第二十六章 その二
「阿連に向かう前に、あゆみ様の家で話した元寇の事です」
「小茂田の人々がひどい目に遇ったという話ね!」
「そうです。小茂田ばかりではなく、近辺の西海岸にある集落はひどい目に遇いました。殺されるばかりでなく、連れ去られた人達は手に穴を開けられ紐で数珠繋ぎにされて船のヘリに立たされました。これが人間の盾です。攻撃をさせないための卑劣な行為」
「えっ、元の襲来の時にあったことが、今、大魔城で行われてるってこと?」
「人間の盾にさせられた挙句、殺されたり、むごいことに食糧にされたという話もあります。その苦しみや恐怖はどれほどだったか計り知れません。その怨念は時を超えて残っていることでしょう。今、私達が見せられているのは、それを利用した幻影なのです」
「ひどすぎる……」
あゆみは眉を寄せて拳を握りしめた。
「信國、ここで亡くなった人達は、他に誰がいるの?」
「この地の民の他、宗助国公率いる八十人あまりの宗家の武士。戦いのために雇われた犯罪者、浪人、それと元軍としてやって来た敵国の人々です。ここで起こった殺戮、略奪、殺し合い。想像を絶する地獄絵図のような光景があったと語り継がれています。これらの人間たちの怨念を召喚した大魔王たちの攻撃。これから、もっと恐ろしい事が起きるでしょう」
「信國、辛過ぎるね……。だけど、ここで亡くなった人の中には、宗助国公をはじめとして、きっと対馬の民を守るために死を恐れずに勇敢に戦った輝く魂も残っているはずよね」
「うん。俺もそう思う」
安國はそう言うと、唾をゴクリと飲み込んだ。
「だったら、私達は光の召喚に応える霊魂を呼び覚ましましょう」
あゆみは、まず安國の顔を見て、小さく頷いたあと信國の顔を見た。
「光の召喚……。やりましょう! あゆみ様」
信國も力強い声であゆみに笑顔で答えた。
「安國! 樫根の観音堂にいる大ババ様に胴塚での祈祷をお願いしてきて!」
「はい! あゆみ様、かしこまりました」
そう言うと、安國は猛スピードで樫根の観音堂へと向かった。
「そして信國、私をまず手足塚の場所へ連れて行って!」
「承知しました。あゆみ様、私の後について来てください」
信國は軽く頭を下げると、あゆみと共に手足塚に向かって走るのであった。




