危険な事と向き合った時、命をかけて守ろうとする時、死を覚悟して心を決めた時に自ずと丹田に力を入れるものだ。

 そして、もう一つ。その覚悟が抜けないように、お尻の穴をしっかりと閉める事だ」

「え〜、やだ、法師様ったら、こんな真面目な時に冗談言わないで!」

「ははは。冗談ではないぞ。真剣な話だ。ほら、やってみなさい。腹から声を出してごらんなさい」

 法師の教えを受けながら、あゆみは何度もお経を唱える稽古を繰り返した。

「さぁ、ここではこれ位にしておこう。次は朽木(くちき)だ」

「朽木! 行こう行こう」 

 朽木は三根(みね)からは、さほど離れておらず、すぐに着いた。

 三根と同じで神社の境内に観音堂があり、その中に観音様が置かれていた。

「ここは、天諸羽(あめのもろは)神社という」

「え! 佐護にあった神社と同じ名前」

「おー、良く覚えておったな。

 天諸羽神社は、島の中にいくつかある。この神社は、占いのプロと言える卜部(うらべ)に関連した神社だ。

政に占いは欠かせないからな。神の姿として、仏の功徳を現わす神社でもある。民衆の悩みや苦しみを受け止めて、救ってくださるのが観音様であるのだ」

 神妙に聞いていたあゆみが呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ