第二十六章 その四
あゆみの涙が光を集める鏡となり、それは目の前の塚の上に置かれた平らな石を照らした。
はじめは、ぼんやりと石の表面に柔らかな光が見え隠れしていた。次第にだんだんと光がはっきりとした姿を現わして、今や塚全体が輝いて見えるようになった。
「おー。凄い……、凄い」
信國は、言葉を失くした様に同じ言葉を繰り返すだけだった。
「ふー」
長い息を吐き終えると、あゆみは目を開けた。
「宗助国公がお応えくださった……」
もう一度、顔の前で両手を合わせ深々とお辞儀をした。
「信國、床谷に戻させりましょう。きっと胴塚での祈祷も終わっている頃だわ。あとは、どうにかして首塚に行って光の召喚を完成ないと……」
「はい。急ぎ参りましょう」
二人は神社を出ると、田んぼに囲まれた道を出て、床谷に向かい大通りの脇を走り出した。樫根の集落に渡る橋の前を通る時、あゆみは法清寺の方に目をやった。
「信國、見て! 大ババ様が胴塚に光を呼び寄あねせてくれた!」
確かに、法清寺のある方向の空には幾筋もの光の柱が立ち、胴塚から放たれていると思われた。
あゆみ達が床谷に戻って、間もなくすると安國が息を切らして走ってきた。
「安國、ご苦労だった。光の召喚は上手くいったようだな」
「はっ。守り人の力は凄まじく、『光の民』だと言われる理由がわかりました」
「光の民?」
「はい、あゆみ様。オヒデリ様に守られた阿連に住む民であり、光を操る守り人だからそう言われてきたのでしょう。私も古い話と思っておりました。おそらく大ババ様、本人も今、そう思われているのでは……」
信國が神妙な顔でそう言った。
「光の民なら尚更、安心して観音堂を任せられるね!」
あゆみはニコリと笑うと、大魔城のほうに視線を移した。
「あの中にある首塚に行くには、どうするのが一番いいか……」
あゆみは独り言のように呟いた。
「たしか、観音山には神社があって、下から階段が続いていた。今はどこにあるのか……」
「あゆみ様、首塚は、その神社の社殿の右側にあります。神社に登る階段は、社殿の正面から真っすぐに下の向かっております」
「信國、階段の場所がわかるの?」
「はい。ご案内致します」
あゆみ達三人は、道路わきの目立たない通り道を選んで、神社の階段のある方へと移動した。
集落の一番端に着くと、大きな石碑が建っていた。その石碑から細い道が奥の方へと続いている。
「あゆみ様、これが神社の階段へと続く道でございます。しかし、このまま、登って行くのは危険かと……」
その時、周辺の草木が揺れ、あゆみの装束の裾がはためいた。
「だれ?」
何者かがあゆみ達のいる場所へ急接近する気配に、あゆみが驚いて声を上げた。




