第二十七章 その三
龍太郎に乗った信國達は、大魔城の裏手に回るべく、床谷の集落の左側に大きく旋回した。
大魔城の周りには、手の平を繋がれた多くの人々が辛そうに呻きながら立っている。
「わっ、ひどい光景だ」
「だけど、確かにずっとずっと遠い昔に同じことがあったよな、山童」
「あったね。たしか、あの時、山気達が仲間に教えてくれたんだったよね」
「あん時のことは忘れようにも忘れらんねえよな~。思い出しただけでも背筋がぞくぞくする」
「そうか……。魔魅達は元寇の恐ろしさも見てきたんだな」
安國が悲しそうな顔でつぶやいた。
「しかし、これは幻影だ。惑わされるな!」
信國が力強く叫んだ。
床谷の集落から、元々あった観音堂や今もある神社の社殿が建つ場所に登る道は一本道で、入口付近にはお役所があった名残もある。その直ぐ手前には、ぽつぽつと民家もある。佐須観音堂は決して人里離れた所ではなく集落の一角にあり、以前は多くの人がここに集まって居た所だったのだ。
その昔、床谷は銀の洗い場として長く栄えていた場所であり、昭和の時代は亜鉛の鉱山として、沢山の人が住み、宿泊所や飲食店、映画館などもある賑やかな町であった。
現在、集落のところどころに空地が見られるのは、きっと栄えていた頃に建っていた商店か旅館か、もしくは映画館やパチンコ屋などの遊技場であったのであろう。
「さぁ、龍太郎、大魔城の裏手に回ってくれ」
「信國様、承知しました。山気達、ついて来いよ!」
「へい! 合点だー」
龍太郎はぐんとスピードをあげると大魔城を右に見ながら山手の奥へと飛んだ。そして、急にくるりと向きをかえ大魔城の背後に回り込んだその時、「えー」とみんなが一斉に驚きの声を上げた。




