第二十七章 その四
「父上、あれは……」
「ああ…」
信國はゴクリと唾を呑んだ。
「恐ろしい事になった。なんとしても、あゆみ様が光の召喚に成功出来るようにしなければ」
大魔城の裏手に回った信國達が目にしたのは、正面からみる大魔城とは全く違った姿であった。
表に現れた大魔城の姿はまるでなく、うごめく黒い霧。その間から見えるのは、黒い鉄の鎖でできた戦闘服に身を包んだモンゴルの兵や朝鮮国の兵達。そして、あろうことか、馬に乗った日本の侍、浪人、農民たち。全てが黒目になった者達。闇の力で甦った者達である。
皆が不気味な姿で彷徨うように揺れている。誰かに襲いかかるのを今か今かと待ち受けるように、その場で足踏みをしているようにも見える。
「龍太郎! そなたは目にも止まらぬほど速く飛ぶことはできるか?」
信國は、興奮気味に龍太郎を見つめると早口で尋ねた。
「信國様、お任せ下さい。私は龍良山の風の精でございます」
「よし! 私がこれから光の矢を、闇の兵達めがけて射るので、できるだけ速くできるだけ遠くに飛んでくれ。我々は、おとりになって奴らを出来るだけ首塚から引き離したい」
「信國様! 承知しました。それで、どちらの方向へ飛びましょうか?」
「そりゃあ。やっぱり、白嶽でしょ! 龍神様にも力をかりないと」
二人の話を聞いていた山童が、龍太郎の背中に乗って話に入った。
「白嶽か! それはいい考えだ。山気と山童はついて来れるか?」
「信國様。冗談言っちゃいけないよ! 俺ら達は魔魅だよ。龍太郎に負けちゃいないよ」
「あはははは。そうか! それはすまない。それなら、一足先に白嶽に飛んで、闇の兵を連れて行く事を伝えておくれ! 龍神様にも手伝ってもらおう」
「合点承知だよ! 任せておくれ。じゃあ、山気! 出発だぁ」
山童がそう言うと、山気は今までとは比べ物にならないスピードで飛び去り、あっという間に姿が見えなくなった。




